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通院付き添いはどう頼む?介護する家族が知っておきたいサービス比較と費用の目安

公開日:2025.12.23
最終更新日:2025.12.23

親御さんの通院付き添いは、予想外に時間と労力がかかります。

どうしても会社を休めない、遠隔介護ですぐには動けないなどの理由で、誰かに通院付き添いを依頼したい場合、どこにお願いすればよいのでしょうか。

本記事では、現在提供されている通院付き添いサービスの事業形態や代表的な事業者、依頼する場合のポイントなどをまとめています。

通院付き添いサービスに関わる制度や職種ごとの役割の違いについては、関連記事でご紹介しましたのでそちらも合わせてご覧ください。

目次
  • 通院介助・通院付き添いの受け皿
    • ヘルパー(自費サービス)
    • 看護師(自費サービス)
    • 家政婦(自費サービス)
    • NPO・ボランティア
  • 通院介助サービス提供事業者のタイプ
    • マッチング型
      • マッチング型サービスの主な例
    • 広域展開型
      • 広域展開型サービスの主な例
    • 地域密着型(シルバー人材センターを含む)
    • 料金の目安
    • 通院付き添いを1回お願いした場合の料金
    • 介護保険と自費付き添いを組み合わせて賢く使う
      • 介護保険を使える範囲
      • 介護タクシーで介護保険を使える範囲
      • 介護保険と自費付き添いを組み合わせる場合の注意点
  • 通院付き添い:後悔しない選び方
    • 通院付き添い|選ぶ前にチェックすべき5つのポイント
  • まとめ

通院介助・通院付き添いの受け皿

これまでお話ししてきたように、介護保険内では通院付き添いでできることは限られます。

では具体的に通院付き添いをお願いできる受け皿はどの職種なのでしょうか。

ヘルパー(自費サービス)

介護保険では「院外まで」と厳密に線引きされている通院介助も、自費(介護保険外)サービスなら、できることの幅が大きく広がります。

その理由は、自費サービスが「法律で定められた介護保険の枠」ではなく、事業者と利用者が合意する「契約サービス」として提供されるためです。

国が内容と範囲を厳格に決めている介護保険サービスとは異なり、自費サービスでは事業者が独自にメニューを設定できます。この仕組みの違いが、自由度の差につながっています。

具体的には、介護保険の訪問介護は「生活援助」に相当し、医療機関内での行為は生活援助ではないため保険適用外になります。

院内同行は「訪問介護の提供基準外」で保険算定できないというだけであって、自費契約であれば訪問介護基準に縛られないため可能になります。

同様に、医療法の「役割分担」も適用されません。ヘルパーが自費利用者の院内での移動をサポートすることは、「医療機関の業務代行」には当たりません。

その理由は、院内同行・移動介助は「医療行為」に該当しないからです。

ただし、自費サービスであっても医療行為(注射・点滴など)は看護師資格が必要になります。

このように自費サービスでは、家族が望む多くのサポートが可能になります。

  • 院内付き添い(検査室・会計・薬局まで)
  • 診察室への同席
  • 医師の説明を家族に代わって聞き、わかりやすく伝達する
  • 複数診療科の受診サポート
  • 長時間の見守りや安心ケア
  • タクシー乗降から受診後の帰宅まで一貫した同行

こうした一連の支援は、実際には介護する家族が最も必要性を感じている部分です。

このようなサポートは、介護保険の枠に入らない部分であるため、結果として自費サービスの出番が大きいのが実情です。

看護師(自費サービス)

医療保険の枠外であれば、看護師による通院付き添いは可能です。

前述したように、訪問看護は制度上「居宅(自宅)での看護」に限定されるため、病院付き添い・通院同行は保険対象外です。

そのため「看護師付き添い」を行う事業者は、訪問看護ではなく民間の保険外サービスとして提供されています。

ではヘルパーに依頼するのと比べて、看護師の付き添いはどのようなメリットがあるのでしょうか。

①異変を見抜き、緊急性を判断できる
「なんとなくしんどそう」に見えても、「心不全の悪化」「脳血管障害の初期サイン」「脱水や感染症の始まり」など、背景にあるリスクは大きく異なります。

