この記事は、何らかのご事情で急に介護が必要になり、介護保険をなるべく早く使いたい方向けにご説明しています。
介護保険料は給料から天引きされていますが、いざ必要になったらどうしたらいいかわからないという方は多いと思います。
- 介護保険のことはよく分からない
- 病院の看護師さんやソーシャルワーカーさんは忙しくて相談に乗ってくれない
- 知り合いにケアマネージャーさんや介護に詳しい人がいない
- 遠くに住む両親の様子が心配
こういったお悩みをお持ちの方は、ご一読いただくと、公的介護保険の枠組みと相談先がわかります。
私は介護の専門資格を持っていませんが、実父の退院をきっかけに介護保険を使い、遠隔介護を6年間続けました。その間、多くの知人・友人に助けられて介護の申請や手続きなどを行いました。
ずいぶん戸惑うことも多かったですが、私の経験がお役に立てば幸いです。
介護保険の枠組み
あらためて、介護保険とは何でしょうか。
介護が必要になった高齢者を社会全体で支える仕組みの公的な社会保険です。
医療保険と同じで、様々な介護サービスを「1~3割の自己負担で利用できる」というものです。
介護サービスの給付とは
では、これだけ介護保険料を払っていて、どんな給付が受けられるのでしょうか?
これも医療保険と同じで、様々な介護サービスを「1~3割の自己負担で利用できる」というものです。
給付とか支給とかいう言葉を使っていますが、全て介護サービスは、目に見えない「サービス」を提供するという形で行われます。現金の払い戻しはありません。
では具体的にどのような介護サービスが提供されるのかについては、実はそれぞれの市区町村で違っています。
介護サービスは全国一律でほぼ同じ、という訳ではありません。
介護保険の加入者と保険者
公的介護保険も保険の一種なので加入者(被保険者)と保険者がいます。
介護保険の場合の加入者は、それぞれの市区町村の在住する40歳以上の方です。では保険者は誰かというと、国ではなく市区町村です。
ですから介護保険の金額も受けることのできるサービスも市区町村単位で決まります。これは保険者が市区町村だからです。
65歳の誕生日の前に「介護保険被保険者証」が市区町村から送られてきます。
この被保険者証を持っていると、すぐにでも介護サービスを受けられるように錯覚をしてしまいますが実は違います。
介護保険を使うには認定が必須
介護保険というのは使いたいと思ったらすぐに使えるというサービスではありません。
介護サービスを受けるためには「介護認定」を受ける必要があります。
普段慣れ親しんでいる医療保険と介護保険がどう違うかと考えるとわかりやすいです。
公的医療保険と違うのは
- 要介護認定を受ける必要がある
- 年齢制限がある(基本的には65歳以上)
- 介護サービスの選定にケアマネジャーさんの調整が入る
という3つです。
1)の要介護認定というところが最大の医療保険との最大の違いです。
医療保険の場合は、保険証を持っていけば、どの医療機関でも医療保険を使うことができます。
しかし介護サービスを受けようと思った場合、まず保険者である市区町村に介護が本当に必要な状態かということを認定してもらわないと、公的な介護サービスは受けられないルールになっています。
これは全国どの市区町村でも共通です。
ですので、まず介護保険の対象であることを認定をしてもらうため、介護保険の申請をする必要があります。
保険料は給料から自動的に天引きされているのに、介護サービスを利用する時には、申請をしないと使えないわけです。
介護保険の申請から、認定までの流れ及び要介護の介護認定の度合いはどのように決まるのかということについてはこちらの別のブログをご覧ください。
2)の年齢制限という意味では厳密には65歳以下でも介護保険を受けることはできます。
具体的には16の特定疾病が指定されており、この特定疾病で、介護が必要とみなされた場合については65歳以下でも介護保険を使うことができます。
骨折を伴う骨粗鬆症、変形性関節症、閉塞性動脈硬化症等も特定疾病に含まれています。
もちろん医師の診断書は必要になりますが65歳以下だから介護保険が使えないということはありません。
3)ケアマネジャーさんの調整これも医療保険との大きな違いです。医療保険の場合は、どこの医者に行こうが基本的には本人の自由です。
自分と相性が合わない、治療方針が違和感がある等の理由があれば、自分でかかりつけ医を変更することができます。
しかし介護保険で受けるサービスは、ケアマネージャーさんとの調整をしてもらわないとサービスを受けられないことが多いです。
これは市区町村によってかなり違うとは思いますが、自分で直接介護施設やデイサービスに電話をして、その場でサービスを受けるということができる地域はほぼないと思います。
介護認定を最速で取得するには?
