在宅での介護において、「洗髪」は多くの人にとってハードルの高いケアの一つです。
お風呂まで移動してもらえれば良いですが、そうでないとベッド周りの準備は大変です。
こうした課題を受けて、カウブランドで有名な牛乳石鹸がポータブル洗髪デバイスセット『SUSUGU』を開発しました。
特別な設備も要らず、わずか90mlの水で髪のすすぎまで完了できます。
介護する人もされる人も、気持ちよく過ごせる新しい選択肢として注目を集めています。
本記事では、『SUSUGU』の製品の特長、開発、購入方法をご紹介します。
- 誕生のきっかけ:石鹸会社が挑んだ“洗えない現実”
- 石けんやシャンプーは水がなければ使えない。
- 異例の挑戦:異業種との共創プロジェクト
- 座ったまま簡単に洗髪できる:『SUSUGU』の特長
- わずか90mlの水で、すすぎまで完了する革新的設計
- 在宅介護で洗髪は、実はこんなに大変
- まとめ:ハンディタイプの誕生
- 技術と工夫:プロダクトとしてのSUSUGUの特長
- 泡立たないミストシャンプーの独自技術
- ブラシ一体型のハンディタイプ
- 利用者の声:実際に使ってみてどうだった?
- 「驚くほど簡単。しかもちゃんと気持ちいい」
- 在宅・訪問介護で期待される活用シーン
- 訪問介護・ヘルパーにとってのメリット
- 介護される側の自立につながる
- どこで買える?購入方法と価格情報
- まとめ:『SUSUGU』が変えるケアの風景
誕生のきっかけ:石鹸会社が挑んだ“洗えない現実”
石けんやシャンプーは水がなければ使えない。
ポータブル洗髪デバイスセット『SUSUGU』の開発が始まったきっかけは、災害の被災者の方からの質問でした。
「水が少ないと髪を洗えないですよね。牛乳石鹸さんで水が少なくても使えるシャンプー作れないですか?」
災害時、飲料水は比較的早く支給される一方で、衛生のための水はどうしても後回しになります。体や手などはタオルで拭いたりアルコール消毒することはできても、頭皮のかゆみ、髪のベタつきはドライシャンプーではどうにもならない。
石けんやシャンプーは、水があってこそ使ってもらえる。
これがきっかけとなり、水が十分に使えなくても、きちんと洗えて気持ちよくなれる洗髪方法はないか?という問いを生み、「SUSUGU」のプロジェクトへとつながっていきました。
異例の挑戦:異業種との共創プロジェクト
「水がなくても髪が洗えるようにしたい」というアイデアでスタートしたプロジェクトでしたが、当初は試行錯誤の連続でした。
牛乳石鹸は、石けんやシャンプーを製造するのが本業です。
しかし開発チームが踏み出したのは、これまで扱ってきた石けんやシャンプーというボトルの中身ではなく、“道具”そのものをつくるということでした。これは創業100年以上の中でも前例のない挑戦でした。
当初、シャンプー容器の形状や機能を工夫することで、洗髪をしやすくできないかというアイデアからスタートし、いろいろな試作を繰り返しました。
しかし、発達障がいの方とのワークショップをきっかけに開発方針が変わります。
このワークショップを主催した合同会社Ledesone(レデソン)は、発達障がいのある方や感覚過敏を持つ方との共創を通じて、プロダクトやサービスの在り方を見直す活動を行っている企業です。
障がい者や高齢者などこれまでサービスや製品の対象者から除外されてきた利用者を巻き込みながらイノベーションを創出する「インクルーシブデザイン」のワークショップを行いました。
このワークショップをきっかけに、自分の髪を洗うのではなく、他人の髪を洗うという前提で設計するという視点が生まれました。
合同会社Ledesone(レデソン)の協力によって、車いすで生活をしているお子様、ベッドの上で寝たきりの生活をしているご高齢の方を、試作品を使用していただくモニターとして参加を募ることができました。
牛乳石鹼の開発チームは、モニターの方に協力していただきながら、自宅での洗髪がどれほど大変かというリアルな声を聞きつつ、製品の改良を1年以上繰り返しました。
こうして「水が十分になくても気持ちよく髪が洗いたい」というきっかけで始まったポータブル洗髪デバイスセット『SUSUGU』は、お風呂に簡単に入れない状況の方のお困りごとを解決する道具になっていったのです。
座ったまま簡単に洗髪できる:『SUSUGU』の特長
