デイサービス、訪問介護、訪問看護等の居宅介護事業で、利用者を増やすのにお困りの事業者様は実は多いのではないでしょうか。
そんなご経営層の方に向けて、利用者の増加のために何をすべきか、特にオンラインやSNSを使った新しい手法が何故重要なのかについてご説明します。
これらのオンライン集客は、介護業界以外では広く行われています。が、介護という業界で役にたつのか、疑問でした。
しかし、家族の介護を通じて、お世話になったケアマネージャーさんがデイサービスを選定するの様子を伺って、インターネットによる情報発信がこれからは経営上、重要になってくると確信しています。
利用者を増やし、選ばれるデイサービスになるための考え方と具体的施策を整理します。
デイサービス事業を主な対象として書かせていただきましたが、基本的な考え方は訪問介護や訪問看護にも共通すると思います。
1.なぜ今、利用者獲得が重要なのか
日本全国で見ると、通所介護・訪問介護・訪問看護ともに年々微増傾向です。
○居宅サービス事業所
- 訪問介護 36,905事業所 (対前年 + 485事業所( + 1.3%))
- 訪問看護ステーション 16,423事業所 (対前年 +1,594事業所( +10.7%))
- 通所介護 24,577事業所 (対前年 + 8事業所( + 0.0%))
出典:厚生労働省 令和5年「介護サービス施設・事業所調査」プレスリリース
毎年出されている介護サービス施設・事業所調査の概況によれば、通所介護事業所は全国的には年々微増傾向です。
高齢化が進んでいるのだから、当然のことのように見えます。しかし、これを都道府県別でみると、都市部と地方で異なる状況が浮かび上がります。
事業所数の増加と地域間格差
出典:統計リアル
2022年までのやや古いオープンデータから作成された図ですが、三大都市圏ではデイサービスが多いことがわかります。逆に、統計リアルのデータを見ていただくと、青森、秋田等の東北エリアでは、デイサービスの数は減っています。
東京近県を含めた三大都市圏では、デイサービスでは「事業所間の競争」が起きている状態だと言われています。人材の獲得競争は激しく他業種のみならず、同業種内での人材の奪い合いが起きています。
都市部での飽和状態
福祉医療機構が2019年度に実施した「通所介護事業所の経営状況について」の調査結果によると、事業規模区分別の利用率の全国平均は以下のようになっています。
地域密着型・・・68.9%
通常規模型・・・71.2%
大規模型(ⅰ)・・・77.6%
大規模型(ⅱ)・・・77.2%
これは全国平均ですから、都市部では事業所間の競争が激しいことを考えると、事業者が飽和し、選ばれない事業所は空きが埋まらないという状況に突入していると推定できます。
同時に、都市部では利用者のニーズが多様化しており、ただ「空き枠」があっても、曜日・時間・送迎距離・医療対応など条件でマッチしないと埋まらないという現象が起きています。
受け入れさえしていればよいという時代ではない
利用者の需要がなくなったわけではなく、デイサービスへの潜在需要は多いと思います。
しかし介護単価が上がる中、需要があっても利用を控えるという利用者側の「お財布が厳しい」事情も影響していると思います。
地方では、送迎に時間がかかることもあり、喜んでゆきたいと利用者の方に思っていただけないと、デイサービスには「来てくれない」時代になってきたと言えます。
三大都市圏でもとりあえず開業すれば経営は成り立つという訳ではありません。安定的に利用者を集め、その利用者が継続してくれなければ利用率が上がらず、事業経営が成り立ちません。
都市部も地方も、放っておいても利用者が来てくれるという状況ではなくなっているのです。
2.利用者が集まる施設・集まらない施設の違い
それでは具体的に利用者が集まるデイサービスと、利用者が集まらないデイサービスとは何が異なるのでしょうか。
デイサービスに利用者様を紹介してくれるのは、主にケアマネジャー(介護支援専門員)、地域包括センター、医療関係者です。
彼らは実際にどのような基準で施設を選び、紹介しているのでしょうか。
紹介されやすいデイサービス
- 利用者層が明確で専門性が高い
ケアマネジャーは、利用者一人ひとりの状態やニーズに合ったサービスを選ぶ必要があります。そのため、「要介護度別」「疾患・症状別」「目的別」「時間帯・運営形態別」など、ターゲット層に特化したデイサービスは、ケアマネジャーの方が、選びやすいです。たとえば、認知症専門やリハビリ特化型、要介護3まで受け入れ可、短時間型、入浴特化型など、専門性や独自性が明確な施設です。
- 安全対策と医療的ケアとの連携
医療的ケア(服薬管理や健康チェックなど)や安全対策がしっかりしていることも、紹介先としての大きなポイントです。特に高齢者や持病を持つ方の場合、医療との連携や緊急時対応力が求められます。
これは、そもそも利用者がデイサービスに行く理由は、必要ケアと機能訓練を受けたいというアンケート結果に現れています。
出典:NTTデータ経営研究所「人生100年時代における次世代シニアの介護に関する意識調査」
- 利用者・家族のニーズに柔軟に対応
