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介護業界のDX 化を阻むもの:介護利用者の家族から見た視点

公開日:2023.01.24
最終更新日:2023.01.25

今日は介護運営トークルーム運営人ウェブです。

介護では人手不足が深刻化、ICT化とDXが待ったなしと言われて久しい状態です。しかし、ICTだのDX だと言われても、そんなことは分かっているというのが管理者様の心中ではないでしょうか。

  • できることならとうの昔にやっている
  • 俺だって忙しい
  • どうやって経営層を説得するんだ

というのが管理者様、リーダークラスの方の本音なのではないでしょうか。

介護ソフト制作会社の方とここ数ヶ月、一緒に勉強する機会があり、介護のICT 化というのがなぜ進まないのかということについて考える機会をいただきました。

介護の DX 化がなぜ進まないのかについては、どなたも同じような指摘をされておられます。

ではそれをどうやって解決すればいいのでしょうか?

現在、家族が介護業界にお世話になってる者として、他の業界ではどうやって問題を解決しているのかということについてお話をさせていただきたいと思います。

他業界からの視点という意味で少しでも参考になれば幸いです。

 

介護業界のDX 化を阻むもの

介護業界のICT化、DX 化を阻んでいるものはズバリ四つあると思いました。
人、金、ルール・法制度、最後にアイデアです。

 

ICT に詳しい人が少ない

これはどの方も指摘されていることです。確かに介護の現場で ICT や IT に詳しい形がとても少ないというのも事実です。

では介護現場のICTで、どのような人が必要なのかと言うと、2種類あると思います。

一つ目は ICT の機器を使いこなせる人、二つ目はシステム導入のプランを考え、導入完了までを行うことができる人。介護業界で足りないのはこの二つ目の導入プランをきちんと考えることができる人です。

ICT機器を使いこなせる人が少ない

一つ目の ICT の機器を使いこなせる人が少ないというのは、介護業界だけの問題ではありません。一般の中小企業の方とお話していますと、 IT やウェブ、システムに詳しい人がいないということはよく話題に上ります。

ではそういった場合どうしているかと言うと、外部の人材に頼ったり、商工会議所のIT専門プログラムや人材育成プログラム等、何某かのトレーニングのプログラムを利用しています。内部にITに詳しい方が居なかったとしても、外部の力を借りてなんとか切り抜けていす。

また Excel やWordの使い方等は、社内に誰か詳しい人がいるので、わからなければなんとか社内で教えてもらうことはできるわけです。残念ながら、こういった社内で教え合うという文化が、介護業界の場合、事業所によってかなり差があるような気がします。

日時が合わない等の問題もあるのでしょうが、介護業界の方が、商工会議所のITトレーニングや人材育成プログラムを、もっと利用できればと思います。ICTや DX化で困っている方向けのプログラムは、全国の商工会議所でいくつもやっています。

介護業界は、非常に研修に時間をかける業界だと思いますが、介護やケアなどの専門分野に特化しており、なぜか ICT関連等の一般の会社で行うような研修が少ないように思います。

 ICTの導入計画を立てれる人がいない

こちらの方が、課題としては深刻です。一般の企業においてもこの分野は人が足りません。

多くの会社が、仕事の流れを知らないシステム会社の言いなりになって、 過剰に高価なシステム費用を請求されたり、導入したけど使いこなせない、というようなことが実際に起きています。

このような事態を避けるためには、自社で何をどこまでシステム化し、どこまでをシステム化しないで残すのかという業務フローを整理し、要求される仕様を確認し、システム選定して発注するという人材が必要です。 いわゆるプロジェクトマネージャーやSEのような役割を担う方です。

残念ながら介護ソフトメーカーの方でも、其々の事業所の介護の業務フローや帳票の流れについてまで、詳しく分かってる方はいません。 また介護ソフトメーカーやシステム会社の人に任せれば、 システム会社に有利な提案しかしてくれません。

またもう一つ残念なことですが、一つの介護ソフトを入れれば全てカバーできる、というような介護ソフトはありません。「帯に短しタスキに長し」で、どの介護ソフトを入れても、機能の一部がなかったり、 IT化できなかったりすることがあります。

以上のようなことから、ICTやシステムは判らなくとも、介護の業務の流れを理解している方が、何をどこまでシステム化するのかを考え、システム化で業務の流れをどう変えるのかを考えて進めたほうが、介護のICT化は上手く行くと思います。

たとえ失敗したとしても、自社内で失敗の経験が積めるのは、大きな収穫です。

失敗した担当者を攻めず、なぜ失敗したのかの原因を追究して次に活かすことが一番重要です。

 

ICT を導入するお金が無い

介護事業の構造上、利益を大幅に取ることができないので、 IT投資といってもまとまった費用か必要なものは難しくなりがちです。

このような場合補助金ということがあると思いますが、 介護のDX化推進と言うことで、ICT化や介護ロボットの補助金が提供されています。

ところが、この補助金申請の書類作成、これが大きなハードルです。一番の理由とも関係しますが、補助金申請書類を自社で作成できる人材がいないわけです。

かつ、多くの補助金は、最初に導入する事業所が支払いを全て完了してから補助金を受け取る流れになっています。つまり最初に導入費用の資金調達が必要なわけです。

一般の企業でこういった補助金を利用する場合、補助金サポートの専門会社、中小企業診断士、お世話になっている税理士の方等、資金調達を専門にしておられる方がコンサルタントとして入ってくれることが多いです。