わずか90mlの水で、すすぎまで完了する革新的設計
介護や災害など、水の確保が難しい場面では、「洗髪」は非常に高いハードルとなります。
従来の方法では、洗髪台を設置したり、排水の準備をしたりと、物理的にも時間的にも大きな負担がかかるのが常でした。しかしSUSUGUは、その常識を根底から覆しました。

出典:牛乳石鹼オンラインショップ みんなのAWA-YA
この製品の最も革新的な点は、わずか90mlの水で洗髪からすすぎまでが完了することです。
コップ1杯分程度の水があればよく、水道も排水バッグも不要です。特別な環境がなくても、その場ですぐに、清潔で心地よい洗髪ケアを行うことができるのです。
この少量洗髪を可能にした秘密は、専用に開発されたシャンプーの処方です。泡立ちがなくとも皮脂汚れを落として水と馴染ませて汚れを落とすことができます。
通常のシャンプーの場合、洗浄のため泡を大量の水で流さなければなりません。しかし、泡を立てなくても汚れが落とせるので、最小限の水量で洗い流すことができるのです。
使う場所も選びません。車椅子に座ったまま、あるいは介護ベッドの上、ダイニングチェアに腰掛けたままでも洗髪できます。姿勢の変更を最小限に抑えられるのも大きな利点です。
これは、身体に負担がかかりやすい高齢者や、寝たきりの方、あるいは障がいや疾患を抱えた方にとって大きな安心材料です。
そしてこの製品の真価が発揮されるのが、水や設備の乏しい災害時の現場です。避難所など水の供給に制限がある状況でも、専用シャンプーとコップ1杯の水があれば手軽に洗髪ができます。
この専用シャンプーと『SUSUGU』のセットで、介護現場や災害時の「洗髪」のハードルを大きく引き下げることができます。
在宅介護で洗髪は、実はこんなに大変
ではこれまで、自宅でお風呂に入れない事情のある方の髪を洗うときには、どのようにしていたのでしょうか。
実際に寝たきりの方や、身体が不自由で自分で洗髪できない方を介助する場面で、「髪を洗う」という行為がどれほど面倒で繊細な作業なのかは、想像以上です。
①準備だけで一苦労
ベッドの上で洗髪するには、多くの物が必要です。ペットボトル、紙オムツ、パッド、タオルなど、準備段階から大忙し。
紙オムツやパッドは、万が一水が漏れてベッドや身体を濡らさないよう、頭の下や肩周りに慎重に敷き詰めなければなりません。
タオルは複数枚用意し、水分をしっかり受け止めるだけでなく、体温が下がらないよう身体を覆ったり、顔に水がかからないよう守るする役割も果たします。
ペットボトルシャワーは、ボトルの蓋に穴を開けて即席のシャワーとして使う工夫ですが、水量の調整が難しく、洗髪中はずっと神経を使います。
②介護する側も、される側もプレッシャー
洗髪される方にとって、普段とは異なる体勢が不安や緊張を生みます。
一方で、介護する側にかかる負荷も相当に大きいです。
例えば、片手で頭をしっかり支えながらもう片方で洗う動作は、予想以上に体力が必要です。頭部は重く、長時間支えるにはかなりの力が要ります。同時にベッドや枕が濡れてしまわないか、溢れた水が他の部分に流れないか、ずっと気が抜けません。
洗い終わった後も、タオルやパッド、使った用具の片付けがあります。すべてが手間も時間もかかる作業です。
こうなると、自宅での洗髪は「作業」以上の意味が生まれます。お湯の温度を尋ねたり、洗い心地を確認し合ったりする中で、自然とコミュニケーションが生まれ、安心感や一体感も生じます。
しかし一方で、準備や作業の煩雑さによって、介助する側は時間的にも精神的にも余裕がなくなってしまいがちです。
まとめ:ハンディタイプの誕生
このような介助の現場にヒントを得て考えられたのが「ポンプもブラシも一体型」のハンディタイプでした。
チューブや外付けのポンプといった機器類を設置する手間すべてを、大幅に軽減できました。
開発当初、『SUSUGU』もポンプとブラシを分離した設計をしていました。しかしワークショップでのモニター参加実験を経て、ポンプもブラシも一体型という方向に設計方針を変更した経緯があります。
事前の準備が不要で、髪の洗い・すすぎが少量の水で済み、介助される方も洗髪に満足されるような製品ができたら、介助者の方の負担も減り、別のサポートに時間を充てることができるようになるでしょう。
技術と工夫:プロダクトとしてのSUSUGUの特長