介護認定はいつおりる?
介護保険を使うには、認定が必要で、その認定を取得するためには介護保険の申請をせねばならず、認定が下りてからやっと、介護サービスを受けられるわけです。
介護認定が下りるまでの期間ですが、地域にもよりますが、最短で1カ月はかかると言われています。
最近はどの市区町村でも認定と審査に時間がかかっています。
1カ月半や2か月かかる自治体も珍しくありません。
では、介護保険を申請してから認定が下りるまで、介護サービスは使えないのでしょうか?
そんなことはありません。
緊急で介護が必要な人のための措置は、ちゃんと考えられています。
介護認定前に介護サービスを使う
介護保険サービスは、介護認定が下りる前でも、自治体に介護申請をした日に以降であれば利用できます。
自治体に申請すると、暫定的に「介護保険資格者証」が交付されます。
その「介護保険資格者証」を提示してケアマネジャーさんにケアプランを作ってもらえば介護サービスを受けることができます。
ここで問題になるのは費用負担です。
介護認定が下りる前ですから、介護利用者の方の介護度はまだ判りません。
介護保険は、介護度に応じて支給限度額が設定されています。
介護保険の申請をしても、想定よりも低い認定を受けり、最悪自立度が高いとみなされて認定が下りなかったりすることはあり得ます。
その場合は、介護サービスの費用負担が高くなったり、全額自己負担ということになります。
例えば、要介護1と想定して暫定のケアプランを作ったのに、要支援1の結果になってしまった場合、要支援2の上限額まで介護サービスを利用できますが、それを超えた分の費用は全額自己負担になります。
いずれにしても、介護サービスを使うためには、まずは介護保険の申請をして、暫定でケアマネージャーを見つける必要があります。
介護保険の申請の強い味方:地域包括支援センター
では、介護保険の申請は簡単にできるのでしょうか?
書式自体は難しいものではありません。
が、介護保険の認定を確実に通すためのポイントというものがあります。
こういった介護保険の申請等を手伝ってくれるのが、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターとは、高齢者の健康面や生活全般に関する相談を受け付ける地域に密着した総合相談窓口です。
介護が必要になるまで、聞いたこともないという方もおられると思いますが、「〇〇市 地域包括支援センター」で検索すると連絡先電話番号や住所が出てきます。
申請は介護認定取得が目的です。
介護申請しても認定調査で落とされて認定を貰えないと、介護保険を使えず、最悪全額自己負担ということになってしまいます。それでは元も子もありません。
地域包括支援センターでは、介護保険の申請の書き方や注意すべきこと、地域の認定審査の実情を教えてくれます。ケアマネージャーの選定等も相談にのってくれます。
受験対策と同じで、介護認定を通すためにどうするか、という観点で相談にのってもらえます。
自分一人で介護申請の書き方について悩むより、地域包括支援センターに連絡を取り、ご自分の状況やご家族の状態について相談するのが、一番近道です。
介護保険申請は本人以外でもできる
介護が必要な状況ということであれば、介護を必要とする本人が、介護保険申請に出向くのは、無理な場合が多いでしょう。
介護保険の申請は代理の方でもできます。
介護保険のご利用者の家族の方であれば、問題なく代理申請できます。
もし、遠方に住んでいる等で家族が申請できない場合、介護を必要とする方がお住まいの地域包括支援センターの職員が代理で申請することも可能です。
まとめ:地域包括支援センターを賢く活用
まず介護保険が必要だと思った場合は、介護を必要とする本人がお住まいの市区町村の地域包括支援センターに連絡を取り、ご自分の状況やご家族の状態について相談してみてください。
介護保険は、市区町村が行っているものです。認定が下りるまでの期間、ケアマネージャーの選定のやり方等も市区町村毎に異なります。
そして具体的にどのような介護サービスが提供されるのかについても、それぞれの市区町村で違っています。
こういったことも地域包括支援センターでお尋ねください。その地域の実情を一番知っているはずです。
介護認定を早く確実に取りたいと思われた方は、まず地域包括支援センターに電話しましょう。
事前に電話して訪問日時を決めておけば、どの地域包括支援センターも、親切に相談にのってくれると思います。