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損保ケアの新事業 介護RDP(リアルデータプラットフォーム)egaku とは?

公開日:2023.04.21
最終更新日:2023.04.21

今日は介護運営トークルーム運営人ウェブです。

損保ケアが今月から新たな事業「egaku」を始めました。

「“介護×データ”で超高齢社会の課題を乗り越える −」とありますが、データ分析ツールは、今の世の中沢山出てきていて、目新しいものではありません。かつ抽象的なので一体何ができるのかさっぱりわかりません。

そこで SOMPO ケアの新しい事業はどんなもので、どこがすごいのか、調べてみました。

この記事を読むと、SOMPOケアがどのような方向性で事業を進めようとしているのか、介護DXの核になる技術は、世界的最先端なのだということが判ります。

このページは特にSOMPOを「よいしょ」するために書いた記事ではありませんが、調べてゆくうちに、こういうことが実現できるなら、凄いと直に思いました。

もしかしたら数年後の介護業界は一足飛びにすごいことになっているかもしれません。
介護DXについて、よくも悪くも具体的な新しいイメージを以てもらえれば嬉しいです。

 

損保ケアの新規事業 egakuとは?

「egaku」は、SOMPOが取組んでいる介護RDP(リアルデータプラットフォーム)のサービス名称です。

ただし、いきなり現場では使いこなせないので、デジタル化支援サービスと、プロフェッショナルサービスで人材とセットで支援します、というものらしいです。

しかし、SOMPOのホームページには、介護RDP(リアルデータプラットフォーム)とは何かとか、7つの機能とは何か等の詳しいことは何も書いていない。

そこで、SOMPOの公開されているIR資料からデータを拾ってみました。

株主向けのIR資料を見ると、SOMPOのegakuというサービスが今後SOMPOサービスの中核になってゆくものだということが判ります。

この手の資料は、株主向けに「お化粧」してあるものですが、そのお化粧を割り引いたとしても、SOMPOは「データ」を武器に新しい介護サービスや仕事の流れを作り上げて行こうとしていることが判ります。

IR資料によれば、利用者の介護状況の最初の評価から、その後の健康状態、ケア記録、体調管理に伴うバイタルデータや緊急時のアラートもデータとして蓄積、チェックとモニタリングをしてケアプランを改善。処方箋データも取りこみ、厚労省のLIFEとも連携する仕組みを構築したいのだと想像できます。

こういったことを実現するために、既存の介護業務システム(記録システム・請求システム)との連携も可能になっています。

つまり、どの記録システム、請求システムのデータも、介護RDP(リアルデータプラットフォーム)上に吸い上げ、そこでビッグデータ解析を行って意味のある価値提供をしようということです。

「時間創出」という価値は、人手不足という只今現在の業界全体の課題に応えるもので、、国が動くよりもずっと早く、現実の課題を解決することができる可能性があると思います。

このようなシナリオを損保ケアが描けるのは、2つ大きな理由があると思います。

1つはSOMPOは業界第二位の規模での介護施設を運営している事業者であり、利用者の活きたデータを大量に保有していること。

2つ目は新規参入企業だからです。元々は損害保険会社であり、2015年にワタミの介護を買収して介護業界に進出してきました。介護業界では、まだ8年の新しい企業です。損害保険会社での資本力もあり、IT企業とは対等に組むことができる。この点は、ずっと介護事業を中心にやってきた普通の介護事業会社とは大きく異なります。

この損保ケアが、「データ」を軸にサービスを作ってゆくにあたって、組んだ相手が米国のパランティアテクノロジーです。

 

パランティア・テクノロジーとは?

今最も注目度の高いビッグデータ解析ソリューション企業です。

2019年にSOMPOホールディングスと共同でPalantir Technologies Japan株式会社を設立。
2020年に2020年には富士通がパートナーになります。

注目すべきは、IT企業の富士通よりも早く、パランティアがSOMPOと組んでいます。分析データを持たない富士通は日本での販売パートナーの位置づけです。

とはいえ、シリコンバレーにはデータ解析会社が山ほどあります。パランティアはビッグデータ解析の会社として何がすごいのか。

パランティア・テクノロジー社は、2004年にスタンフォード大学のおひざ元のパロアルトでアレックス・カープ氏が創業、ペイパルの創業者で、著名投資家でもあるピーター・ティールテイルも参加する形で始まりました。

