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処遇改善加算に有効:タイムスタディ(業務量調査)2つの実施事例

公開日:2024.11.26
最終更新日:2024.11.26

タイムスタディという言葉をご存知でしょうか。

名前は聞いたことがあるけど、まだ実施していないというところがほとんどだと思います。

しかし、タイムスタディとは業務量調査のことで、令和7年度以降の処遇加算改善に大きく関係してきます。

ここでは、これからタイムスタディを行う事業所の方に向けて、参考になる2つの事例をご紹介します。

内容は、2024年11月7日に機械振興会館で行われた「科学的介護フォーラム24」でのセミナー内容をメモとしてまとめたものです。

タイムスタディアプリ「ハカルト」を利用して、実際にタイムスタディを行った2つの事業所の施設長の方から事例の発表がありました。

私自身もかつてタイムスタディに参加したことがあります。プロジェクト期間中、約1年程ずっと時間管理をしましたが、正直かなり面倒でした。

実際に行った事例として、非常に貴重な内容だと思いましたので、会場に来られなかった方にもぜひ共有したく、記事にまとめました。

あくまでもメモですので、セミナー全体を正確に書き起こしたものではないことをご了承ください。

タイムスタディとは

タイムスタディ調査とは、業務量調査の分析手法で一般的に用いられているものです。

元々は工場現場での生産性向上のために使われていた手法ですが、サービス業でも応用されることは多いです。

タイムスタディ調査が処遇改善加算要件に

ご存知の通り令和6年度は、これまで複雑だった処遇改善加算が改善されました。

令和7年度からは一本化されます。厚生労働省は令和6年度は激変緩和措置として新加算Ⅴ(1)~Ⅴ(14)を設けています。

厚生労働省HP「 介護職員の処遇改善」配布資料より抜粋

今後の処遇改善加算については、厚生労働省が介護職員の処遇改善:移行ガイドという特設サイトを作成し案内していますので、そちらをご覧ください。

令和7年度からの新加算の算定要件は、①キャリアパス要件、②月額賃金改善要件、③職場環境等要件の3つです。

タイムスタディは③職場環境等要件に大きく関わってきます。

職場環境等要件とタイムスタディ

今回の処遇改善加算の一本化で一番大きく変わったのはこの職場環境等要件です。

6区分24項目が、6区分28項目に増えました。

事業者が実施すべき取り組みとして、キャリアパスの整備、賃金改善だけでなく、働く人の環境条件を良くするというところに大きなウエイトが置かれた形になっています。

具体的な加算要件を見てみましょう。

新加算で処遇改善加算Ⅰ、Ⅱを取得するためには、6区分ごとにそれぞれ2つ以上、生産性向上の取り組みは3つ以上行う必要がある。更に、生産性向上の取り組みの⑰および⑱は、どちらかが必須とされました。

生産性向上の取り組みの区分詳細は下記の通りです。

厚生労働省HP「 介護職員の処遇改善」配布資料より抜粋

⑰で示している厚生労働省の「生産性向上ガイドライン」はこちらのぺージにあります。

つまり、処遇改善加算Ⅰ、Ⅱを取得しようと思うと、厚生労働省が示すガイドラインに基づいて業務改善活動の体制(委員会やプロジェクトチーム)を作るか、または現場の課題の見える化のどちらかをやらなければならないわけです。

タイムスタディ(業務時間調査)は現場の課題の見える化の有効な手段です。

以上で、タイムスタディ(業務時間調査)が処遇改善加算Ⅰ、Ⅱの取得の上でかなり重要なものだということがご理解いただけたと思います。

タイムスタディの事例

しかし実際にタイムスタディを行うハードルは相当に高いと思います。実際にすでにタイムスタディをやったことのある事業所は、セミナー会場の参加者のおよそ10%程度でした。

以下はセミナー登壇した2事業所の発表事例メモです。

株式会社ツクイ

1983年創業のデイサービスの老舗です。事業所のほとんどはデイサービスですが介護付き有料老人ホームも運営してます。

こちらでは介護付き有料老人ホーム2施設でハカルトのアプリを使って、5日間のタイムスタディの実験を行いました。

・ツクイサンシャイン相模原:9月16日~20日まで

規模 80室 常勤10人 非常勤28人

・ツクイサンシャイン足立で10月14日から18日まで

規模 54室 常勤15人 非常勤8人

ツクイ様は、「弊社はタイムスタディの失敗事例」として、反省を込めて仰っておられたのは、タイムスタディ実施のポイントは、やはり事前の説明がいかに大事かということでした。

