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認知症の金銭管理支援にキャッシュレスという解決策|施設でも家庭でも使える「KAERU」

公開日:2025.03.24
最終更新日:2025.07.25

認知症のご高齢の親御さんを持つご家族にとって、高齢者本人にお金をわたしたり、クレジットカードを預けるのは、正直不安なところです。日本老年医学会の報告によれば、軽度認知障害(MCI)の段階から「お金の管理がうまくできなくなる」兆候が現れることが多く、詐欺や過払い、買い物依存などのトラブルも起きやすくなります。

かといって、無理やりお財布を本人から取り上げると、本人が自立して生活する意欲を失ってしまい外出する機会が減ってしまう恐れがあります。

こうした状況を支えるために、家族が現金や通帳、財布の管理を引き受けることが一般的ですが、これには実務的な負担だけでなく、心理的な葛藤も伴います。特に、本人の理解力が低下している場合には、「なぜお金が自由に使えないのか」といった不満や疑念を招きやすく、家族間でトラブルに発展するケースも見られます。

さらに、家族が金銭の管理全般を担うようになると、親族間の相続や財産に関する意見の対立なども生じやすく、人間関係のこじれにまで発展しかねません。

「成年後見制度」の利用があるものの、申立手続きが煩雑でコストがかかることから、実際に利用が進みにくいのが実情です。

このようなジレンマの解決に向けて、認知症の方とご家族が、お金の管理を楽にできる画期的なサービスができたのでご紹介します。

このサービスは個人で導入することもできますが、複数の方の金銭管理を行う介護施設の職員の方、成年後見人の方も使えます。

認知症の金銭管理支援ツール「KAERU」とは?

KAERU(カエル)とは、認知力低下に悩む高齢者の方、物忘れが気になりはじめた方、軽度認知症を患う人向けのプリペイドカード式決済サービスです。

認知機能に自信がない方でも、キャッシュレスで楽しく買い物に行くことができ、なおかつご家族や支援する方も安心な決済サービスです。

まず、カードを持っていればキャッシュレスでお買い物ができます。小銭を持ち歩く必要がないので、ご利用者ご本人が、「レジで支払いに時間がかかる」「おつりの計算が難しい」という心理的な負担を抱えずに済みます。

このプリペイドカードは、Mastercardのマークがある全国のコンビニやスーパー、ドラッグストアなどのお店で利用できます。

プリペイドカード方式では1日の上限を決めて、毎日自動でチャージされる仕組みになっています。例えば上限金額3,000円に設定して500円使うと、翌日の自動チャージでプリペイドカード残高は3,000円に戻ります。この上限額は自由に変えることができます。

上限額を超えて使うことができないので、詐欺被害や過剰出費などの金銭トラブルを未然に防止できます。

仮にカードを落としたとしても、被害額は1日の利用上限金額で済みます。

家族の方からリモートでチャージをしたり、紛失した場合はカードを止めるという操作もできます。

買い物に出かけるということは、高齢者の方にとって日常の良い運動です。本人はもとより、ご家族や支援する介護職の方のほとんどは、体力維持のために「買い物に出かけてほしい」と考えています。

ご家族の方から、親御さんにお金をわたすときには、全てこのカード経由にすれば、どこで何に使ったかの履歴を見ることができます。

このカードがあれば、本人も釣銭の計算に悩むことから解放され、気楽に買い物に出かけることができ普段通りの生活をすることができます。

離れて暮らすご高齢者の金銭管理に最適

このプリペイドカードは、離れて暮らすご両親、特にその方が軽度の認知症であったりする場合には、金銭管理に大きな安心をもたらしてくれます。

特に、デイサービスの方やヘルパーの方にお買い物の代行などをお願いしている場合に、とても便利です。

一人暮らしの高齢者が、ヘルパーの方に買い物代行をお願いする場合、今はヘルパーさんに現金をお渡しして、金銭出納帳をつけるしかありません。

お釣りがあったら、レシートとともに現金袋に戻してもらうやり方です。ヘルパーさんを信頼してお任せする以外に方法がありませんでした。

しかしプリペイドカードがあれば、このカードをヘルパーさんにお渡しすればよいだけです。

アプリで買い物の履歴も分かりますから、離れて暮らしていても、いつ何を購入しているのかの生活の実態も判ります。

便利なメモ機能アプリ

カードが1枚あればこのキャッシュレスサービスを利用することはできますが、認知機能が低下した方向けに便利なスマホアプリもあります。

軽度認知症の方のお悩みとして、買い物をし忘れたり、同じものを何個も買ってしまったりということはよくあります。

こういったことを防ぐために買い物メモを作りますが、その買い物メモをどのポケットに入れたかわからなくなってしまうということもあります。

こういったお悩みを解決するためにスマホでメモ機能のアプリもあります。

開発メーカーはこのアプリを試作する時に、約150人の認知症当事者の方とご家族、介護や医療の専門職の方々とリアルやオンラインでヒアリングしています。

アプリに慣れた結果、軽度認知障害(MCI)をお持ちの50代の女性は紙のメモは一切使わなくなりました。「買い忘れたものを買い直しに行くことが減った。紙のメモをつくる手間がなくなり、ストレスが減った」というお声もあります。

 

成年後見人向け:複数の利用者の金銭管理にも対応

「KAERU」は家庭だけでなく、地域の社会福祉協議会などが行っている成年後見人向けの機能も備わっています。

成年後見人の方は、金融機関に行かずに送金できるので、お金を手渡しする回数を減らすころができ、より多くの方への支援活動に時間を充てることができるようになります。

「KAERU Biz 権利擁護」は、成年後見人が、複数の利用者の金銭支出を見守りながら、透明性のある管理を実現する支援ツールとして設計されています。

成年後見人等、利用者さまを直接するサポートする立場の「支援者アカウント」と、その支援者をまとめる「管理者アカウント」という権限が分かれており、チームに合わせた使い方ができます。

サポートする立場の方は、利用者さまひとりひとりに合わせて「自動チャージ」や「上限金額」の設定を行って、プリペイドカードをお渡しして利用方法を案内します。

この法人向けサービスは、福島県社会福祉協議会、福岡市社会福祉協議会をはじめ、全国で10を超える社会福祉協議会で既に導入された実績があり、利用者本人の意思を尊重したお金の利用と、支援者による見守りの両立を図っています。

まとめ:高齢者にやさしい金融サービス

いかがでしたでしょうか。この「KAERUカエル)」というサービスを作ったベンチャーは作った会社は2020年設立のベンチャーです。

創業メンバー全員は、これまでのインターネットのフィンテック事業の事業開発や、サービス立ち上げに関わってきたプロの方ですが介護の専門家というわけではありません。

同社は、「超高齢社会における、やさしい金融サービスをつくる」をミッションに掲げ、認知症や障害を持つ方々でも安全にお金を使える仕組みを、現場と連携しながら開発しました。

単なる決済ツールにとどまらず、生活支援・権利擁護・業務効率化という複数の課題を同時に解決するプラットフォームとして、全国の社会福祉法人、行政、地域包括支援センターなどで活用が進んでいます。

今後、認知機能低下の高齢者が増える世の中の課題解決に、実用的で役立つ決済サービスだと思います。

 

[参考資料]

https://kaeru-inc.co.jp/