看護師はバイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・SpO₂など)と症状の組み合わせから、緊急度を判断する訓練を受けています。

ヘルパーも日々の様子から変化に気づく力はありますが、「今すぐ救急要請を検討すべきか」といった判断は、本来の業務範囲を超えます。また、判断を誤ると責任が重くなり過ぎることもあります。

②医師との専門的なコミュニケーション
診察室で必要とされるのは「説明を聞くだけ」ではありません。

  • どの検査結果が問題なのか
  • どの薬にどんなリスクがあるのか
  • 今後、どのような生活上の注意が必要か

といった内容を、現場の情報と結びつけて理解する必要があります。

看護師は医療用語・病態・薬理の基礎知識があるため、医師の説明の意図を汲み取り、わからない点をその場で質問しご家族にわかりやすく伝える役割を果たすことができます。

ヘルパーも一緒に話を聞くことはできますが、「内容の理解」「リスクを踏まえた確認」「必要な質問の見極め」は、どうしても限界があります。

自費サービスによる看護師付き添いは、医療保険の対象にはなりませんが、看護師の医学的知識に基づいたサポートは、

  • 認知症が進んでいる方
  • 急変リスクがある方
  • 医師の説明を正確に把握したいご家族

にとって、大きな安心材料になります。

家政婦(自費サービス)

家政婦(家事支援スタッフ)は、介護保険の枠外で働く「自費サービスの専門職種」です。

そのため、介護保険のような細かなルールや制限がなく、生活全体を柔軟にサポートできます。

通院付き添いに加え、家事・生活支援・見守りなどをまとめてお願いできるため、「生活と通院を総合的に依頼したい」というご家庭に向いています。

家政婦のサービスは「完全に自費契約で提供されるサービス」であり、介護保険の「生活援助」「医療関連行為の禁止」といった縛りがありません。

そのため、次のような介護保険ではできない部分もサポートできます。

  • 院内付き添い
  • 診察室への同席
  • 会計・薬局までの同行
  • 移動や待ち時間の見守り
  • 帰宅後の家事・食事づくりのサポート

介護保険サービスで起こりがちな「そこはできません」という線引きが、家政婦サービスにはありません。

ただし、家政婦は医療資格を持たないため、看護師が行えるような医療行為や医療判断はできません。ここが看護師との明確な違いです。

  • バイタルサインの評価
  • 服薬管理(服薬介助は不可)
  • たん吸引
  • 経管栄養
  • 医療処置のサポート
  • 急変時の専門的判断

医療的リスクがある場合は、家政婦ではなく看護師の付き添いが必要になります。

これに対し、以下のような生活全体を含む支援は、家政婦の強みです。

  • 長時間の見守り(外出同行・半日〜1日の付き添い)
  • 外出準備や受診後の家事サポート
  • 受診日の1日同行(通院→買い物→帰宅支援など)

通院のための準備から、通院付き添い、帰宅後の日常の家事までを一体で依頼できるため、実際の利用者からは使いやすいサービスです。

NPO・ボランティア

NPO団体や地域のボランティアによる通院付き添いは、無料〜低価格で利用できることが最大の特徴です。

経済的に余裕がない場合や、軽度の見守りだけで十分な場合に利用されることが多く、自治体や地域包括支援センターから紹介されることもあります。

ただし、費用が安いぶん、できること・できないことには明確な線引きがあります。

まず、NPOやボランティアによる付き添いは、自立した利用者への「軽度の支援」を中心としています。

  • 受付までの同行
  • 待ち時間の見守り
  • 簡単な院内移動(検査室までの付き添いなど)
  • 通院時の話し相手・心理的サポート
  • 薬局や会計までの同行など

