排泄パターンがわからないので、夜間でも定期的にオムツ交換をされている施設は多いのではないでしょうか。
安眠を邪魔される深夜のオムツ交換はご利用者様にもストレスです。介助するヘルパーの方も無用なオムツ交換の「空振り」を減らしたいと思っています。
しかし、最適な排泄のタイミングやパターンというのは個人によって違います。
記録を取れと簡単に言いますが、忙しい中後回しになりがちで、正確な記録を取って排泄のパターンを把握することは非常に難しいです。
この難問を解決すべく市場には排泄記録を自動化する排泄センサーと呼ばれる製品がたくさん出ています。
今回は排泄センサーの中で非常に使いやすく進化した製品ヘルプパッド2をご紹介します。
他の排泄センサーとの違い、全体の検知方式、検知の範囲についてもご説明します。
排泄センサー ヘルプパッド HelpPad2とは
「おむつを開けずに中が見たい」という介護職の願いから生まれた排泄センサーです。
ヘルプパッド2は、臭いデータをAIが分析・学習するタイプの排泄センサーです。検知精度を向上させ、デザインもすっきりとさせたバージョン2の製品になります。電源も通常のコンセントから取れます。

ヘルプパッド2のシステム構成は以下のとおりです。

ヘルプパッド HelpPad2の特長
排泄があると通知
排泄があった時だけ、通知がスマホやタブレットに届きます。ヘルパーの方の「空振り」による業務負担はなくなります。ご利用者の方も、夜間の不要なおむつ交換から解放され、ぐっすり眠ることができます。排泄からかなり時間がたっておむつ交換ということもなくなるので、皮膚トラブルも防止できます。
「予測できる介護」へ
約16万件の排泄データを収集し、AIによって排泄検知の精度を向上させています。これにより利用者様毎の排泄パターンが可視化され、「予測できる介護」につながる可能性が出てきます。
おむつ代と廃棄物削減
あまり知られていませんが、介護施設のおむつ代はコスト面で大きな負担です。適切なタイミングでだけ、おむつ交換ができれば使用するおむつの量が減り、廃棄物も減らせます。廃棄物処理の日は、自治体毎に決まっていますが、廃棄物を置いておく場所もスペースをとります。不要なおむつ交換が減らせると、コスト面でも廃棄物削減という意味でも、施設を運用する側にとっては大きなメリットになります。
排泄センサーの種類と検知方式の違い
世の中に排泄センサーと言われるものは既にたくさん出ています。
一体何がどう違うのか、もう少し具体的に見ていきましょう。
大まかに行って以下の4つの検知の方式があり、各々製品の実装方式が異なります。
超音波センサー
超音波は、妊娠健診のほか、甲状腺検査等で広く医療現場で使われている検査方式です。
超音波をセンサヘッドから発信し、対象物から反射してくる超音波を再度センサヘッドで受信して距離を図ります。この超音波センサで、膀胱内の尿のたまり具合を測定し、排尿のタイミングを検知し予測します。
これは尿の溜まり具合を検知できますが、排便の検知はまだ予測できていません。
センサヘッド部をお腹付近に装着する必要があります。お腹に装着する方式はメーカーによって異なります。センサヘッド部もメーカー毎にサイズは異なりますが、どこも負担がないように小型化しています。センサ部は電池がないと動きませんので、24時間365日動かすためには電池を一定期間毎に交換する必要があります。
【代表的な製品:DFreeProfessional|DFree株式会社】
センサヘッド部は幅51mm×奥行36mm×高さ17mm、重さ26gとかなり小型です。装着には専用シートが必要です。医療・介護施設用の場合、センサ部で取得した複数のご利用者様のデータを送信するために、中継器を設置する必要があります。センサは、中継器から10~15mの範囲内で使います。既に300施設に導入実績があります。個人向けのものも販売されました。
カラーセンサー
光を投光部から発射し、検出物体によって反射する光を受光部で検出します。赤色、青色、緑色のそれぞれの受光量を検知することにより、対象物の色を正確に判別することができます。これは排泄後にデータを取得するものです。
【代表的な製品:LIFLENS|パナソニック ホールディングス株式会社】
トイレに、カラーセンサとカメラを組見合わせたセンサーを設置し、尿と便の両方を検知します。排泄された便の形状までデータを取ることができます。
トイレにセンサーとデータ送信機器の設置工事が必要になります。
センサーが固定されるので、外出等でセンサーを取り付けたトイレ以外で排泄した場合、記録を取ることができません。また、これはパナソニックの見守り介護ロボット「LIFLENS」のオプションサービスで、単体での契約はできません。
パナソニック ホールディングス株式会社の排泄ケア記録システムについては別の記事でご紹介していますので、こちらも参考にしてください
臭い検知
金属酸化物半導体方式や水晶振動子方式などがあり、いずれもニオイ分子を検知して識別します。臭い検知は、臭いの有無や強弱を数値化することができますが、良い臭いと悪臭という感覚的なものまで数値化できるものではありません。検知のタイミングとしては、排泄後にデータを取得します。
【代表的な製品:ヘルプパッド2|株式会社aba】
臭いを検知するセンサーは、体に装着する必要はありません。ベッドの上にセンサー機能のあるパッドを敷くだけです。尿と便の両方を検知することができます。パッドは柔らかく厚み1センチ、パッド部分のカバーは洗濯可能で、マットやセンサーベルトは防水加工済です。
設置が簡単なので、パッドをいつでも別の部屋に移動することはできます。基本ベッドの上での利用を想定しているため、外出等でベッドを離れた場所で排泄した場合、記録を取ることができません。
見守り介護ロボット『aams』とモニター表示の連携が可能です。
水分検知
半導体CNT(高性能半導体カーボンナノチューブ)複合体技術で、水分検出センサーをおむつに直接組み込み、人体や尿の影響を受けずに無線通信を可能にする技術を2024年に東レが開発しました。
尿そのものの水分の影響により無線通信ができないという技術的な課題を克服して、製品化の目途がたったもので、まだ市場で販売はされていません。
センサーはあらかじめ柔らかいおむつに組み込まれます。ですので、利用者側は違和感なく使用できます。また、介護する側も体に装着する特別な作業をすることなく、通常のおむつと同じく、使って廃棄できます。

