管理者様の事業所運営を支え、
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R5年 BCP義務化:災害時の通信手段の確保について

公開日:2023.02.23
最終更新日:2023.03.18

今日は介護運営トークルーム運営人です。

介護業界で BCP 計画は2021年に義務化されました。 BCP計画とは、Business Continuity Planの略語で、業務の継続計画のことです。 東日本震災コロナこれから来るだろうと予想されている大規模災害などに備えて、政府が計画策定を企業や自治体に急がせています。

ところが、現実は、一般企業でも事業継続計画(BCP)を「策定している」と回答した企業の割合は17.6%。規模別でみると大企業は32.0%、中小企業は14.7%となり、それぞれの規模で少しづつですが、増加傾向にあります。

事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021年)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210604.html

介護業界では、BCP策定は、令和3年度介護報酬改定において義務化されました。 実際の運用までに3年の猶予期間があるということで、2024年から介護事業所においてはBC政策が義務化されます。

義務化されたとはいえ罰則の規定はありません。とはいえ、監査が入った時に事業免許取り消しになるなどのリスクは負います。

しかしどうせ作るのであれば役に立つものを準備していただきたいと思っています。今回は、非常用の通信手段については、具体的な BCP 計画の中であまり触れられていないものと感じましたので、ここで取り上げさせていただきます。

というのも、知人のデイサービス管理者の方のコロナ患者発生時の苦労を思い出したからです。併設されている施設でコロナが発生する度に、その方はご利用者宅に電話連絡をしていました。電話では、相手がすぐにつながらない場合が多いです。電話連絡だけで半日潰れることはざらにあったと言います。

そこで、かつてベンチャーにいた時の例を思い出して、緊急時の連絡はどうあるべきか考えてみました。医療や介護介護事業というのは 社会におけるインフラで、デイサービスが止まれば、その影響で仕事に行けなくなる人も多いです。

少しでも参考になれば幸いです。

 

 

BCP 計画の作り方:一般論

BCP 計画という「文書」を作るための資料は資料ややり方は厚生労働省のホームページで動画で公開されています。ひな形やガイドラインも公表されているので、手間と時間をかければ事業所のメンバーだけでも作成することは可能です。

厚生労働省  介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

ただ、これらは考えるべき項目を列挙してくれているだけで、自分達の事業所がどうあるべきかについては、考えてはくれません。

2020年7月の熊本豪雨では、河川の氾濫で特別養護老人ホームが浸水、孤立。避難の遅れもあって、入所者14人が亡くなりました。このような例を末までもなく、まず自分たちの事業所の立地条件に伴うリスクを考え、ハザードマップを入手しておくことが最も大事な事だと思います。

 

BCP計画:緊急時の連絡手段

台風や水害等の自然災害、コロナ等の伝染病の蔓延で、緊急で事業を継続できなくなる場合、事業所の職員に対する連絡のみならず、ご利用者の家族に対してまず連絡を取らなくてはなりません。

ここでは一般の企業で用いられる4つの手段と、そのメリット・デメリットについて述べます。

1.電話

固定電話、携帯電話等で緊急時に連絡をとる従来型のやり方です。

東日本大震災の時に、最初に試した通信手段は携帯電話、電話が最も多くなっています。

出典:総務省総合通信基盤局, 東日本大震災発生後の通信状況に関するアンケート, p.11.

これに対し、最初につながった連絡手段は、メールが相対的に多くなっています。

出典:総務省総合通信基盤局, 東日本大震災発生後の通信状況に関するアンケート, p.14.

<メリット>
・相手の声を聴くことができるので、確実に安否確認ができる。
・疑問や質問はその場でやりとりできる。

<デメリット>
・事前に職員間でも情報連絡網を作っておく必要がある。職員同士で個人情報の扱いの許可を取る必要がある。職員の異動のたびに連絡票のメンテが必要になる。
・災害時には電話回線が込み合い、つながりにくい。
・ご利用者への連絡は、全て人手で対応しなくてはならず、電話がつながらない場合には膨大な時間がかかる

2.電子メール

東日本大震災の時に、携帯電話、電話の次によく使われた連絡手段です。

震災時には、メールでも回線の混雑があったと推定され、いつもよりも送受信が遅いと感じた人が全体の56%、全くメールがつながらなかった人が17%もいます。

メールによる一斉は、送信システムを使うことが一般的ですが、クラウドサービスであれば利用料も安価で月3千円程で利用できるものもあります。

<メリット>
・一斉送信ができるので、各種の連絡や通知が効率的にできる

<デメリット>
・相手からメールが戻ってくるまで、開封されたのか、本当に伝わっているのかわからない。安否確認に時間がかかる。
・事前に利用者様のメールアドレスを確認する必要がある。個人情報の扱いの許可を取る必要がある。
・事前にメール送信の操作に慣れておく必要がある
・メールアドレスを持っていない人も居る
・メールアドレスを持っていても、メールが多数あって埋もれてしまって開封されないことも多い。
・インターネットにつながらなければ使えない。

3.ショートメッセージ(SMS)