ボランティアは地域に密着して活動していることが多いため、「ちょっとついてきてほしい」「一人では不安だから見守ってほしい」という日常的な困りごとに対応してくれます。

一方で、ボランティアにはできないことも多いです。

医療行為は一切できません。これは当然ながら、医師法・看護師法の観点からも完全に禁止されています。

また、ボランティアは医療知識を持たないため、診察室への同席、医師からの説明の代弁・整理は行えません。

介護を伴う行為もできません。具体的には、「車いす介助」「移乗動作(ベッド→車いすなど)」「トイレ介助」「食事介助」などの身体介助は原則として禁止されています。

そして、大きな課題は担当者を固定できないことです。

ボランティアは善意による活動であるため、「毎回同じ人に来てほしい」「その人に生活状況を理解してもらいたい」という希望には応えられない場合がほとんどです。

担当者が変わると、

  • 普段の体調や生活の様子を共有しにくい
  • 認知症の方は混乱しやすい
  • 医師に伝える生活状況の細かな情報が抜け落ちる

といったデメリットが生じます。低価格・気軽に頼める一方で、継続性や専門性は期待できません。

ボランティアやNPOは地域によって大きな違いがあります。地域差が大きく、定期的に支援を行う団体が存在する地域もあります。このような地域では、通院付き添いを安心して継続的に利用できるでしょう。

以上のように、通院付き添いの受け皿は、職種によってかなり違いがあることがわかります。選び方や費用面も職種によって異なります。

以下の表は、職種ごとの特徴を一覧にまとめたものです。

項目 家政婦 介護ヘルパー 看護師 ボランティア(NPO等)
制度 完全に
自費サービス
介護保険が中心
(自費もあり)
自費付き添いが中心 自治体・NPOの活動、ボランティアベース
院内付き添い ○可能 △保険内では不可(自費なら可能) ○可能
(自費サービス)
△軽度なら可能、専門的介助は不可
診察室への同席 ○可能 △保険内では不可(自費なら可能) ○可能
(自費サービス)
△医療説明の理解は難しい場合が多い
医師説明の聞き取り・家族への報告 ○得意ではないが可能 △保険内では不可(自費なら可能) ◎得意(専門知識で要点を整理) ✕期待できない場合が多い
医療行為 ✕不可 ✕不可 △一部可能(事業所+医師の指示に基づく) ✕不可
生活支援
(家事・買い物など)
◎得意・柔軟に対応 △内容に制限あり(自費なら可能) ✕原則行わない ○簡単な手伝いのみ可能
長時間同行 ◎柔軟で可能 △保険内は時間制約あり、自費は可能 ○可能だが料金は高め △活動範囲による、固定化しづらい
担当者の固定 ○固定しやすい △事業所で調整可能 ○固定しやすい ✕ほぼ不可
(毎回変わる)
特徴 生活支援+通院が柔軟、家庭に密着 法的制限が明確、介助は“医療機関外”まで 医療リスクに強い、安全性が高い 地域密着・低価格、軽度支援の受け皿

通院介助サービス提供事業者のタイプ

通院介助・通院付き添いが、かなりの部分で介護保険外の自費サービスとして提供されていることが分かりました。

ではどのようにして通院付き添いの方を見つければ良いのでしょうか。すでに様々なタイプのサービス提供者がいます。

マッチング型

マッチング型は、利用者と個人のヘルパー・家政婦・看護師を紹介するプラットフォーム型のサービスです。

事業者はスタッフを雇用せず、ヘルパーとして働きたい個人を利用者に紹介する仕組みです。

契約形態は利用者とヘルパーが直接契約する形式の場合もあれば、プラットフォーム側と契約する場合もあります。

費用は比較的抑えられる一方で、サービスの品質が提供者のスキルや相性に左右されやすいという傾向があります。

マッチング型サービスの特徴としては、次の3つが挙げられます。

①料金が比較的抑えられる
自社スタッフを雇用しているわけではないため、広域展開型の事業者と比べて料金が安く設定されることが多いです。

②スタッフの個人差が大きい
マッチング型は条件が合った個人との直接契約のため、介助スキル、対応範囲の広さ、コミュニケーションの丁寧さ、医療・介護への理解度などは、個人によって大きく異なります。