送迎時間や利用時間の調整、食事や入浴の有無、認知症対応など、個別の事情にきめ細かく対応できる点が重視されます。ケアマネジャーやご家族の要望に沿って受け入れ条件の幅が広く、「断らない」姿勢や土日対応なども高く評価されています。
- 情報共有・連携がスムーズ
ケアマネジャーや医療関係者との連絡・情報共有が迅速で丁寧なデイサービスは、信頼されやすく、紹介先として選ばれやすいです。問い合わせ・見学依頼にすぐ対応し、必要書類も早期に提出してくれることが大切です。提供サービス内容、利用開始までの流れが明確で、家族への説明も分かりやすいのは、次回への紹介につながります。サービス担当者会議で積極的に発言してくれたり、利用者の状況報告、緊急時の対応力などの連携体制は重要なポイントです。
紹介されにくいデイサービス
反対に、医療関係者やケアマネジャーさんたちが紹介したくない施設の特徴は以下の通りです。
- 預り型で、専門性が低い
1日預り型で、レクリエーション等で時間を過ごすというタイプのデイサービスは、積極的に紹介する根拠づけがしづらいです。これは、デイサービスに行きたくない理由の調査を見ると明白です。
出典:NTTデータ経営研究所「人生100年時代における次世代シニアの介護に関する意識調査」
上のグラフから、必要以上に他人に干渉されたくないと思っている方が大半だということがわかります。介護のレクを積極的にやりたがっている人は少なく、趣味や自分の好きな事に時間を使いたいと考えていることがわかります。
- 安全対策や医療的ケアが疎か
医療的ケア(服薬管理や健康チェックなど)や安全対策を定期的に行っていないと、医療関係者からは、疑問符がつきます。
- 受け入れ条件が厳しく、対応が杓子定規
医療依存度が高い方や認知症のある方をすぐに「断る」姿勢があると、紹介されにくくなります。また送迎時間や利用時間の調整などの対応が杓子定規だと、これも紹介しにくくなります。
- 情報共有・対応が遅い
契約の条件、空き状況、加算の有無などが不透明な施設は避けられます。実際に何度も連絡をしても繋がらない、折り返しが遅いなどのケースが報告されています。見学時や問い合わせ時の言葉遣いや対応に不信感があると、紹介の候補から外されやすくなります
つまり医療関係者やケアマネから紹介されるデイサービスや施設事業所は、対応が早く説明がわかりやすく、利用者を紹介した後にも情報が共有してくれる事業所です。こういった信用できるという実績が積み重なり、紹介が続くわけです。
逆に連絡がつかず対応も遅く、説明が分かりにくく対応が杓子定規、というところはケアマネの方や医療関係者も、紹介を敬遠します。これらは一般の社会やビジネスにも当てはまる、当たり前のことと言えましょう。
では、当然のことをコツコツ積み重ねてゆけば、利用者を増やすことができるのでしょうか。オンラインをどのように活用してゆくのか、より詳しく見てゆきましょう。
3.ケアマネがデイサービス、訪問看護、訪問介護事業所を選定するプロセス
ではここで医療関係者やケアマネージャーの方々が、どうやってデイサービスを選定しているのか、プロセスを詳しく見ていきましょう。
ケアマネジャーさんの居宅事業所の選定プロセス
1.利用者・家族からの要望をヒアリング
- 希望サービス内容、距離、対応可能な時間帯、処置内容などを確認
2.各種リスト・検索で要望にあった事業所を探す
- 希望サービス内容、距離、対応可能な時間帯、処置内容があっている事業所を探す
- 複数ある場合は、評判がよい施設、連携実績のある事業所を優先
- これらを総合して候補を挙げる
3.空き状況確認と事前見学の調整
- ケアマネジャーさんから事業所へ連絡
- 空き状況、受け入れ可否を確認
- 連絡の速さ、対応の丁寧さ、資料提供の有無が評価ポイント
4.利用者と相談し最終決定
- サービス内容や費用、職員体制などを家族と共有し決定
ケアマネージャーさんは、ご存知の通り1人当たり何十人ものご利用者さんを抱えています。これらの1から4までの選定プロセスを超高速で回さなくてはいけません。ポイントになるのは2番と3番です。
まずご利用者様の希望に合ったデイサービスを探さなくてはなりません。ケアマネージャーさんたちは、希望するエリアにデイサービスはあるのか、サービスの内容はどうかをインターネットで検索することが非常に多いです。
早く空き状況を確認しないと、いくら条件がご利用者様の希望に合っている施設があったとしても枠が埋まってしまうかもしれません。
条件にあったデイサービスをネット検索で早く調べるというプロセスの比重は増しています。その場合はおそらく「デイサービス (エリア名」」という検索をすることでしょう。
検索による情報収集というプロセスは、ケアマネージャーさんたちにとって大事なプロセスということをご認識ください。
オンラインでの情報発信での最重要ポイント
ケアマネージャーさんたちの立場に立つと、自分たちが忙しい中、必要な情報がネットの検索ですぐに見つかるのがベストです。
紙やパンフレットをもらっても、日々忙しい中、いざという時にその書類を探すケアマネージャーさんが何人いるでしょうか。パンフレットを探している時間があるなら、「デイサービス(地域名)」「リハビリ (地域名)」で検索して探した方が早いのです。
その時にホームページが見つからなければ、どうでしょうか?