スマホの普及に伴って利用されるようになった連絡手段です。ショートメッセージの開封率は非常に高く、SMSは電話番号だけでメッセージを送信できるため、到達率・開封率とも90%以上と言われています。

SMSによる一斉送信も可能なクラウドサービスもあります。利用料は1通10円程度で利用が可能です。

ショートメッセージは、電話網でテキストを送信するものですが、一般の音声通話が使うトラフィックチャネルとか別の信号線(シグナリングチャネル)を使っているので、災害時にはつながりやすいと言われています。

<メリット>
・一斉送信ができるので、各種の連絡や通知が効率的にできる
・電話番号さえ知っていれば、メッセージのやりとりができる
・到達率、開封率は高い。
・スマホでもガラケーでも利用可能
・利用前にアプリをダウンロードしたり、インストールして設定したりする手間が不要

<デメリット>
・既読マークはつかない。相手からメッセージが戻ってくるまで、開封されたのか、本当に伝わっているのかわからない。安否確認には多少時間がかかる。
・事前に利用者様の電話番号を確認する必要がある。個人情報の扱いの許可を取る必要がある。
・事前に操作に慣れておく必要がある

4.SNS

こちらも、スマホの普及に伴って利用されるようになった連絡手段です。SNSは無料でもいろいろな種類がありますが、BCPという目的を考えると、緊急時のメッセージや画像のやりとりが消えてしまわないような有料のものがお勧めです。ビジネス用のSNSで代表的なものは、チャットワークLINEビジネスがあります。どちらも定額料金で、年間6000円程で利用することができます。

<メリット>
・あらかじめグループを組んでおけば、一斉送信ができるので、各種の連絡や通知が効率的にできる

<デメリット>
・既読マークがつく、つかないはアプリの仕様による。相手から投稿があるまで、本当に伝わっているのかわからないアプリもある。
・スマホをもっていないと利用できない。
・ガラケーでは利用できない
・利用前にアプリをダウンロードしたり、インストールして設定したりする手間が必要
・事前に利用者様や職員のSNSのアカウントを確認し、グループを組む必要がある。
・事前にアプリの使い方に慣れておく必要がある
・インターネットにつながらなければ使えない。

 

通信回線の確保

1から4までのうち、2と4はインターネット回線が必要です。

災害時につながるインターネットの確保のために、00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)は覚えておいて損はないサービスです。

これは、災害時の公衆無線LANサービスで、携帯3キャリアが協力してネットワークを相互に無料開放するものです。

携帯キャリアに関係なく誰でも簡単に使えます。

使い方は、スマートフォンのWi-Fi画面のネットワーク一覧から、00000JAPANを選んで接続するだけ。

事前登録も要らず、パスワードやメールアドレス登録などの認証なしで、すぐにつなぐことができます。利用時間や回数の制限もありません。

00000JAPANが利用できる場所は、主に普段、携帯キャリアのWi-FiやフリーWi-Fiが提供されているアクセスポイントが設置されているところです。事前にどこにいけば00000JAPANが利用できるのか、確認しておきましょう。

パスワードや認証などが必要ない分、セキュリティには十分気をつけなければいけません。
個人情報のやりとりは控える、ネットショッピング等には使わないなどの注意は必要です。

00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)ってなに? ~災害時の公衆無線LANサービス

 

マルチチャネルと事前準備が大切

以上、1)から4まで見ると、どれもメリットとデメリットがあり、絶対つながる連絡手段はないことがわかります。

1つの手段に依存することは危険です。災害時に電話がつながらないこともあります。
では、インターネットは万全かというと、稀にではありますが、SNSやメール等でも、平常時に使えなくなる障害は起きています。

ですので、最初に行うべき連絡手段、次に使うべき連絡手段と複数の方法を持つことが特に大事です。

職員のスマホに対する習熟度合、ご利用者とその家族がどのくらいスマホを持って使いこなしているか、ということを確認した上で連絡手段を決める必要があると思います。

誰でもがすぐに使える、という意味ではショートメッセージが最も手軽な手段だと思われます。また、電話回線とインターネットと併用するという考え方もあると思います。

そして最も大切なことは、1~4いずれにおいても、事前に連絡先情報を最新にまとめておいたり、グループを組んだりして準備しておくことです。

そして、いざという時に、この連絡先情報に、担当者がどこからでもアクセスできるようにしておくことです。東日本大震災時には、政府機関の方が事務所に出社できず、連絡が大幅に遅れたことを思い出しましょう。

 

まとめ

以上介護業界でBCP の策定の中でも通信手段に絞って実際的に大事なポイントに絞ってお話しさせていただきました。

とりあえず完璧は目指さずに形だけ連絡網を作っておけばいいという考え方もあると思います。

でも日本は災害大国で、毎年台風が来たり大雨が降ります。地震はいつやってくるか分かりません。

どうせなら本当に意味のあるBCP 計画と役に立つ連絡網を作っていただきたいと思います。ちなみに昔私が在席していたベンチャーでは、電話での連絡網で、防災訓練では連絡が行き届くまで、滅茶苦茶時間がかかりました。

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