医療リスクの高い方の場合は、担当者の能力差がそのまま安全性に影響するため、依頼する側にも注意が必要です。

よい人に当たれば満足度が高い一方、「別の担当者に変わったら質が変わった」ということも起こり得ます。

③サービスの自由度が高い
家政婦・ヘルパー・看護師など職種もさまざま登録されており、依頼内容に応じて比較的自由にお願いできます。

マッチング型サービスの主な例

クラウドケア ヘルパー・家政婦中心 株式会社クラウドケア 2016年設立
ドコケア 看護師・ヘルパー・家政婦・リハ職など幅広い職種 ケアプロ株式会社 2007年設立
イチロウ 介護士、看護師中心 イチロウ株式会社 2017年設立

ウェブ上で依頼できるため、都市部では利用者が増えています。

しかし担当者の能力によっては専門性や期待したほどではなかったり、スタッフの個人差が大きいのが特徴です。

また、緊急で担当者が来られない場合には、代替派遣が保証されているかどうかはサービスによるので確認が必要です。

したがってマッチングサービスを利用する際には、どのようなスキルの方が適切なのか依頼する側も正確に理解して探さなければなりません。

逆に、毎回同じ担当者に来てほしい、医療リスクがある、医師の説明を正確に聞き取り、家族に伝えてほしいといった場合は、次の章の広域展開型(大手自社スタッフ)や看護師付き添いのような専門性の高いサービスが向いています。

ただし、2025年段階では、サービス提供地域は関東、関西を中心とした都市部に限られています。

広域展開型

広域展開型は、複数の都道府県にわたってサービスを提供している事業形態です。

ヘルパー・介護職・看護師などを企業が直接採用し、教育を行い、サービス品質を一定に保つことを重視する、登録時に看護師資格を条件とするなど、サービス提供者側の「質」を重視しているのが特徴です。

マッチング型と異なり、担当者のスキル育成やバックアップ体制が整っているため、「安心して任せたい」というご家族の支持を集めています。

①スタッフの質が安定(職員教育・研修体制がある)
広域展開型の強みは、企業としてスタッフ教育を体系的に行っていることです。接遇やコミュニケーション、安全な移動支援、認知症ケア、緊急時対応などの研修が整っており、一定レベルのサービスが期待できます。

「人によって当たり外れがある」といった心配が少なくなります。

②医療機関とのやり取りがスムーズ
看護師が在籍している事業者も多いため、

  • 病状の情報共有
  • 医師への質問の取りまとめ
  • 急変時の対応

も可能です。

家族が遠方で付き添えない場合でも、診察後に詳しいレポートを送ってくれるサービスも可能となります。

③料金はやや高め
スタッフ教育・運営管理費がかかるため、マッチング型より料金は割高な傾向です。

ただしその分、安定性・安心感・専門性があります。

広域展開型サービスの主な例

わたしの看護師さん 看護師 N.K.Cナーシングコアコーポレーション合同会社 2014年設立
ニチイライフ 看護師・ヘルパー・家政婦・リハ職など幅広い職種 株式会社ニチイ学館 1968年設立

N.K.Cナーシングコアコーポレーション合同会社は、鳥取県米子市で起業、現在は東京、山形、千葉、神奈川、愛知、三重、奈良、大阪、兵庫、広島、愛媛、福岡、長崎など全国に拠点があります。