ペイパルは決済を行う会社として世界中のクレジットカード決済を扱っていたわけですが、その中でカードの不正利用や不審なお金の動きを感知するシステムがあり、その技術をコアに「情報を集め、分析し、テロや不正防止に役立てる」というところからサービスは始まったようです。

守秘義務もあり、顧客名やサービス内容等含め秘密にされてきたため、シリコンバレーでも「何やっているかわからない」会社だったそうです。

売上構成比は民間が53%、政府機関が47%で、現在、JPモルガンといった金融機関やエアバスなど大手企業と米国の数十の州、連邦機関をはじめとする約125の顧客に対して情報提供サービスを行っています。

パランティアの主力商品であるデータ解析サービスは、2つです。

1つは、軍や警察を対象とした「パランティア・ゴッサム(Palantir Gotham)」、2つめは、民間の金融業や製造業を対象とした「パランティア・ファウンドリー(Palantir Foundry)」です。

https://www.keywalker.co.jp/blog/palantir-ipo.htmlより転載

これは犯罪組織のネットワークですが、一人の利用者に誰が関わっていてどのようなデータがあるのかという連携の図を瞬時に描けます。犯罪組織だと恐ろしいですが、これを介護利用者を中心として、誰が関わってどのようなケアがされているかというように置き換えると、活用範囲は無限大に広がります。

パランティアの技術の強み

パランティアの強みは、文書、画像、音声、動画などの非構造データと、構造データの統合・分析を容易にできる技術です。

構造化データとは、事前定義され、ある定められた構造となるように整形されたデータです。典型的なものは、Excelやデータベース等で集計などもしやすくなっています。

これに対し、非構造化データとは、その名の通り事前に構造の定義ができないデータです。eメール、見積書・発注書、画像、動画、メモ書き、音声データ等。日常業務に溢れているのはこの非構造化データです。

普通の構造化データ同士であっても、2つ以上のデータを統合することは非常に厄介です。それが 構造化データと非構造化データという、データの形が全く異なるものを統合するということはかなり難しい。

パランティアの技術は、一見関係の無いデータ同士であっても、分析により関係性や意味を見出し、データを可視化することによって新たな意思決定へとつなげることができます。

例えばアンケート、エクセル表、電子メール、チャット、HP閲覧履歴、クレジットカード履歴などのデータ化されたものから、必要であればその人の郵便履歴や自動車での出勤ルートなど、ありとあらゆるバラバラの情報を収集し、それを最終的に目的に応じてデータの相関性を加味しながら、結論、最終目的に到達する答えを見つけ出すことができる、ということです。

しかも、これまで諜報機関や戦略コンサルが行ってきたこの分析作業を、驚くほど短時間で行うことができる、のだそうです。

このPalantir Technologies Japanは、2022年から新しい料金体系「Palantir Data Mesh」提供開始しました。

最大の特徴は従量課金型の価格を新たに設定したこと。Data Meshへのデータ移行を無料でサポートし、保存先のストレージ利用料もかからない。最低利用期間や追加料金も発生しないため、大企業のみならず、中堅中小企業でもリスクを抑えてスモールスタートで利用を開始することが可能となります。

なぜ、こんなすごい会社がIT企業大手の富士通を差し置いて、介護事業である 損保 グループと組んだのか?

きっと、日本の介護業界のICT化は、まだ開拓の余地があり、宝の山が眠っている市場だからだと思ったからでしょう。

今後、世界中で高齢化が進展していく中、課題先進国である日本でノウハウを溜めるということは意味があります。

アメリカでも高齢化は進んでいます。 現在4350万人が無償で介護に従事しており、この数は過去5年 平均 4%以上で増えていると言われています。

2040年には65歳以上のアメリカ人は8000万人になると言われています。データ分析会社にとって日本の介護業界 はまさに挑戦すべきジャンルで、宝の山なのでしょう。

まとめ

以上損保 グループが世界最先端のとんでもなく凄いデータ分析会社と組んで、新しいサービスをスタートしたということをご紹介してきました。

損保 グループは、2024年度までは、更にサービスを磨き込む期間と位置付け、 自社でこのサービスを活用するとともに、このような先端的なテクノロジーを一緒に試してくれるような仲間になる介護事業会社を探しています。 そして2025年以降に拡販を目指しているそうです。

IR 資料によれば、すでに参加した介護事業者の方からの初期のフィードバックは非常に好評だそうです。損保ケアのお問合せページから問合せを受け付けています。
https://corporate.sompocare.com/egaku/info/

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