耳が遠いご高齢の方やご自分の親とのコミュニケーションに、イライラしたり困ったりしてはおられませんか。
ご本人もストレスでしょうが、サポートする家族や介護の方、ケアマネージャーさん、公的機関の窓口でのコミュニケーションも同じように、きこえの問題に悩んでいます。
大きな声で話さないと相手には聞こえません。しかし大きな声で話すと周りの人に個人的な話が筒抜けになってしまいます。
そんな折、耳が遠い方とのコミュニケーションを助ける便利なグッズを見つけました。
きっかけは、当サイトに89歳の補聴器を使用している男性から「軟骨伝導集音器」についてのご質問をいただいたことです。
そこで初めて「軟骨伝導集音器」について調べたところ、非常に評判が良いことがわかりました。
ここでは、軟骨伝導集音器と補聴器との違いや利便性、利用上の注意点、個人がどこで購入できるかなどをお伝えしたいと思います。
世界初 軟骨伝導式集音器OtocartiMATE(オトカルティメイト)
耳の遠いご高齢の方と周囲の方とのコミュニケーションを助ける便利ツールです。
ご高齢の方との窓口での会話が楽になり、プライバシーを守ることができます。
軟⾻伝導+高性能集音器+大容量バッテリー
「骨伝導」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
しかし「軟骨伝導」という言葉はまだそれほど馴染みがないのではないでしょうか。
この「軟⾻伝導」のイヤホンに、高性能の集音器を組み合わせ、ご高齢者とのコミュニケーションツールとして活用できるようにしたものが、この軟骨伝導式集音器Otocarti(オトカルティ)です。
専⽤⾼性能チップを搭載し「話し声が⼤きく聞こえる」集⾳器が、軟骨伝導イヤホンとつながっており、耳が遠い方との会話を助けるツールとして使うことができます。
軟骨伝導式集音器Otocarti(オトカルティ)Mate パンフレットより抜粋
使い方はこんなイメージになります。
軟骨伝導式集音器Otocarti(オトカルティ)Mate パンフレットより抜粋
2024年末現在、全国の101の自治体(市役所・区役所など)、28の信用金庫や金融機関、36社の病院・福祉施設・薬局等の様々な受付窓口で既に導入されています。
製品の特徴
1)「骨伝導」に比べて音漏れが格段に少ない
「骨伝導」と比較すると、特に低音域の音漏れは15~20デシベル少なく、周囲に音が漏れる心配がありません。
2)ひと拭きで清潔 ボール型イヤホン
ボール型イヤホンは耳の穴を塞がずに使用できるので、耳がかぶれたりかゆくなったりすることもありません。
また、通常のイヤホンのような穴や凹凸がないため、耳垢が溜まりにくく、お手入れも簡単です。除菌シート等で拭けば、清潔に保つことができ、複数の方で共有して使うことができます。
3)独自のイコライジング技術で声を強調
集音器の多くは、すべての音を増幅させてしまうので、不必要な音まで大きくなります。本製品は雑音を除去する独自技術によって、人の声を大きく聞き取れます。
4)長時間使用可能な大容量バッテリー搭載
約10時間使用可能で、頻繁に充電する必要がありません。専用のバッテリーを併用すれば、最大75時間ご使用いただけます。
5)ハウリング防止機能
ハウリング音(ピーと音)を抑制し、不快感を軽減します。
補聴器と集音器:大きな違い
この製品は、集音器で補聴器ではありません。
では、補聴器と集音器、一体何が違うのでしょうか?
補聴器とは医療機器として認定され、難聴のある方を対象に設計された製品です。
難聴と一口に言っても、いろいろです。高音が聞こえない人もいれば、電話の音が聞き取りにくい方もいます。
補聴器は、個々人の聴力レベルや耳の状態に合わせて調整が可能なハイテク機器で、特定の周波数を増幅することで、余分な音を取り除いたりして、自然なきこえを提供します。補聴器を扱う専門職として、認定補聴器技能者という資格があるぐらいです。
そして調整できる幅や機能が増えるほど、値段が高価になります。高価なものは50万を超えるものもあります。
これに対し、集音器はできることは限られています。小さな音を大きくするためのツールです。
医療機器ではなく、手軽に購入できる家電製品として販売されています。
音全体を増幅するので、個々人に向けた特定の調整はできません。その分価格はお手頃になっています。
軟骨伝導式集音器OtocartiMATE(オトカルティ)は、集音器という家電製品として求めやすい価格でありつつも、専⽤⾼性能チップを搭載して人の声を聞きやすくして、聴こえの問題を抱える方との会話をサポートする便利グッズです。
骨伝導と軟骨伝導との違い
では、もう1つの特徴である「軟⾻伝導」はこれまでの「⾻伝導」と何が異なるのでしょうか?