秋田、埼玉、群馬、福井、静岡、岡山、山口、香川はサービス準備中です。

株式会社ニチイ学館はニチイホールディングスグループの一角として全国にサービスを展開しています。

スタッフの質をある程度は保証して欲しい方や、医療リスクが高く看護師のサポートが必要なケース、「報告・連絡・相談」をしっかりしてほしいご家庭向けのサービスです。

地域密着型(シルバー人材センターを含む)

地域密着型は、大規模ではないものの、地元で長く活動してきた事業者が、地域の事情に合わせて柔軟に対応してくれるタイプの事業者です。

大手ほどの組織力はありませんが、そのぶん「人柄」「安心感」「地域の特性に詳しい」といった強みがあります。

大きく分けて次の2種類のタイプがあります。

①個人で運営する小規模事業者(有料の自費サービス)
個人運営・家族経営の小規模事業者(プロフェッショナル)は、サービスの柔軟性が高く、実務経験の豊富なスタッフが多いのが特徴です。

何より地域の病院事情にも詳しく、「この病院は検査が長い」など、地域特有の事情を理解しています。

また、柔軟な依頼がしやすい点も強みです。「午後から急に通院が必要になった」「長時間付き添いが必要になった」など、人数が許す範囲で個別のニーズに応じてもらいやすいです。

少人数で運営しているため、「毎回同じ担当者に来てほしい」という希望が叶いやすく、認知症の方にも向いています。

ただし、小規模ゆえに担当者による差がある「当たり外れ」もあります。元看護師が対応できるケースもあれば、生活支援中心のスタッフになることもあります。

口コミによって信頼関係が築かれている事業者が多く、地域では人気が高い傾向があります。

ただし、少人数なので予約が埋まりやすいというデメリットもあります。料金は、地域によって差があります。

②シルバー人材センター(自治体が運営する低価格サービス)
同じ地域密着型でも、シルバー人材センターはまったく性質の異なる組織です。

自治体が運営しており、会員である地域の高齢者(60歳以上)が「軽度の生活支援」をし担います。

シルバー人材センターの特徴は、料金が圧倒的に安いことです。

地域にもよりますが、1時間800円〜1,200円程度など、民間サービスの半額以下のこともあります。

しかし、注意すべき点がいくつかあります。

まず、支援の範囲がかなり限られています。簡単な院内同行や待ち時間の見守り、買い物同行など、あくまで「専門知識がなくてもできる範囲」に限定されています。

車いす介助、移乗介助、食事介助などの介護行為はできません。医療説明の代弁等もできません。

専門的判断を要することやリスクを管理することは期待できません。

また、登録会員のシフト次第で担当者が変わるため、担当者を固定できません。

会員の善意の活動に頼っているので、毎回同じ人に来てほしいという依頼は、通らないことが多いです。認知症の方には不向きです。

料金の目安

通院付き添いは、自費サービスの場合、介護保険のような全国一律の料金設定はありません。事業者ごとに料金体系が異なります。

そして、ほとんどの場合「1時間あたりの料金制」です。

通院付き添いの費用は、概ね、時間単価+交通費+追加料金の3つで決まります。

1)時間単価:スタッフの時給

2)交通費:付き添い当日に発生する交通費

3)追加料金:状況に応じた追加料金

この合計で費用が変動します。

以下は、主要なサービスの1時間あたりの一般的な相場です。

・ヘルパー(自費):2,500円〜5,000円/時
あくまでも概算の目安です。スポット契約なのか継続的な契約かによって時間単価は異なります。

・家政婦:3,000円〜5,000円/時
家事支援+付き添いの複合ニーズに対応のため、やや高めです。
こちらもスポット契約なのか継続的な契約かによって時間単価が異なります。

・看護師:5,000円〜7,500円/時
医療資格による専門性の高さから最も時間単価が高いです。

ただし、この相場は地域の実情によってかなり変わります。詳細は地域でサービスを提供している事業者のホームページなどで確認できます。

料金に含まれない「追加費用」には注意が必要です。次の場合、費用が別途かかることが多いです。

  • 延長料金(15分単位・30分単位)
  • 医療行為が必要な場合(看護師)
  • 夜間・早朝・休日割増(事業者による)