2025年度中の実用化を目指しています。
ただし、排尿の検出はできますが、排便の検出ができるかは不明です。
検知のタイミングと範囲
検知のタイミング
排泄が起きた直後に検知をして、その記録を取るのか、排泄が起きる直前に検知し、それをケアする支援者に対して伝えるのかという検知のタイミングは、製品によって異なります。
超音波センサーで検知するDFreeは、水分の溜まり具合を検知しており、排泄の前にタイミングを予測できます。排泄の自立を支援することに重点が置かれています。
これに対し、色検知や臭い検知を行うセンサーは、排泄が起きてから検知し、実際のデータを蓄積し、蓄積されたデータからAI等で排泄のタイミングを予測しようとする考え方です。
蓄積されるデータ量と、データからの予測精度が課題になってきます。
検知する範囲
尿までの検知なのか、排便まで検知ができるのかというところは製品によってかなり違います。
水分や超音波による検知の場合は現状の段階ではまだ尿までの検知しかできていません。
これに対し、排便の検知ができているのは、カラーセンサーもしくは匂い検知の方式です。
排泄センサーを検討する際のポイント
このように、排泄センサーを検討には
- 検知できる範囲がどこまでか
- 介護を行う運用側の負荷
- 排泄の記録が正確に取れて予測まで活用できるか
- ご利用者様の介護度
等色々な要素を考えて選ぶ必要があります。
見逃しがちなのが実際の運用負荷です。機器の装着が必要な場合、一人ひとりに正しい位置に装着してもらう必要があり、それなりに手間がかかります。また電池が切れてしまった場合には、電池交換が必要です。
ヘルプパッド2の優れた点は、排便と排尿の両方に対応でき、施設内のどこでも持ち運びができ、かつ導入後の運用の手間が少ないという点です。
まとめ
介護する側にとっても、される側にとっても「排泄」の問題は避けて通れない問題です。
どの検知方式の製品も、最終的には、排泄パターンの把握と最適なタイミングでトイレへの誘導を目指しており本人の自立度を高めたり、生活の質を向上させることを目的としています。
施設で消費されるオムツの種類と分量を考えれば、排泄センサーを導入しても十分に元が取れるぐらいのコストがかかっています。
最終的には運営の利便性と予測精度の高さ、コストが決め手になると思います。
今後もこのような新しい排泄センサーはどんどん出てくると思います。
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[参考資料]