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旧漢字名前が介護ソフトで使えない!漢字変換できない場合の実践対処法

公開日:2025.08.25
最終更新日:2025.08.25

介護事務をしている方の中には、利用者様の名前を介護ソフトに入力する際、旧漢字が変換できなかったり、文字化けしてしまって困った経験がある方も多いのではないでしょうか。

この記事では介護ソフトでこういった漢字変換できないという現象がなぜ起きるのか、このような現象が起きた場合にどうすればいいのかというお話をさせていただきます。

ご利用者様の氏名・住所等に旧漢字が使われていて正しく漢字変換できないという問題は、パソコンのOSや介護ソフトというシステムの土台に関わる根深い問題です。

業務内で限られた時間を有効に使う実務的な解決方法を知っていただきたいと思います。

目次

漢字変換できないメカニズム

多少遠回りですが、旧漢字が正しく表示できないメカニズムを知るには、まず文字コードという概念を理解する必要があります。

文字コードとは何か

コンピューターは、わたしたち人間が普段使う「あ」や「A」のような文字を直接理解することはできません。コンピューターが理解できるのは、「0」と「1」の数字の組み合わせだけです。

文字をコンピューターが理解できるようにするために、それぞれの文字に「番号(ID)」を割り当てるというルールがあります。このルールを「文字コード」と呼びます。

文字コードとはもう少し具体的に言うと文字集合(文字と番号の対応表)と符号化方式に分かれます。符号化方式とは、文字集合の「番号」を、実際に0と1の列にどう変換するかのルールのことです。

出典:【初心者向け】文字コードの種類と仕組み入門~ascii/Shift-JISの互換,UnicodeとUTF-8の違い,Base64/QPについて~より抜粋

この図は文字集合に番号を付与したShift-JISの文字集合です。この図の詳しい説明は、ここでは省略しますが、漢字は2Byteで表現するため、ピンク色がついている箇所で表現されます。

さて、この文字コードもいろいろなものがあります。主要な文字コードの特長を以下のようにまとめてみました。

最初にできた文字コードはASCIIでしたが、日本語が扱えません。そこで日本語を表現するためにShift-JISが生れました。

現在の主流はUTF-8で日本語を始めとする多言語に対応しており、これが世界標準になっています。可変長(1〜4バイト)で全世界の文字を表現できます。UTF-8は世界中の文字に固有の番号(コードポイント)を割り当てていますので、JISX0213の第1水準〜第4水準に相当する日本語漢字も収録しています。

しかし、日本語が3バイトで表現されるため、システム内部で保持するファイルサイズが大きくなってしまうため、古いソフトでは敬遠されてきました。

文字コードが異なれば、同じ文字でも表現が異なっています。

アルファベットの「A」

ひらがなの「あ」

 

Unicodeとは「どの文字に何番を割り当てるか」というUTF-8を使う時の、文字集合(文字と番号の対応表)です。

ASCIIは英語専用で128文字しか定義されていない文字コードなので、日本語を含む非英語文字を表現することはできません。

旧漢字はなぜ正しく表示できないのか

ここまで長々と書いてきましたが、それでは旧漢字が正しく表示できないという問題はなぜ生じるのでしょうか?

漢字はShift-JISで表現できますが、実はShift-JISにも実に多様な種類があります。

出典:「Shift_JIS系文字一覧イメージとSJIS・MS932・CP943・SJIS2004の違い」

これは、過去40年にわたるパソコンと携帯端末の歴史と言ってもよいぐらい、端末のOS普及と対になっています。

最初に定義されたShift-JISを基本に、各メーカーが独自の文字集合を追加・拡張していきました。

現在主流になっているのは、最初に定義されたShift-JISと、マイクロソフト標準Shift-JIS(MS932)の2つです。

マイクロソフト標準Shift-JIS(MS932)は、マイクロソフトがNECとIBMの拡張を一つにまとめたもので、これが広く使われるようになりました。

マイクロソフト標準Shift-JIS(MS932)では、JIS漢字コードの第一・第二水準の漢字は全てサポートしています。しかし旧漢字(第3・第4水準漢字)まで、対応していません。