事前に見積もりを出してくれる事業者も増えています。「基本料金のほかに何が加算されるのか」を必ず確認しましょう。長時間利用の割引がある事業者もあります。

通院付き添いを1回お願いした場合の料金

では、具体的に、ヘルパーに自費で平日の通院付き添いを1回お願いした場合の料金はどのくらいになるでしょうか。

通院は「往路移動+待ち時間+診察+復路移動」と時間が読みにくいため、1回あたり3~4時間程度になると仮定します。

付き添いの単価は、おおよそで計算していますが、具体的に内訳部分は事業者によって変わってきます。ここではヘルパー2500円/時、看護師5000円/時で計算してみます。

この場合、

ヘルパー:約1万円(2,500円/時×3時間+往復交通費)

看護師:約1.8万円(5,000円/時×3時間+往復交通費)

これらは介護保険外のサービスのため、原則として税別です。

ご近所のクリニックならもっと短時間で済むこともありますが、大病院の場合は5〜6時間になるケースも珍しくありません。

付き添いを依頼する家族は、病院やクリニックに着いてからの時間だけお願いすればいいと誤解しがちですが、往復の時間や病院に行く前の準備まで含めると、実際にはかなり時間がかかります。

1回付き添いをお願いすると、どれぐらい費用がかかるのか、おおよその目安を把握しておきましょう。

介護保険と自費付き添いを組み合わせて賢く使う

通院付き添いは基本的に自費利用が中心で、1回あたりの費用負担は小さくありません。ただし、介護保険と組み合わせて賢く活用する方法があります。

ただし、介護保険だけですべてをカバーできるわけではないため、「どこまで介護保険で賄えるのか」「どこから自費が必要になるのか」を理解しておく必要があります。

介護保険を使える範囲

介護保険で認められている通院支援は、「通院等乗降介助」というサービスに限定されています。

これは、自宅と医療機関までの往復の移動介助のことです。

具体的には、車への乗り降りのサポート、医療機関の受付まで同行など、病院外中心の移動支援に限られます。

  • 院内介助(診察室同行・会計・検査室など)
  • 医師説明の聞き取り・代弁
  • 薬局への同行

これらは、介護保険ではなく自費サービスとなります。

介護タクシーで介護保険を使える範囲

介護タクシーもよく誤解される点です。

通院付き添いで介護タクシーを使う場合も、乗降介助のみ保険適用となり、タクシーを使った運賃は自費負担です。

つまり、介護タクシーを使っても、移動にかかる費用自体は保険では安くなりません。

介護保険と自費付き添いを組み合わせる場合の注意点

介護保険と自費付き添いは組み合わせて利用できますが、同じ時間帯に複数のサービス(保険+自費)を重複して行うことは介護保険法で禁止されています。ただし、異なる時間帯に、前後を分けて利用すれば組み合わせて使うことができます。

例1:近所のクリニックでの短時間受診

  • 行きの移動:介護タクシー(通院等乗降介助は介護保険)
  • 院内付き添い:地域密着の小規模事業者(自費)
  • 帰りの移動:介護タクシー(通院等乗降介助は介護保険)
  • 帰宅:家政婦が掃除や調理まで対応(自費)

通院と生活支援を一体で依頼できます。

介護度が軽度の場合や通院先によっては、上手にシルバー人材センターを利用するのも一つの方法です。

例2:大病院で術後の定期検診

  • 行きの移動:シルバー人材センター(自費)
  • 院内付き添い:家族で対応
  • 帰りの移動:家族で対応

家族が病院に連れて行く時間がない場合に、病院までの移動付き添いのみをお願いする等、あくまで補助的な使い方ですが、それでも介護する側にとっては時間の節約になります。

