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通院付き添いサービス|介護保険制度でどこまでできるか徹底解説

公開日:2025.11.26
最終更新日:2025.11.26

親御さんの通院に付き添うことは、想像以上に時間と労力がかかります。

平日の忙しい中を受診調整し、待ち時間は長く、医師の説明を一人で理解しなくてはなりません。こうした負担を日々感じているご家族は少なくありません。

どうしても自分で付き添いできない時に、

    • ヘルパーさんは院内まで付き添ってくれるのか
    • 看護師さんに依頼すると何が変わるのか
    • シルバー人材センターにも頼めるのか
    • 料金はどれくらいが相場なのか

といった素朴な疑問が湧きますが、制度が複雑なため分かりにくいです。

本記事では、通院付き添いサービスの制度の仕組みをご家族にも理解しやすい形で整理します。

後編では職種ごとの役割の違い、実際にどのような事業者がいるのか、料金面や選び方のポイント等についてご説明します。

「自分の家族にはどのサービスが合うのか」を判断できるきっかけとなれば幸いです。

目次

全体像を理解:「通院付き添い」は2つの制度に分かれる

通院付き添いサービスは、まず以下の「どちらの制度を使うか」で費用も内容も大きく内容が変わります。

①介護保険サービス(できる範囲に明確な制限がある)

②介護保険外(自費)サービス(柔軟でできることが多い)

この違いを理解しておくと、「なぜヘルパーさんは院内まで付き添えないのか?」「なぜ自費だといろいろできるのか?」といった疑問が解消されます。

区分 主な対象者・条件 主な「できること」 主な「できないこと」

介護保険
サービス

要介護1~5の認定を受け、ケアマネジャーが通院介助をケアプランに位置づけた方など。 ・自宅~医療機関までの移動介助・車の乗降サポート・受付までの同行(移動含む) ・病院・クリニックの院内での付き添い・移動・診察室への同席・医師説明の聞き取り代行など医療機関内部での行為

介護保険外(自費)
サービス

要支援の方、あるいは介護保険でカバーされない範囲の付き添いを希望する方。 ・院内付き添いや診察室同席・医師説明を家族に代わって聞く・伝える・複数診療科受診時の付き添い・長時間見守りなど 特に「制度上の保険適用範囲」が狭いため、保険による自己負担軽減の対象にはならない点が留意点。

高齢者が一番困る会計や支払い、医師の説明を聞く等の病院内での対応は、介護保険サービスの対象外です。通院付き添いについては、介護保険ではできることが思った以上に少ないことがご理解いただけると思います。

職種別に異なるサポート内容

ここでは、職種別に、介護保険内で通院付き添いができる範囲はどこまでかを見ていきます。

ヘルパーによる介護保険サービスの範囲

介護保険を使ったヘルパーの通院支援は、「通院等乗降介助」という枠の中に限られます。

名前は分かりにくいのですが、内容はとてもシンプルで、「病院の外側での移動をサポート」です。

具体的に、介護保険でできること(保険適用対象)は主に以下の通りです。

    • 自宅から玄関先までの移動介助
    • 車やタクシーへの乗せ降ろし
    • 医療機関までの移動同行
    • 受付までの案内

このように、生活上の安全な移動を支えることが主な役割になります。

一方、次のような「病院の内部での行為」は、すべて介護保険の範囲外です。

    • 病院・クリニック内の付き添い
    • 診察室への同席
    • 医師の説明を家族の代わりに聞くこと
    • 検査室や会計窓口への移動介助
    • 医療判断や医療行為に関わる支援

つまり、ヘルパーの同行は「病院外まで」で区切られているのです。

訪問看護が付き添いできない理由

看護師という資格を持った方なら通院付き添いができそうに思いますが、実は訪問看護の制度は「自宅(居宅)での療養支援」に限定されているため、病院への付き添いや院内同行は原則として行えません。理由は以下のとおりです。

①訪問看護は「居宅での療養支援」と法律で定義されている

訪問看護は、介護保険・医療保険どちらを使う場合でも、自宅(居宅)に訪れて看護を提供することを前提にしています。制度的には「移動支援」「通院同行」「院内介助」は想定されていません。

訪問看護は「在宅療養者」に対する看護であり、病院や外出先は「看護の提供場所」として定義されていないのです。したがって、病院付き添いは保険報酬算定の対象外となります。

②通院付き添いは「看護」ではなく、移動支援・生活支援とみなされる

訪問看護の範囲は、

    • バイタルチェック
    • 医療処置
    • 病状観察

など「療養上の世話・診療の補助」に関わる業務です。

一方、通院付き添いは

    • 移動の見守り
    • 院内移動の案内
    • 受付・会計同行

など、看護ではなく生活支援・移動介助と分類されます。よって訪問看護として保険請求対象として算定できないのです。

③病院側の業務領域との干渉を避けるため

院内の案内・誘導・説明補助などは、医療機関の職員が担当すべきと考えられています。

そのため、訪問看護が「病院内での介助」を行うと、医療機関の業務代行と見なされる懸念があります。

つまり、通院付き添いは訪問看護の本来業務に含まれておらず、制度の目的からして別物なのです。よって訪問看護では、通院付き添いは保険対象として扱われません。看護師付き添いは自費の「別サービス」として提供されています。

