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認知症患者の徘徊対策:靴等を使ったGPS製品と介護保険

公開日:2025.02.25
最終更新日:2025.02.26

認知症患者の徘徊の探索にGPSを使う方式はだいぶ以前から工夫されてきています。

GPSを靴につける製品というのはずいぶん昔からありましたが、爆発的に普及しているというのをあまり聞きません。

GPS製品で認知症の方の居場所を追跡するには、まずGPSを身に着けてもらう必要があります。

認知症患者の徘徊の探索のために、靴にGPSをどうやって付けるのか、他にGPSを活用した身に着ける製品があるのか、介護保険がつかえるのか等、認知症の徘徊対策としてのGPSの最新製品事情を調べてみました。

靴の中にGPSを埋め込む

一番効果がある認知症対策でGPSをつける場所はやはり靴であると言われています。

どんな人でも家を出る時には、まず靴を履きますし、携帯やキーホルダーのように置き忘れるという心配はありません。

では、靴のどこにGPSを取り付けたら良いのでしょうか。

靴の中にGPSを埋め込む

GPS発信機を靴のかかと部分もしくは中敷きに埋め込めるような靴が売られています。

靴の中敷きをめくると、かかと部分にスペースが空いており、そこにGPS発信機を入れることができるようになっています。

特に靴のかかと部分に埋め込んでしまえば履き心地にも大きな影響はなく、本人はGPSが埋まっているとは気づかないので、通常通りに使用してくれます。

ただこのやり方には一つ大きな問題があります。今履いている靴を改造しようと思うと、一定期間外部の業者に今履いている靴を出さなければならないということです。履きなれた靴というのは、多くの場合古びたものなので、専門の業者に送っても、対応できないと断られる場合もあります。

そこまで面倒な対応をせず、GPS対応している新しい靴を購入するという方法もあります。

しかしその新しい靴をご利用者様本人が気に入って履いてくれるかが問題です。靴というのは足に合っていないとなかなか履いてくれません。

もう一つ、踵部分にGPSを埋め込むタイプのものは、長期間使っているとGPS発信機部分が壊れてしまうことはあります。

gpsを靴の上につける

では、認知症の方が履き慣れた靴にGPSつけるにはどうやれば良いでしょうか。

最近は靴の紐や甲の部分にGPS発信機を取り付けられるタイプのカバーやボックスが出てきています。

靴の甲に結束バンドで2点止めができるBOX状のカバーです。

靴の上の部分に見慣れないものがあるのでご利用者様自身でGPSを外してしまわないか心配ではあります。知り合いのケアマネージャーの方に確認したところ、ご自身で取り外すことなく、靴を普段通り使ってくれたそうです。

もう少し小さくなると、より違和感がなくなって良いと思いますが、実用化にはもう少し時間がかかりそうです。

わざわざ靴の中に埋め込むような仕掛けをしなくても、靴の上にGPSをつけても十分に運用はできます。

ご利用者様本人が違和感を覚えなければ、靴を改造するお金も時間もかからないので、おすすめのやり方だと思います。

ただご利用者様本人がご自分でGPSを外してしまう場合、別の方法を考える必要があります。

認知症患者にGPSを持たせるその他の方法

では認知症の徘徊対策として、靴にGPS発信機をつける以外、どこにつけてもらったら良いのでしょうか。

認知症患者のご家族の方は、携帯を持って出かけてくれたらどんなに楽かと思っておられるかと思います。しかし残念ながら、携帯を置いて出かけてしまう場合が多く、その携帯もすぐに電池が切れて使い物になりません。

実際に身につけてもらわないと意味がないわけで、どこにつけてもらえばよいのでしょうか?