『SUSUGU』は、お風呂に簡単に入れない方のお困りごとを解決できる社会的に意味のある製品だと思います。その特長は「水がなくても流せる」を実現できたシャンプー処方にあります。
泡立たないミストシャンプーの独自技術
清潔への思いとニーズから生まれた「SUSUGU(ススグ)」は、従来の洗髪常識を根底から覆す独自技術の結晶です。
『SUSUGU』専用のミストシャンプーは、「泡立たない」ことにこだわっています。
根元や頭皮にスプレーで噴射し、指で揉み込むと、シャンプーが髪・頭皮全体に密着。
髪や頭皮に付着した皮脂やシャンプー成分が、ミスト状の水と結合して浮き上がり、再付着せずにタオルで拭き取るだけで除去できるようになっています。
出典:SUSUGU発売直前 期間限定特別サイト
コップ一杯(約90ml)程度の水があれば十分な洗髪効果を得られるよう最適化されています。
牛乳石鹸が115年以上蓄積してきた「皮脂を浮かび上がらせる処方技術」により、泡を作らなくても皮脂や汚れを浮かせることが可能となっています。
実際の手順はシンプルで、髪にミストシャンプーをスプレー→指で揉み込む→ミストブラシでとかす→タオル拭き取り、という流れになります。
従来の「ドライシャンプー」とは異なり、「すすぐ」という清潔感に直結する工程をあえて省かず、極少量の水で完遂できるのが『SUSUGU』最大の強みです。
ブラシ一体型のハンディタイプ
ミストが噴射されるブラシ型デバイスは、「髪をとかす」と「水を頭皮に行き渡らせる」動作を同時に実現します。
これにより手早く均一に、かつ地肌密着でミストを届け、指の届きにくい根元まで洗浄できます。電源と水量調整のみのシンプルな操作性で、初めての方でも直感的に使えます。
『SUSUGU』ミストブラシ:洗髪用ポータブルブラシ型デバイス
ポンプ | ブラシとポンプが一体型 |
---|---|
ブラシ | 取り外して丸洗い可能 |
タンク容量 | 約90ml(約コップ1杯分) |
電源 | コードレス(USB Type-C充電) |
サイズ | 高さ約25cm・重さ約330g(シャワーヘッド程度) |
コップ1杯分のお湯があれば洗髪ができます。
コードレスですから、室内どこへでも持ち運びできます。チューブや外付けのポンプ、電源ケーブル等、煩わしい装置類はありません。
『SUSUGU』は単なる「省水」家電ではなく、病気やけが、震災などの諸事情でお風呂に入れなくなった方にとって「快適な環境」を整えられる「社会インフラ」的製品と言えます。
利用者の声:実際に使ってみてどうだった?
「驚くほど簡単。しかもちゃんと気持ちいい」
『SUSUGU』を実際に使ってみると、まず感じるのがその簡単さです。
服を着たまま、ベッドや椅子に座ったままでも、わずかな準備ですぐに洗髪を始められます。いろいろな道具を揃える必要はなく、ミストシャンプーを吹き付けて軽く指で馴染ませるだけ。
横断性脊髄炎という疾患があり、週二回のデイサービスで入浴・洗髪している13歳のモニター参加者は「(ミストの水圧も)ちょうどいい、気持ちいい」という感想で、水ですすぐような感覚があって、スッキリできて、気持ちよさそうな様子でした。
この方は、ドライシャンプーを使った経験がありましたが、スッキリ感は感じにくかったそうです。
ミストシャンプーは「シトラスサボン」の香りで他のモニターからもサッパリして良い香りと好評です。
洗い終わったらまずタオルドライをして、それからドライヤーで乾かします。これで、通常のシャンプー後と同じようにサラサラになります。
通常のシャンプーを使うと、お湯でよくすすがないと、ぬめりがなかなか取れなかったり、乾かすのも大変だったりするそうです。
その点、『SUSUGU』ミストシャンプーは泡立たないタイプで、洗浄中の「ぬめりやベタつき」がほとんど残りません。タオルドライやドライヤーにかかる時間も短縮できます。
在宅・訪問介護で期待される活用シーン
訪問介護・ヘルパーにとってのメリット
『SUSUGU』の導入は在宅介護・訪問介護の現場でも良い変化をもたらしてくれると期待できます。
①洗髪の準備と手間を大幅軽減
従来は大掛かりな準備が必要だった洗髪介助も、『SUSUGU』なら1人でスムーズに対応可能。限られた時間を効率的に使えます。
②使い方のトレーニング不要
本体は軽量設計で、手が小さい方や高齢のヘルパーでも持ちやすいです。操作ボタンやミストの水圧もきちんと調整されているため、誰でも迷わず使えます。