ケアマネが通院付き添いをしない理由

「時間の都合がつかないので、ケアマネさんに病院に付き添ってもらえませんか?」これは、家族介護の相談で最も多い質問のひとつです。

介護保険を利用するのに一番身近な相談相手であるケアマネージャーは通院付き添いをしてくれるのでしょうか。

結論から言うと、ケアマネ(介護支援専門員)は通院付き添いを行う職種ではありません。

その理由は、ケアマネの仕事が法律で明確に定義されているからです。

ケアマネの役割は、簡単に言うと「介護サービスの設計者・調整者」です。

    • 本人・家族の状況を把握する
    • 課題を整理する
    • ケアプラン(介護計画)を作成する
    • サービス事業者・医療機関と調整する
    • ケアプランを実施し、モニタリングする
    • 家族相談や生活上の助言を行う

つまりケアマネは、介護全体のコーディネートを担う司令塔のような存在です。

「通院の付き添い」「病院内の移動介助」「診察室への同席」「医療説明の代行」のような現場での具体的な支援は、厳密にはケアマネの仕事ではありません。

ケアマネは「実務者」ではなく「調整者」であることから、通院付き添いが必要な場合には、ヘルパーの自費サービスや、看護師の自費付き添い、家政婦、NPOやシルバー人材センターなど、その人に合ったサービスを選び、調整し、手配する役割を担います。

家族としては「信頼しているケアマネさんにお願いしたい」という気持ちがありますが、ケアマネはあくまで「最適なサービスをつなぐ専門家」であり、本人が付き添いを行うことは制度上できない仕組みになっています。

なぜこんな複雑で分かりにくい制度になっているのか?

なぜこのような複雑な仕組みになっているのでしょうか。背景には、以下の3つの法律と制度の役割分担が関係しています。

①医療法

この「医療機関の外まで」という線引きには、じつは明確な理由があります。

医療機関の内部で行われる誘導・説明・安全確保などは、医療機関の職員が担うべき業務とされているからです。

ヘルパーが病院内で介助すると、「医療機関の業務を代行した」とみなされるため、制度上は認められません。

②介護保険法

訪問介護は「生活援助」を目的としたサービスです。そのため、病院内で発生する行為は、生活援助ではなく医療関連行為に近いと判断され、ヘルパーが病院内に入った時点で介護保険の対象外になります。

介護保険では、医師が必要であると認めれば、訪問看護をケアプランに組み入れることができます。

しかし、訪問看護はあくまでも療養生活を送っている方の看護を行うサービスです。つまり医療の専門家が支援と助言、緊急対応を行うものであり、通院の付き添いは「生活援助」と見なされて介護保険の対象からは外れます。

また、ケアマネジャーの業務は調整が主体であり、実務を含まないことも介護保険法で定められています。

③医師法・医療法(医療行為に関する考え方)

医療行為そのものでなくても、「医師の説明を代わりに理解して判断する」「診察室で判断補助をする」といった医療判断に関わることは医療行為とみなされます。

介護職が行うことはできず、医療法上も制限されています。

以上の法律的な理由から、全国どの地域でも「ヘルパーは病院の外側まで。院内は医療機関の専門領域」「看護師は、在宅看護のみ」という保険適用のルールが原則となっています。

ただし現場では例外が生じる

ここまで、介護保険ヘルパーは「院内には入れない」という原則を説明してきました。

ただ、実際の現場では、このルールが例外的に緩和されるケースも存在します。
特に、小規模クリニックやかかりつけ医では、この傾向が見られます。

小規模クリニック

小さなクリニックでは、待合室と診察室の距離が近く、院内スタッフ配置も限られています。そのため、ヘルパーの院内同行を医療機関側から求められることがあります。

    • 待合と診察室の境界が曖昧で、移動介助が必要になる
    • 認知症の方を一人で待たせるのが危険
    • 医師が「同席してほしい」と判断する場合がある
    • スタッフの人数が少なく、安全確保のために付き添いを依頼される

こうした状況では、ケアマネが医療機関と調整したうえで、例外的にヘルパーが院内まで付き添うことを認めてもらえる場合があります。

しかし、このような場合は例外と見るべきで、大規模病院(総合病院・大学病院など)では、状況がまったく異なります。

    • セキュリティや動線管理が厳格
    • 各診療科や検査室ごとに業務が細分化
    • 患者案内や移動介助は専任スタッフの仕事
    • 医療機関内の責任範囲が明確に決まっている

このため、介護保険でのヘルパーによる通院付き添いや院内介助は原則として認められません。

まとめ

通院付き添いについての現状の介護保険の枠組を整理すると、次のようになります。

    • 法律上の原則として、医療機関における介護保険でのヘルパーの院内介助は不可
    • ただし規模の小さな医療機関では、医療側の判断で例外が生じることがある
    • 院内介助・診察同席・医師の説明の聞き取りを希望する場合は、介護保険でのヘルパーの院内介助は不可

しかし、これは介護保険を利用する高齢者にとっては、厳しい内容です。

どの診療科にいったらよいのかわからず、病院内で予約の時間に間に合わなかったり、自分一人では会計ができないという事態に陥る方も出てきます。

その結果、家族が付き添わざるを得ず、仕事への影響が出てしまうこともあります。

では、どうしても家族が対応できない場合、通院付き添いをお願いできる先はどこなのでしょうか。次章では、この点を具体的に掘り下げます。

「通院介助とは?保険適用・適用外(自費)の条件や料金を紹介」—エマジェン(2023)

「病院への受診にヘルパーは同行できる?介護保険の通院介助」—いちろうコラム