しかし彼らも資金調達のアドバイスをするにあたって、無料で動いてくれるわけではありません。何らかのお付き合いをする必要があるわけです。

資金調達に詳しい税理士や会計士等とお付き合いのある事業所の方は、どれくらいおられるのでしょうか。普段からお付き合いしておくことをお勧めします。

ただ、資金調達をお手伝いする側についても課題があって、介護業界について知見を持つ方が少ないのも事実です。税理士や会計士、コンサルタントの方の支援の拡大を期待したいところです。

 

ルール・法制度がわかりにくい

2023年4月に、ケアプラン連携システムが始動する予定です。この施策を進めるため、厚生労働省は、複数の介護ソフトメーカー間でデータのやり取りを円滑にできるように、データの「標準仕様」を定めました。これは画期的なことだと思います。

ただ、これ以外のICT 化や電子化に関するルールが曖昧だったり個別対応だったりすることが非常に多いと感じます。

例えば、介護のケア記録の例をとってみましょう。医療の場合電子カルテの保存年限は5年間と決まっています。では介護のケア記録の場合、保存年限は何年なのでしょうか?

ケア提供に関連する記録書類は、介護保険の運営基準では「完結の日から2 年」とされていますが、現在は各自治体が条例を設置できることになり、保存期間が5 年と長期化されるケースもあります。一方、障害福祉サービスの記録書類の保存は「完結の日から5 年」とされています。なんとなく、

今後は医療分野のルールが適用されてゆく雰囲気なのですが、このあたりも自治体によって異なります。仮にご利用者がサービスを終了したとして、そのデータをいつまで保存しておけば良いのか、その介護記録データを利活用して良いのか、そのための条件は何なのかと言ったことについてはできれば、全国統一で判り易くルール化してもらいたいです。

介護ケア記録について1つの例として挙げましたが、このような地域ごとに異なるというわかりづらいルールが介護業界の場合、非常に多いです。

特に、介護におけるデータ活用を考える上で、個人のバイタルデータを含めた情報をどうやって扱うのかということは避けて通れないと思います。

法制度の問題は、個々の事業者というよりも、国や政府の課題ですが、こういった 介護のQOL を上げるために利活用できるデータはどこまでか、どういった条件でならばそれは活用しても良いのか、ということについてルール化して公開していただきたいです。こういったルールが明確でないと、膨大なデータを蓄積できたとしても、活用できずに終わってしまうでしょう。

 

画期的なアイデアがない

厚生労働省と経済産業省が推進している介護ロボット支援事業のホームページなどを見ていても、介護保険の利用者の家族の立場から見て、これは使ってみたいなと思えるようなロボットは正直ありません。メーカーが撤退している事業さえあります。

一方介護ロボットではありませんが、一般の警備会社はそれなりに、有益な見守りのサービスを提供してくれています。

日本の「介護ロボット」の定義からは外れますが、アメリカの Amazon が提供している Alexa は高齢者やペットなどの見守りに使うことができます。

Amazon は2021年9月に音声アシスタント「Alexa」を搭載した家庭用の見守りロボット「Astro」を発表しています。(日本での発売は未定)

2023年のCES2月では「スマートトイレ」が評判になっています。トイレの尿からデータを自動で集約し、スマホですぐに確認でき、健康管理に役立つというサービスもフランスのメーカーから試作機が発表されました。

スマートトイレという概念自体は新しいものではありません。しかしクラウドと結びついたこういった新しいタイプの新製品がなぜ、高齢化の課題先進国の日本から出てこないのか大変残念です。

介護ロボット支援事業も、従来の福祉用具、介護機器メーカーという枠にとらわれず、全く新しいメーカーや異業種の会社に、もっと門戸を開いても良いのではないでしょうか。

介護の業界以外の方が、介護業界のやり方を見るというのも大事なことで、アイデアが出てこない根本原因はこういったところにあると思います。

新しい発見や素朴な疑問が生まれるのは、全く異なる分野の方との会話からです。介護業界以外の方とのコミュニケーションがもっと活発になればと思います。

 

まとめ

以上介護業界で ICT 化 DX を阻む四つの要因について業界外からの意見を述べさせていただきました。

人の問題は解決に時間がかかるかもしれませんが、究極的にはお金で解決することが可能な問題です。

政府がICT 化を本気で進めたいと思っているのであれば、まず ICT を導入しやすいような補助金の充実に期待したいです。教育訓練などの費用面で、IT化の教育支援プログラム等についても、全面的に補助金を出すべきだと思います。

ただ、資金調達のための努力は事業者の側も今後は、避けて通れない問題です。腕のよい税理士・会計士さんを見つけ、普段からお付き合いをするようにすることが大事になってくると思います。

これに対し、法律やルール、 アイデアというものは、お金をかけたからといって成果が出るものではありません。どうあるべきかという「理想」や「想像力」が必要です。

むしろ介護業界の内外の人も巻き込んで、じっくりした真剣な議論こそが大切なのではないでしょうか。

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