介護業界で一番のお悩みは、人手不足と採用ではないでしょうか
介護の採用代行業者、マッチングサイトからひっきりなしにお電話があると思います。
でもせっかく採用できても、すぐに辞めてしまう、そんなことの繰り返しではないでしょうか?
ここでご説明するSNS採用という方法は、そういったお悩みの解決に結びつくかもしれません。
SNSで採用すると聞いても、ピンとくる方は少ないと思いますが、介護業界の採用において、メリットは大きいと思います。
実際にSNSを使って採用に成功している介護の事業所も、わずかですが現れています。
ここでは介護業界におけるマッチングサイトの現状、SNS採用のメリットとデメリット、そして成功事例についてお伝えしたいと思います。
介護業界でマッチングサイトが乱立
介護業界でマッチングサイトは乱立しています。
これほど数が多いとは思いませんでした。
詳しい方が調べたところこの図にあるように、41サイトもありました。
運営主体は、人材派遣会社、採用代行、介護事業者など多様です。
残念ながら、まともな人材紹介をやっている会社ばかりではないのが現状です。
厚生労働省の規制
こうした現状を受けて厚生労働省では規制に乗り出しました。
厚生労働省が適正な人材紹介をしているマッチングサイトに認証マークを出す制度です。
医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度
厚生労働省の調べによれば、採用にかかった平均手数料は、2021年度で42万円、保育が53万7000円、看護が57万2000円でした。中には100万円以上の高額な事業者もみられたそうです。
かねて高額な手数料を請求したり、採用後、短期間で離職し次の派遣先を紹介してもらって職場を変わる「渡り派遣」も問題となっていました。
2021年4月から職業安定法が改正されて、人材紹介会社が転職者に支払う「就職お祝い金」が原則的に禁止になりました。
求職者にお金というインセンティブを出して、自社への登録を増やしたいという人材紹介会社が増えると、人材紹介のサービスの質向上への取り組みが薄れます。
また転職すればするほど求職者はインセンティブが稼げるので、人材紹介会社と結託した不正行為をすることを防ぐためといった理由もあります。
厚生労働省は職業紹介事業者を選ぶ際の参考とするよう呼び掛けており、昨年6月に適正事業者一覧を公開しました。今後も毎年度更新していく予定です。
2024年3月の適正事業者の一覧はこちらです。
紹介手数料の相場
ただし適正な事業者を経由したところで、やはり採用を依頼した場合は、手数料は必要です。
通常人材紹介の手数料は、介護業界だけでなく、どの業界でも25~30%前後と言われています。
ですので1人の正社員を雇おうと思えば100万円前後はかかってしまうということになります。
この費用を支払わずに、自力で採用をする方法はないのでしょうか?
そこで、SNS採用です。管理者、経営層、採用担当者の方にお勧めしたい方法です。
SNS採用の優れている点
SNSによる採用は、介護の業界だけでなく、今どきの若い人たちを採用するにはうってつけの方法だと思います。
なぜなら今の若者にとって、SNSは一番親しんでいるメディアだからです。
彼らはテレビよりもSNSに時間を割いています。
採用する側の年代の人たちは、SNSよりもむしろ就職情報誌やメディアを見て就職をした世代でしょう。
ここには大きなギャップがありますが、SNSによる採用というのは若い人向けの合理的な判断なのです。
ではSNS採用のメリットは何なんでしょうか。
採用コストがかからない
まず採用する活動について、コストが全くかかりません。
ポスターもチラシを作る必要もありません。必要なのはたった2つ
・知恵と工夫とアイディア
・根気
だけです。
採用のミスマッチが起こりにくい
SNSというメディアを通じて、自社の事業所の情報を発信していると、フォロワーには、事業所の雰囲気や様子が自然に伝わります。
あらかじめ入社した後のイメージを持って面接に来てくれるというところが、SNS採用と通常の採用代行との大きな違いです。
通常の採用代行の場合面談は1回、多くても2回で終わりです。
しかしSNS採用の場合は面談に申し込む前に、その普段の事務所の様子や実態、利用者に対する接し方などを十分に理解した上で申し込んできます。
採用された後のことまでイメージして面談に臨んできてくれているので、本気度のかなり高い人と見てよいでしょう。
採用後すぐにやめるというようなミスマッチが起こりにくいです。
事業所のマーケティングを考える絶好の機会
しかしSNSで何を投稿したら良いかわからないという声が聞こえてきそうです。
実はこのポイントこそが、SNSを採用に活用する最大のポイントです。
自分達の事業所で働くメリットは何でしょうか?
