介護施設運営で、避けて通れない排泄ケア。
排泄の記録をつけなければならないとはわかっていても、そもそも利用者からの介助コールがなければ記録すること自体が難しいです。また、便の状態は確かに健康状態を管理するのに大事なことだとわかってはいますが、いざとなるとケアに必死でそれどころではないというのが現場の本音ではないでしょうか。
そしてなかなか介護現場で使いこなせる記録システムがないというのも事実です。
今回はそんな排泄ケアの記録に悩む現場の課題を解決できそうなシステムを見つけたのでご紹介します。
この排泄ケアシステム、2022年5月に全国向けにリリースされました。介護ロボット導入補助金を利用して半額補助を受けての購入が可能です。
遠隔監視やIoTセンサー、生体認証などで確固たる技術を持つNECプラットフォームズが、真面目に排泄ケアという最も「人間的」な部分のシステム化に取り組んでいるわけで、非常に面白い製品だと思いました。
2023年のケアテックスの展示会場でお尋ねした質問などを交えて製品のご紹介をします。
NECサニタリー利用記録システム
利用者の方の排泄周りの実態を正確に把握でき、排泄の記録を全自動化するシステムです。
排泄記録を手書きで行っている場合、利用者が介助コールを鳴らしてスタッフが介助に行かない限り、正確な排便の時間を記録することができません。排便の状態などの実態を把握することも難しいです。
このシステムはセンサーとカメラを組み合わせた排泄検知ユニットを便器に取り付けることによって、これまで完全に把握できなかった排便のタイミングを正確に把握し、かつ記録を自動化することができるという優れものです。
具体的には、施設のトイレに排泄検知ユニット、センサーで検知した情報を送信する制御ボックス、個人識別センサーを取り付け、利用者の方がトイレに入ってから出るまでの記録を全て全自動で取ることができます。
このシステムのユニークなのは、光学センサーで尿や便の状態を取得し、制御ボックスの中の機械学習を用いたAIエンジンでそれを分析して、その結果を登録したユーザへ通知します。
光学センサーで一時取得したデータは分析後すぐに廃棄します。
便の色や状態は、これまでは、人の目視に頼っていましたが、人の目以上に詳細に記録できます。言うまでもなく便は健康のバロメーター、ケアの質やQOL向上が期待できるというわけです。
もう一つ見過ごせないのが利用者のプライバシーの確保と職員の方の負担感の軽減です。
これまでは、職員の方が、トイレ介助する時間を決めて定期的に利用者の方を訪室して、その都度に排泄の有無を本人に確認したりしなくてはいけませんでした。利用者の方もトイレに行きたくもないのにトイレに行かなくてはならない。
しかし、このシステムの場合、利用者の方がトイレに入ったタイミングがわかるので、そのタイミングで訪室すればよいわけです。定期的に部屋を訪れて、声掛けする必要がなくなる。
また、従来型の入退室の人感センサー等と異なり、個人用トイレだけではなくて共用トイレにおいても個人を識別することができます。個人毎に通知を設定することで、その利用者ごとに通知を鳴らし分け、本人に適した介助のタイミングの提供を実現できます。
利用者側も本当に必要な時だけ、来てくれたほうが助かるわけで、これは双方にとって見過ごせない大事なメリットだと思います。
さて、本当にこのようにシステムが動けば素晴らしいと思いますが、本当にこのように期待した通りに動くものなのでしょうか。その場で気づいたところをいくつか質問してみました。
NECサニタリー利用記録システム:Q&A
排泄検知ユニットにセンサーとカメラが付いているということですがカメラが便で汚れちゃったりした時はどうするのですか?
「カメラはやや下向きについているので便で汚れることはないと想定しています。ただし便で汚れてしまった場合、登録した方に対して通知が行くようになっています。通知が来た場合は排泄検知ユニットを清掃してください。」
これがNECプラットフォームズのご担当者からの回答でしたがこればかりは実際にやってみないとわからないと思います。ちなみに、昨年販売開始から、このような汚れのクレームや問い合わせはほぼ無いとのことです。
制御ボックスを置かなければいけないということですが、電源は必要ですか?
はい電源が必要です。ウォシュレットが付いているトイレであれば電源があるのですぐ設置することができますが、そうでないトイレの場合、電源を確保する必要があります。
また制御ボックスで分析したデータを送信するため、施設内にWi-Fiの環境が必要になります。
データを統計としてまとめて見られることは素晴らしいと思いますが、次の排泄のタイミングの予測までしてくれますか。
残念ながらまだ排泄の予測というところまでは開発がされていません。ただ統計の数字を見ていくだけでもおおよそ排泄のタイミングを予測することはこれまでよりも正確にできると思います。
というのがNECの説明の方のご回答でしたが、データが溜まってくればある程度予測をするようなシステムを作ることはきっと可能だと思います。
これは施設向けのサービスというのは分かりましたが、在宅介護では使えますか?
残念ながらまだ在宅介護向けの提供は考えておりません。
システムを運用する時にメンテナンスする人がやはり必要です。現在のところそういった体制が取れないので当面は施設の運用への提供を考え中心としています。
まとめ
施設では自立してトイレに行くということが難しい方もおられます。そういった方たちに対してはやはり手動での記録というのがどうしても残ると思います。
ですので、100%このシステムで排泄業務の記録の自動化をするのはまだ無理はあるだろうと思います。別の記録システムと組みあわせて利用する必要があろうかと思います。
しかし、自立してトイレに行けるレベルの利用者様の状況把握や排泄記録は、かなり楽になるのではないかと思いました。
なお2023年6月現在、NECプラットフォームズではこのサニタリー利用記録システムのトライアル利用を募集しています。2週間から1ヶ月程度購入検討を目的としたお試し利用と使用感の確認をしていただけます。費用は無料でお試しいただけます。
詳細はこちらからご覧いただけます。
排泄のケアについては、施設の方からの興味関心は高く、申し込みが多いそうです。場合によっては待ってもらうこともあるとのことです。
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