③利用者の尊厳と清潔を守れる
着衣のまま髪を洗えるので、介護ベッド上や布団の上でも洗髪可能になります。「入浴は難しいが、せめて髪は清潔に」といった場面で活用できます。
④負担感が減らせる
無理な姿勢の変更や浴室への移動を伴わないため、利用者の転倒リスクやストレスの軽減にもつながります。同時に、介護者の方の精神的なストレスも軽くなります。
シャンプーの香りがさわやかで好評で、洗ってもらう側にとっては、リラックスしながら気持ちよさを感じられる新しい体験となりそうです。
介護される側の自立につながる
介助される側も「洗髪=大がかりで手間がかかるもの」と認識していたため、「今日はお風呂はいいよ」と遠慮しがちだった方が、「髪だけは洗ってほしい」と積極的に気持ちを伝えられるようになったというエピソードも聞かれました。
使い方は簡単ですから、これまで介助が必要だった人も、自分で洗髪できるかもしれない、そうした可能性も生まれてきます。
「入院時に『SUSUGU』を持参すれば自分でも使えそう」「看護師さんの負担も減らせる」といったアイデアがモニターの方から出されています。
『SUSUGU』によって、「洗髪=大がかりで手間がかかる」というイメージが払しょくされ、洗髪そのものがコミュニケーションのきっかけとなり、生活のQOL(生活の質)の向上につながる可能性があるのです。
どこで買える?購入方法と価格情報
「ポータブル洗髪デバイスキット『SUSUGU(ススグ)』は、2025年8月に牛乳石鹸公式オンラインショップ「みんなのAWA-YA」で発売予定です。
公式オンラインストア限定販売のみで、一般の量販店やECモールでの販売予定は現時点でありません。
- 取り扱いサイト:牛乳石鹸オンラインショップ「みんなのAWA-YA」
- 発売時期:2025年8月下旬予定
- 購入には会員登録が必要です。
既に大きな反響があり、事前予約は2025年6月30日正午をもって締め切られました。
入手希望の方は、会員登録が必要です。登録いただいた方には、一般発売の開始時にメールで通知されます。
製品仕様と価格
製品名 | 内容 | 税込価格 | 備考 |
『SUSUGU』 ミストブラシ |
洗髪用ポータブルブラシ型デバイス | 22,000円 | USBType-C充電、高さ約25cm・重さ約330g |
『SUSUGU』 ミストシャンプー |
SUSUGU専用ミストシャンプー200mL(約50回分) | 1,870円 | 単品購入も可能 |
『SUSUGU』は公式サイト限定展開のため、確実な購入には「みんなのAWA-YA」で会員登録し、発売日情報をチェックしてください。
『SUSUGU』発売直前期間限定特別サイトはこちら
まとめ:『SUSUGU』が変えるケアの風景
「髪を洗いたいのに、洗えない」という在宅介護の現実が変わるかもしれません。
お風呂に入らなくても、服を着たまま髪が洗えるということは、自宅で車いすを利用している方でも、腕と上半身が動けば、自分の好きなときに髪を洗ってサッパリできるということです。これは、高齢者の自立やQOL(生活の質)向上に直結すると思います。
介護する人も洗髪のストレスやプレッシャーから解放されます。気軽に「髪を洗おう」と声をかけることができ、コミュニケーションを楽しむ時間が生まれケアの質も向上するでしょう。
ポータブル洗髪デバイス『SUSUGU』の登場により、介護の洗髪に対する負担を大きく減らし、利用者と介護者双方にとって快適なケア環境を実現する一歩となります。
[参考資料]
服を着たままシャンプー 老舗「牛乳石鹼」が新家電発売へ、介護に照準
【体験レビュー】SUSUGUで、変わる、かも?ー「今日はお風呂はいいよ」から「SUSUGUで洗って」へ
牛乳石鹸が家電を開発!?YUAGARIあらためSUSUGU(ススグ)初公開!!
ワークショップでの出会い。インクルーシブな開発に向けて | YUAGARIプロジェクト
コップ一杯の水で爽快な湯あがりを提供したい│YUAGARIプロジェクト|牛乳石鹸共進社|新規事業室
ベッドの上での洗髪体験。オムツを敷いて、お互いの髪を洗いあってみた。|YUAGARIプロジェクト|牛乳石鹸共進社|新規事業室
【レポ】SUSUGU(ススグ)ミストブラシ・ミストシャンプーを使ってみた!お風呂イヤ対策や障がい児育児に助かるポイントを正直レビュー