自分たちの事業所の特徴は何か、働く人にとってのメリットは何か、利用者の方に選ばれる理由は何かということを考える素晴らしいチャンスになるのです。
しかし管理者や経営層の方がどういう考え方、どういう思いを持って介護の事業というのをやっているか、大事にしていることや考え方を発信することは十分に意味があります。
自分たちの事業所の毎日の出来事、管理者が心がけていること、日常のちょっと感動したこと、をリアルに素直に伝えること。
このようなメッセージは、仕事を探している人だけでなく、今一緒に働いてくれている職員の方に向けても、事業所の魅力をさりげなくアピールすることになります。
そうは言ってもイメージがつかめないかもしれません。
職員の方や管理者の方も全員忙しい方ばかりでしょう。よくやってくれた職員の方に顔を合わせてお礼を言う時間もないのではないでしょうか。
SNSでお礼を言う、労いの言葉をかけるだけでも効果があります。
職員の方が、管理者の方と顔を合わせた時や挨拶するときに、管理者の人に対して持つ親しみやすさ、距離感や感情は全然違ってくるでしょう。
今勤めている人たちの離職を防止するということにもつながってくるのです。
逆に管理者の方の考え方を見て、その事業所を退職する人が出るかもしれません。
でもそういった職員の方は、遅かれ早かれやめる方でしょう。事業所の大事にしている考え方と会わない方が辞めるのは、仕方がないことです。
SNSは広告宣伝の場ではないので書き方や投稿の仕方は当然工夫をする必要があります。
が、管理者や経営層が、コツコツ地道に発信を続けることは、大事な意義があります。
SNS採用のデメリット
無料でできてミスマッチは起こりにくく、いいことずくめのように見えるSNS採用ですが、ではどうしてどの事業所もやらないのでしょうか。
時間がかかる
SNSの自社アカウントをある程度の規模まで大きくするには、どうしても時間がかかります。
また時間をかけないと自社アカウントとして十分に機能させることはできません。
毎日最低20分程度はSNS投稿に時間を割かなくてはいけません。
この根気は必要です。
アカウントを育てるまでに時間がかかってしまう、これがまずSNS採用の欠点です。
やり方がわからない
若い方でSNSを個人でやっている方は多いでしょう。
しかし40~50代で、企業もしくは事業所という立場で、SNS発信をしている方はまだまだ少数派だと思います。
どういう形でSNSの発信を続けていけば良いのかがわからない方が多いのだと思います。
特にSNSで炎上したりするリスクは避けなければいけません。
どういうことに注意してSNSの投稿を続ければ良いのか、そもそもSNSと一口に言ってもFacebook、Twitter、Instagramのどれから始めれば良いのか、そういったこともイメージがつきにくいと思います。
確かにSNSの発信については企業でも炎上の事例はあります。
しかし、それでもSNSで採用に成功した事例も出てきています。
SNS採用の成功事例
これはX(旧Twitter)で採用に成功しているアカウントの事例をご紹介します。
X(旧Twitter)をやっている界隈では有名な方なのでご存知かもしれません。
愛知県で訪問介護、児童発達支援、障害者グループホーム等7事業を立ち上げている株式会社ビジョナリーの丹羽悠介社長のアカウントです。
もと美容師で、介護施設に出張して散髪をしてあげたことが介護業界との設定でした。
そこから介護業界で起業されています。
2024年現在、この丹羽悠介社長のアカウントのフォロワーは2万人。毎月60~70件、年間で800件ほどの採用応募をもらえるようになっています。
話題づくりの上手さ
SNS採用での成功要因は話題づくりの上手さにあると思います。
この会社では、福祉×マッチョという誰も考えつかなかったアイデアで「フィットネス実業団」を作ります。フィットネスとかボディビルとかの大会に出たいという方々を、本腰を入れて支援する制度です。
具体的には介護6時間、トレーニング2時間のスケジュールで働くのを認めています。コンテストの出場も業務時間内として認め、会社が練習費用やコンテスト資金まで支援しています。
これは株式会社ビジョナリーの「人の人生を応援する」という理念に沿った考え方で、
「本気で何かに取り組んでいる人」に介護業界で活躍してもらえたら、という発想です。
一般の会社でも、実業団というのはありますが、ここまで手厚い支援は珍しいでしょう。
筋肉というものは日々鍛えないとつかないし、見てカッコいいです。まったく新しい働き方という意味でも話題性がありました。
そして丹羽社長自身がマッチョの男性のビジュアルやネタを、X(旧Twitter)に一人でコツコツと投稿しました。
徐々にフォロワー数が増え、話題に上るようになり、大手メディアで取り上げられるようになっていきます。
今では多くの団体から採用について講演を依頼されるようになっています。
ただし、丹羽社長も一朝一夕で、ここまできた訳ではありません。
この方、実は10年以上にわたってX(旧Twitter)を続けています。投稿数から見て、1日平均3~4回は投稿していた計算です。
ただこの方の投稿を見ていると、決して会社として気負った理念やポリシーという固い発信だけでなく、自分の思いや感情、現在の活動や感動したことを、素直に発信しているということがよくわかります。
アカウントのフォロワーが多くなるにつれ、「業界荒らしが来た」と周囲の介護事業者からは嫌なこともたくさん言われたそうです。
しかし、この社長は、おそらくそれも含めて半分楽しんで続けられたのだろうと思います。
とにかく継続したこと、これが採用の成功ということにつながっているのだと思います。
まとめ
SNS採用のメリットとデメリット、そして成功している事例についてお話ししてきました。
SNSによる情報発信は、すぐに採用に結びつくとは限りません。
確かに時間はかかります。
しかし管理者や経営者の方が、SNSを継続するとメリットはたくさんあります。
そのメリットとは、自分たちの理念や考え方が、利用者様に対してもアピールできること、一緒に働く職員の方、提携している医療機関、ケアマネージャー等にも伝わることです。
そして、今SNSで新しい仕事場を探している方です。
自分たちがどうして介護事業をやっているのか、という理念や考え方を語るということは簡単なことではありません。
しかしこれこそ、まさに事業所として選ばれる理由ということにつながってきます。
そして、こんなことまでは採用代行会社やマッチングサイトは考えてはくれません。
採用だけでなく、利用者の獲得そして周辺の介護事業の方へのアピールやマーケティングも含めて、SNSというのは有効な手段だと思います。
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