このように通院の付き添いはそれなりに費用がかかります。しかし介護保険と組み合わせることによって料金を抑えることも可能です。

問題は、ケアプランを作成するケアマネジャーが、どこまで細かな点に対応してくれるかということです。

利用者本人の状態を踏まえ、どの部分が保険で利用できるか、どこから自費が必要か、どの事業所を使うと安全かまで相談に乗ってくれるケアマネジャーは貴重な存在です。

ただしケアマネージャーにも、当たり外れはあります。地域によってはケアマネージャーさんを選べないこともあります。

そのため介護保険でどこまでが賄えるのか、どこからが自費として必要になるのかを理解しておくことは、介護費用負担と安心のバランスを取る上でとても重要です。

通院付き添い:後悔しない選び方

通院付き添いサービスは、料金だけを見るとつい安さに目が向きがちです。しかし実際には、「本人の安全」や「医療説明の理解度」など、今後の介護や生活に関わる部分を最優先で考えるべきです。

具体的に「本人の安全」とは転倒や事故を避けるということです。通院の途中に転んで骨折したり、足首を捻挫して歩けなくなっては、結果的に介護度が進むリスクも高まります。

①「一人で行かせるのは不安」だけど、重い病気ではない場合
慢性疾患の薬、歯科、耳鼻科など、継続的なご近所の通院の場合は、ヘルパー(自費)や家政婦、地域密着の小規模事業者で十分対応できます。

慢性的な病気の場合は、説明内容が大きく変わることはあまりありません。ご近所の医者の場合は、待合室も狭く、院内移動も長くありません。長時間の観察や医療判断は不要というケースでは、専門性よりも安心して寄り添ってくれる人がいることの方が大切です。

②認知症や不安が強く、目を離すのが怖い場合
このような場合、担当者が固定できるかどうかが重要なポイントになります。

初めての人だと利用者の方が混乱することも想定されます。また担当する方が認知症の方の対応に慣れている必要があります。

こうした状況では、シルバー人材センターでの対応は難しいです。おすすめは、自費ヘルパー、家政婦、地域密着の事業者などで認知症対応に慣れている担当者を固定で依頼するのが理想です。

③院内移動が多い・待ち時間が長い・転倒リスクがある場合
大病院の診察や検査受診など、待ち時間が長く終わる時間が読めない場合、院内をあちこち移動しなくてはならない場合、付き添いの方には利用者を観察して対応する力が必要になります。