2004年に奈良県⽴医科⼤学理事⻑・学⻑の細井裕司先⽣が発⾒した「軟⾻伝導」は、これまでに知れ渡っていた空気を震わせて⾳を伝える「気導」と、⾻を震わせて⾳を伝える「⾻導」とは全く別の経路で音を伝えます。地味ですが、日本発の発明です。
「骨伝導」の⼀種であるかのように誤解されがちですが、その聞こえのメカニズムや⾳伝達の性質、特徴は全く異なります。
軟骨伝導式集音器Otocarti(オトカルティ)Mate パンフレットより抜粋
「骨伝導」という仕組みは、直接骨に振動を伝えることで音を伝えます。眼鏡型の製品の場合、耳のうしろの骨に振動を伝えることで音が聞こえる仕組みです。皮膚を介する必要があります。皮膚は水分や脂肪を含み、低音や高音の伝わりが弱くなってしまうため、音質が低下してしまうのです。
これに対し、「軟骨伝導」は、わずかな振動で音を伝えることができるため「骨伝導」に多い音漏れの問題はほとんどありません。
この「軟骨伝導」という新しい技術は、集音器のみならず、補聴器にも採用されて製造・販売されています。
軟骨伝導式集音器OtocartiMATE(オトカルティ)のメーカー
細井裕司先⽣は、2004年に「軟骨伝導」に関わる特許取得後、その特許を様々な提携パートナーに技術許諾して、製品としてさまざまな形で世の中に送り出しています。
このオトカルティは、ティ・アール・エイ株式会社というモバイルバッテリーを作っているメーカーが提携パートナーとなり、製品化されたものです。
この集音器にも、ティ・アール・エイ株式会社独自のバッテリーの技術と独自のイコライジング技術が活かされています。
利用上の注意点
これまで述べてきたように、この軟骨伝導式集音器OtocartiMATE(オトカルティメイト)はあくまでも集音器です。
ご利用対象は、加齢性の軽度または中度の難聴の方を想定しています。
難聴は原因によって、個々人の状態が全く異なります。
内耳(蝸牛)や聴神経に問題がある感音性難聴や、外耳や中耳に問題がある伝音性難聴とでは、必要とされる補聴器も全く異なります。
難聴の種類によっては軟骨伝導式集音器では、きこえの問題が解消しない場合もありますのでご注意ください。
しかし、軽度から中程度の老人性(加齢性)難聴のご高齢の方との会話については、状況が改善される可能性があります。
ご本人も、またその周りの方のイライラも、少しは楽になることが期待できます。
個人で購入するには
このような便利なグッズであれば個人でも使ってみたいという方も多いと思います。
その声に応えて、2023年に、ティ・アール・エイ株式会社は、個人向け製品の販売を開始しました。
家電製品と同じ扱いなので、メーカーのホームページからインターネットで購入することができです。法人用のものと大きく異なる点は、コードの長さと大容量バッテリーの有無です。
メーカー公式ショップはこちらです
ご購入にあたっての注意
これは、集音器であり補聴器ではありません。
医療機器の扱いではなく、通常の健康家電製品と同じ扱いになります。
補聴器専門店や、福祉用具レンタル品のようなお試し利用が原則できません。
デモ機でお試しできるところは?
そうは言っても、購入前に自分の耳に合うかどうかを試してみたいと思うのが人情です
国内で取り扱いのある家電量販店は、正直言って少ないです。
一番身近にありそうな代理店は、全国店舗800店舗があるクオール薬局です。
この店舗の一部にデモ機がおいてあります。
デモ機をおいてあるクオール調剤薬局はこちらこちらです。
その場で販売もしてくれますが、訪問前に一度電話でデモ機を使いたい旨を伝えると、スムーズにお試しできるかと思います。
お試し後に、クオール調剤薬局のホームページから購入することもできます。
通常の家電と同様、箱を開けた場合は返品できません。
難聴の種類や症状によっては問題が解決しない可能性がありますので、できれば店頭でお試ししてからご購入することをお勧めします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
高齢になると誰でも、大なり小なり耳が遠くなります。
しかし目立ちませんが「聞こえ」の問題は高齢者にとって日常の生活の快適さを左右する大きな問題です。
同時に周りの家族や介護される方にとっても、「通じない」ということは大きなストレスになります。
私の家族も感音性難聴でした。通常の補聴器では全く効果がなく、最後は筆談で意思疎通するしかありませんでした。
たとえ全ての難聴の問題を解決することはできないにせよ、このような新しい製品が世に送り出されるのはありがたいことだと思います。
[参考資料]
窓口用軟骨伝導イヤホン ティ・アール・エイ株式会社
補聴器と集音器の違いとは? 補聴器専門店ブルーム