旧漢字(第3・第4水準漢字)に対応しているShift-JISはJIS X 0213ベースの拡張Shift-JISです。

介護ソフトに限らず、ソフトウェアがどの文字コードを基盤にして動いているかによって、表現できる文字の範囲が変わってくるということなのです。

旧漢字が表現できない場合、自動で新字体に置き換えるのか、□だけで表示しないのかはそれぞれの介護ソフトに仕様によります。

介護ソフトとしてどこまでカバーすべきか

ここからは、介護ソフトとしてどの範囲の漢字をカバーするのが妥当なのか、ということについて考えたいと思います。

ここでは、ケアプラン連携システムをとりあげます。

ご存じの通り、ケアプラン連携システムとは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間でやり取りされるケアプランの予定と実績データの共有ができるシステムです。異なる組織であれば、異なる介護ソフトを使っているのが前提です。

ではこのケアプラン連携システムでは旧漢字をどこまでサポートしているのでしょうか。

ケアプラン連携システムの標準仕様

令和5年4月17日にケアプランデータ連携システムの標準仕様は改定されました。改定後の仕様の抜粋は以下の通りです。

出典:厚生労働省「居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所間における 情報連携の標準仕様」の改訂について」

「CSV形式、かつShift-JIS MS932必須」とされており、「外字や文字セット外の文字は有効な文字に変換すること」とされています。

ちなみに、改定前の仕様書はこのようになっていました。

出典:厚生労働省資料「「居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所間における 情報連携の標準仕様」について」

Shift-JISの定義が曖昧なので、システムを構築する介護ソフトメーカー各々の解釈に任せられていました。これを令和5年に、より厳密に定義しなおした形です。

介護ソフトでの旧漢字の実務対応

このように、厚生労働省が、介護ソフトの連携のためのソフトの仕様でShift-JIS MS932と定義しているのですから、実務的には、旧漢字が正しく表示できない場合は、マイクロソフトの標準の範囲で表示できる漢字に置き換えて表示しても差し支えないことになります。

どの漢字がJISの第一水準~第四水準のどれに相当しているのかを調べるには、こちらが便利です。

一般財団法人流通システム開発センター

不明な漢字を「漢字」欄に入力して検索すれば、JISの第一水準~第四水準のどのグループに入っているのかがわかります。

旧漢字が表示できない場合の対応

ご利用者様の氏名や住所の漢字表記が旧字体であった場合は、システム上の原因なので、無理に対応する必要はなく、ご利用者様の許可を得て現代漢字表記を変換するのが最も現実的でかつ確実なやり方です。

ご利用者様には、「介護ソフトの変換機能が対応していない」という理由で現在使える漢字の表記に変換してよいか許可をいただきましょう。

ただ、表記の一貫性を持たせるために、事業所内で一定のルールは必要です。

「齋藤」等に齋に類似した漢字は、すべて「斎藤」にする、または「サイトウ」とカタカナ表記する等です。

改正戸籍法の施行に伴い、2025年5月26日以降、戸籍に氏名の読み仮名(フリガナ)が記載されるようになります。

政府も住民情報をデータベース化するのに、旧漢字表示と、正しい読み方が不明という問題に直面しています。

旧字体の場合、漢字をつかわずカタカナにする、というのも1つの判断だと思います。

第4章:まとめ

どこまで旧漢字が表示できるのかは、介護ソフトのシステム仕様によります。旧漢字を無理やり表示させるために貴重な業務時間を使うのはやめましょう。

UTF-8であれば、基本旧字体の表示は対応しているので、このような問題はおこらないはずです。

しかし、Shift-JISの場合は、旧漢字を表示できないことはあり得ます。

このような場合、「介護ソフトでは未対応」ということでご利用者様の許可を得て新字体に表記を置き換えて入力するのが現実的です。

旧字体が出てきたらどう扱うかという「現場の運用ルール」を作っておく方が大切だと思います。

今後の準備や検討のための資料として、本記事が役立てば幸いです。

[参考資料]

Shift-JIS / UTF-8 文字化け解読:実はもうちょっと読めるかも

睡人亭 文字コード入門

Shift_JIS系文字一覧イメージとSJIS・MS932・CP943・SJIS2004の違い

文字コードの仕組みと文字化けの原因および解消方法のまとめ