どんなに素晴らしいサービスを提供していても、「デイサービス(地域名)」で検索結果に表示されなければ、ケアマネジャーさんにとって、そのデイサービスは存在しないのと同然です。
まず、自社のホームページを準備しましょう。次に地図上にデイサービスの場所が表示されるようにする必要があります。地域名で検索したときに、自社のホームページが表示されるようにGoogleビジネスプロフィールに登録することが大切です。
ホームページを準備するのに簡単なツールやGoogleへの登録方法はこちらでご紹介しています。
4.利用者集めの具体的な施策
では、利用者を増やすために、どのようなアクションをとっていけば良いのでしょうか。
ご存知の通り、ケアマネ、医療機関や地域包括等どこも超多忙です。信頼関係とか、顔が見える関係づくりとはいいますが、用事もないのに訪問してはかえって嫌われます。
1.ケアマネからの紹介強化
忙しいケアマネージャーさんに、思い出してもらうためのツールが必要になります。
言うまでもなく、ケアマネジャーの方が紹介しやすいように、利用者事例やQ&Aを載せた「説明資料」はとても大切です。
ケアマネジャーさんが許せば、こちらから情報を届けたい時には、季節ごとの空き状況やサービス案内をFAXやLINEで定期送信するのも1つの方法です。
適切な頻度で、定期的に情報配信をするのは「覚えてもらう」ためにも大切なアクションです。
逆にケアマネージャーさんが情報を探している時には、ホームページに必要な情報は全て掲載し、電話や資料を見なくてもすぐに必要な情報がわかるようにしましょう。
Googleビジネスプロフィールを充実させ、地図上に掲載されていることは必須です。送迎やご利用者様のお宅からの距離を確認するのに正確な地図情報は欠かせないからです。
ホームページには、医療上の安全対策をどこまで行っているか、認知症・精神疾患対応力がどこまであるのかについて、詳細に記載します。
地味ですが、加算取得状況・料金体系についても大切な情報なので掲載が必要です。
利用者・家族の評判、実際の利用者からの声、スタッフの雰囲気等が自然に伝わるような写真等は信頼感アップにつながります。
2.医療機関・地域包括との連携
医療機関、地域包括支援センターも超多忙です。ここでも、「思い出してもらう」ために利用者事例や担当看護師向けのQ&Aを含めた「説明資料」はとても大切になってきます。
特に、医療機関の場合、退院カンファレンスの参加依頼が来たら必ず出席し、そこで丁寧な印象を残すことは重要です。「安心して任せられる」印象を与えるため、その後の利用者の状態報告を意識的に行う等、小さな報告で信頼感を積み重ねることが大切です。
宣伝めいた情報を送るよりも「ご紹介いただいたご利用者の方はこんな状態です」という報告をする方が、医療機関や地域包括にとっても意味があり、また誠意ある対応に映ります。
3.オンライン集客(Web/SNS)上での情報発信
前項でも書きましたが、オンラインでの情報発信の比重は増しています。Googleビジネスプロフィール、ホームページの情報整備は必須と言ってもいいでしょう。
体制が整えば、すぐに連絡がつくというLINEという受け窓口を作っておくのも1つの方法です。ただしLINEの窓口は、利用する側の期待感も大きいので、すぐに反応ができないような体制ではやらない方が良いでしょう。
オンラインでの情報発信というのは、もう一つ重要な効果があります。それは、ご利用者の家族の方に対して直接情報が届くということです。
これから介護サービスを利用するかもしれないご利用者様の家族の方は、まずインターネットで情報を探します。やはり地域で評判の良いデイサービスを、SNSやホームページで探します。
ケアマネージャーさんがどこを推薦しても、最終的にご利用者本人とその家族の方の同意必要なわけですから、ご利用者とその家族の方に情報がきちんと届けられるという効果は言うまでもなく大きいです。
ご利用者の家族にとって、最も気になるポイントは口コミや評判です。既存の利用者様、ご利用者の家族の方に褒めていただいた点を積極的にアピールしましょう。具体的には、満足度アンケートの活用、口コミ・紹介の促進、イベントの紹介や利用者インタビュー等も効果的です。
地域イベントがあれば、SNSやホームページで積極的に取り上げましょう。家族向け相談会なども積極的にアピールしていきましょう。