導入目的が不明確な場合、タイムスタディのデータとして意味があるものを取ることが難しくなります。

タイムスタディ実施後のアンケート

実施に協力してくれた職員に対し、タイムスタディ実施後アンケートを取りました。

最初につまずいたのはやはりログインです。アプリにログインするためにQRコードがありませんでした。

ログインでストレスがあったかという質問に対しては、どちらの事業所も半分前後の方がストレスがあったと回答しています。

また入力忘れが頻発しました。

手間がかかり、正直入力が難しいという回答をした方は

・ツクイサンシャイン相模原:6人/10人

・ツクイサンシャイン足立:3人/19人

ツクイサンシャイン足立の方では、19人中16人が入力をし忘れたと回答しています。

しかし同時に19人中11人が紙に記入するよりははるかにマシだったとも回答していました。

実施後のふりかえり

上記のような結果から、加算ありきではなく実際のタイムスタディーに参加する職員の方に対して、導入の目的をきちんと説明しておく必要があるということです。

アンケートの結果からは「そこまで細かく言うのであれば、管理者の人が1日中現場を見ていればいいじゃないか」というきついお言葉もあったそうです。

現場から見れば、目の前のご利用者様が第一なのは当然のことで、導入の目的が不明瞭だと入力はついつい後回しになります。不正確になったり忘れてしまうのも無理はありません。

ただ実際にタイムスタディーをやってみて、アプリがあって初めてできたということは仰っておられました。

また、それぞれの職員が介助時間というものに対して認識のずれがあるということも初めて分かったそうです。

具体的には、排泄介助は、ある職員は下着を下ろすところから計測したが、別の職員はトイレの誘導から排泄支援と考えて計測したりしていたそうで、こういった細かいことも認識の統一が必要です。

アプリの入力にあたって、参加する職員の方が共通の認識が持てるように、入力項目のイラストを壁面に貼り付けるなどの工夫を行ったそうです。

社会福祉法人津山福祉会

岡山の特別養護老人ホームを運営されている介護事業者様です。

介護ソフトやIT導入に積極的な事業者様で、業務の分業化、アウトソース、業務の標準化などを積極的に進めています。

2019年にリフトの設備を導入、2020年には働き方改革、2021年にはICTの導入等働きやすい職場を着実に作ってこられました。

こちらの特別養護老人ホーム高寿園で2024年5月にタイムスタディの実験を行いました。

事業所の定員は、最大80室規模です。

タイムスタディに入る前に事前に職員に対してアンケートを実施して、どんな課題があるのかを予め確認しました。

こちらの事業所はユニットごとにDX委員会がすでに立ち上がっており、そこで事前にどのような形でタイムスタディを行うかということについて認識を共有しました。

計測アプリ「ハカルト」のアイコンにはないものも追加しました。

そこからタイムスタディを行い、事前に行ったアンケートにあった回答がどこまで検証で数字化されるかを見てゆきました。

タイムスタディを行ってみると、身体に直接触れる直接介助とコミュニケーションや掃除などの間接介助でどれぐらい時間の割合に差が出るのかということを確認ができました。

タイムスタディを行った結果をグラフにして確認したところ、直接介助の時間と間接介助の時間が重なり、最も忙しい時間帯がいつ頃かをグラフで可視化できるようになりました。

忙しい時間帯は限られたものなので、その時間帯に人を増やすなどの措置を取ることができるようになったそうです。

実施後のふりかえり

高寿園様では、タイムスタディの結果データを職員の方と共有しました。

職員の方が現場で「現場は大変だ」ということはわかるけれども、それが時間的に大変なのか、それ以外の問題で大変なのかという本音のところを、データを基に職員の方と話をすることができるようになりました。

働いた結果を数値化してみて、現状を客観的に見るために非常に重要なツールであるということが確認できたそうです。

まとめ

2つの事業所の事例を聞いて、感覚を数値化することの大切さを改めて感じました。

これは、介護事業という業界だけではなく、どこの業界でも同じだと思います。

タイムスタディを行ってみた2事業所の施設長の方が共通しておっしゃっていたのはタイムスタディの目標を、参加する職員全員で共有し、何のためにやるのかという共通認識を持つことが大切だということです。

もう一つ、2つの事業所の施設長がおっしゃっていたのは、こういったタイムスタディは何らかのスマホアプリがないと実施不可能だったということです。

このタイムスタディアプリ「ハカルト」を開発した株式会社最中屋では、2025年3月まで法人の対象に無料キャンペーンを行っています。

来年度を見据えて、この機会に試してみてはいかがでしょうか。