  • 広い院内を移動
  • 検査室へ何度も案内
  • 長時間の待機
  • 不意の転倒リスク

こうした状況では、自費ヘルパー・家政婦・大手事業者が向いています。

④医師の説明が複雑・治療の判断が必要な場合
検査結果の説明、治療の方針の説明などがある場合、説明を正確に理解し、家族に伝えられるかという点が問われます。

医師の説明は専門用語が多く、高齢の方が一人で理解するのは非常に困難です。

このような場合は看護師による付き添いが最適です。治療内容を正確にメモして家族に伝えることができ、医師とのコミュニケーションがスムーズです。

⑤病状が不安定・急変のリスクがある場合
心疾患・呼吸器疾患・がん治療中のご利用者が通院する場合、看護師一択です。

「急な息苦しさ」「血圧の変動」といった事態にヘルパー・家政婦では対応する知識もありません。何かあったときに頼れるかを基準に考えると、選択に迷いがなくなります。

このように、通院付き添いを選択するとき、料金より先に考えるべきポイントは、「本人の安全」です。本人の介護度の悪化は、介護する家族側の負担にもつながります。

「安いから」ではなく、その場面で必要な専門性と本人の安全性から考えるのが後悔しない選び方です。

通院付き添い|選ぶ前にチェックすべき5つのポイント

通院付き添いサービスは、料金・職種・事業者の種類が多く、初めて利用するご家族にとってはとても分かりにくいものです。

しかし、次の5つのポイントだけは事前に確認しておきましょう。

①院内付き添いが本当に可能か
もっとも重要な確認事項です。これまで述べてきたように、同じ「付き添いサービス」でも、

  • 自宅から受付まで同行のみ
  • 院内移動OK
  • 診察室同席OK
  • 医師説明の聞き取りOK

など、できる範囲がサービスや事業者ごとに異なります。

「どこまで付き添ってもらえるか」を必ず明確に確認しておきましょう。

また、介護保険と自費サービスを組み合わせて使うことができるかどうかも確認しておくべきポイントです。

②医師の説明を家族向けに整理して伝えてくれるか
家族介護では、「診察の内容を正しく理解する」ことが想像以上に大切です。

特に、

  • 認知症で本人が医師の説明を理解できない、言葉を覚えて帰れない
  • 治療方針が複雑
  • 家族が遠方に住んでいる

というケースでは、説明をメモにまとめたり、後から家族に報告できるかが重要になります。

看護師はこの点で安心ですが、ヘルパーや家政婦は「どこまで説明を整理できるか」が事業所によって差があります。

③追加料金の仕組みが明確か
事業者によって以下のポイントは考え方がかなり異なります。

  • 待ち時間の延長料金
  • 早朝・夜間・休日の割増
  • 交通費
  • スタッフの移動時間

特に時間に対する料金については、いつを起点にして延長料金が発生するのか、移動時間とはいつからいつまでを指すのかという明確な説明が欲しいところです。

一見安く見える料金が、最終的に高額になるケースは珍しくありません。

④担当者は固定できるのか
認知症・不安の強い方・性格的に敏感な方、人付き合いの苦手な方にとっては、いつも同じ担当者が来てくれた方が、安心です。

介護の生活支援でも、慣れた方が対応する方が、うまくいく場合が多いです。担当する方との相性は安全にも直結するため、軽視できません。

担当の方を指名して固定できるのか、その時の条件がどうなのかというのも確認しておきましょう。

⑤急な変更や時間延長に対応できるか
通院付き添いは、前の診察が押して、待ち時間が予想以上に長くなることはよくあります。

状況によっては、検査が増えて、追加の科へ案内されることもあります。

こうした場面で、予定時間を過ぎたという理由で付き添いを打ち切られては、依頼する側としては非常に心もとありません。

このあたりは、事業者の規模・仕組みによって対応力が変わります。柔軟に時間を延長できるかどうかは事前に確認しておきましょう。

これらの5つを確認しておけば、大きな失敗は防げると思います。料金も大切なポイントですが、自分の家族に必要な安心が得られるかどうかが最大の基準です。

まとめ

通院付き添いサービスは、介護保険・自費・看護師・家政婦・シルバー人材センターなど、さまざまな選択肢があり、地域ごとにさまざまな事業者がいます。

それぞれできる範囲も料金も違いますが、最も大切なのは、「家族が不在の時、安心・安全が得られるか」という視点です。

そして、最後に強調したいのは、どのサービスを選んでも、最後に質を決めるのは「人」だということです。

仮に、規模が同程度の事業者A社、B社、C社があったとしても、丁寧に寄り添ってくれる人と出会えれば、その人の属している事業者を選びたくなるものです。

良い人との出会いで、ご家族の負担は軽くなります。丁寧に仕事をする方が、長く定着して働ける事業者が増えてくれることを願っています。

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[参考資料]

 「通院介助とは?保険適用・適用外(自費)の条件や料金を紹介」—エマジェン(2023)

「病院への受診にヘルパーは同行できる?介護保険の通院介助」—いちろうコラム

「通院介助のサービス内容や利用料金について解説」—いちろうコラム

ヘルパーの病院付き添い時の料金は実費?自費サービスの仕組みと介護保険適用の条件を解説

PrivateNurse 料金について

通院付き添い・院内介助