5.施設の強みと差別化ポイント
上記のように、忙しいケアマネジャーさんや地域包括センター、医療関係者の方に情報を伝え自社の事業所のことを知ってもらうには、直接会ってご説明するというよりも、紙の説明資料やQ&A集、ホームページなど何らかの媒体で間接的に伝えるということが圧倒的に多くなります。
ここで、施設の強みが何が、他のデイサービスと何が違うのかということを分かりやすく簡潔に表現する必要が出てきます。
ケアマネジャーや看護師さん、介護支援専門員の方々は、何百というデイサービスや介護事業所を見ています。その中で「このデイサービスはちょっと違う」と認識していただき記憶に残るような資料を作らなくてはいけません。
これをマーケティングの用語ではUSP(独自の強み)と言います。自社の強みを、簡潔に言語化して明確にドキュメントに表現する必要があるわけです。
分かりやすい例として、リハビリという専門に特化したデイサービスがあります。病院やケアマネから「リハビリ目的」で紹介されやすいし、科学的介護(LIFE)との親和性が高く、加算も取りやすいというメリットもあります。
面白いところでは男性専門という形で利用者を限定しているところがあります。デイサービスは、どうしても女性が多くなりがちで、男性が楽しめるサービスがありません。ここに着目し、元気な高齢男性向けに「仕事感のある活動」を提供するデイサービスもあります。「麻雀・将棋・DIY・畑仕事・ボランティア活動」など男性が興味を持てそうな活動に絞ることで、参加率を向上させています。参加する男性側に“介護されてる感”が少ないため、デイサービス参加を拒否する方が少なくなるという効果があります。
6.集客のために経営層に求められること
このようにただ待っていれば利用者の方が自然にやってくる、という時代は終わっています。選んでもらえるデイサービスにするために、経営層としてはどのようなことに注意するべきでしょうか。
1.体制をつくる
アピールポイントやUSPを考えたり、PR資料作りやホームページの情報更新などの新しい種類の仕事は、ケアという本業に比べれば瑣末な仕事に思えます。が、このような種類の仕事は「事務のついでに」やっておいて、と言える仕事ではありません。考える時間をとらなければ結果はついてきません。
ですので、こういった新しい種類の仕事を、勤務時間内に行う業務として認め、職員の方がサービス残業ではなく勤務時間内に実施できるような体制を整えましょう。
同時に一人に任せきりにするのではなく、チームとしての体制を作りましょう。体制を作り職員にノウハウややり方が身につけば、今後に事業所を拡大発展していくための基礎になります。
2.基本的な数値を把握・共有する
PRや利用者数の増加について、基本的な数値を経営側として把握しましょう。当たり前のことかもしれませんが、こういった地道なことができていない事業所様も多いように思われます。
現在のご利用者数は当然把握しておられると思いますが、ではご利用者様が継続してデイサービスを使う期間を正確に把握しておられますでしょうか。
また新規に利用者を獲得するまでのプロセスで、月あたりの紹介者数や月あたりの見学者数など基本的な利用者獲得に至るまでの数値を把握しておられますでしょうか。
こういった数値は利用者獲得に至る基本的な指標です。これらを前項で述べたチーム内で共有しましょう。チーム内でどうやったら数字を改善できるか、アイデアを出しあえる雰囲気が作れたら、利用者獲得は大きく前進します。
終わりに
デイサービスの事業運営には、ケアマネジャー、地域包括、医療機関、ご利用者様の家族から信頼され、「紹介される力」が必須になります。
そのためには、地域内で素早く連携する対応力は当然のこととして、「なぜ、このデイサービスなのか?」という「選ばれる理由」を磨くことが最も大切です。
ホームページやLINE、SNSなどのオンラインツールを使いこなすというのは、あくまでも「選ばれる機会を増やす」「より早く見つけてもらう」ための手段にすぎません。
ただ、日本人ほぼ全員がスマホを持ち歩く時代には、オンライン上での情報発信の比重は大きくなっていることは確かです。
ホームページを準備するのに簡単なツールやGoogleへの登録方法はこちらでご紹介していますが、ご不明な方はこちらからご連絡ください。