認知症の徘徊対策:GPS付きリストバンドやブレスレット

認知症の方の所在地を正確にGPSで把握するために腕につけるタイプのリストバンドやブレスレットのようなものもたくさん市販されています。

どのような種類のものがあるのか、メリットデメリットを調べてみました。

①AppleのエアタグAirTagをリストバンドで着ける

AppleのエアタグAirTagをリストバンドのような形で腕につけて、所在地確認に使うものです。

エアタグAirTagはサイズが500円玉程度なので、時計のような形で腕につけることができます。

電池の持ちが良いのもメリットで、1年以上バッテリーの充電なしで使い続けることができます。Appleの製品なので、iPhoneユーザーは、すぐに使い始めることができますが、Androidのスマホとは通常は接続できません。

しかし実際に、エアタグを活用した製品は、所在地の確認がリアルタイムでできるかと言うといささか心もとないです。

自分の子供にエアタグを持たせ、広い公園内で子供を追跡して捕まえることができるか実験した方がおられます。

結論から言うと、位置情報の更新が8分後とか6分後にしか更新されないため、子供の位置情報がリアルタイムに分からず、結局公園内の子供に辿り着けなかったそうです。

これはiPhoneとエアタグとの通信方式がBluetoothであることが原因です。

近距離であるならばBluetoothですぐに所在を見つけることができますが、10m以上離れてしまうと、AirTagはGPSの位置情報を送信する機能はないため、身近なiPhone端末に自分の位置情報を送ります。たまたまエアタグの近くにあるiPhoneは位置情報を受け取って、AirTagの代わりに位置情報を、エアタグに紐づいたiPhone端末に送ります。

iPhone側からは自分に紐づいたAirTagの現在位置を取得できない仕様で、AirTag側からの位置情報更新を待たなければならないのです。

このようにリアルタイムに位置情報がわからないので、ご高齢の方で健脚の方を追跡するには時間がかかると思います。

月額の通信費もかからず、Amazonや楽天で数千円で販売されていますが、GPS通信の機能がなく、リアルタイム性がない点は要注意です。

https://shinia.info/archives/gps-bracelet.html#index_id1

②GPS内臓スマートウォッチ

認知症患者の方に、スマートウォッチを使ってもらえなかった最大の理由は充電です。

毎日充電したりアップデートなどということが煩わしく、すぐに放置されて使わなくなってしまったというケースは多いのではないでしょうか。

1回の充電で長く使えるようなスマートウォッチがあります。

GARMINのスマートウォッチは、最大1回の充電で最大16日間稼働します。

GARMINは、米国の企業で日本では一般にはあまり知られていませんが、航空や船舶等、通常の電波が届かないところでも最先端のGPSナビゲーション製品を提供してきた高い信頼性と技術を持つ会社です。

GARMINのスマートウォッチを、iPhoneやAndoroidとペアリングすれば、スマートウォッチの位置をアプリ側から把握することができます。

見守り機能やアプリは無料、しかも一度スマートウォッチを購入したら、月額利用料等は不要なので、継続的に見守り機能をご利用いただけます。

一度の充電で最大約48日間稼働したモデルもあり、頻繁に充電する必要がありません。

スマートウォッチなので、位置情報だけでなく、各種の健康情報も日々データを取ることができます。

GARMINホームページより抜粋

価格帯は2万円台からなので、いささか高額ですが、毎月の通信費用が不要というところは大きな魅力的です。

ただし、オシャレなスマートウォッチを喜んで常に身に着けてくれたら大成功ですが、せっかくプレゼントしても「慣れた時計がいい」と言われたらそれまでです。

認知症の徘徊対策:小型GPS発信機

通信機能を備えた超小型GPS発信機をキーホルダーのような形で持ってもらうという製品もあります。

GPS発信機は自分の位置情報を通信で送信することができるので、ほぼリアルタイムに位置情報を把握することができます。

サイズは手のひらにすっぽり収まる小型サイズです。メーカーによって重さは違いがあります。見守り製品として、大手3キャリアとも、この製品を扱っています。

「どこかなGPS」ホームページより抜粋

小型の発信機は、どの通信キャリアを使うかによりますが、月額通信費用がかかってくるというところがデメリットです。

もう一つのデメリットは、バッテリーの保持期間です。最大2ヶ月稼働するタイプのものもありますが、バッテリーが切れる前に、誰かが充電しないと動きません。

バッテリーが切れそうなタイミングで、見守りをする人に通知をするサービスがあるものもあります。

これも、持ち歩くのを忘れて出かけられてしまっては意味がありませんので、常日頃持ち歩くバッグ、杖などに付けておくか、お守りにして肌身離さずつけておいてくれるようにお願いするか、工夫が必要です。

認知症の徘徊対策:QRコード付きシール

見守りたい方のTシャツや、衣服にQRコードのついたシールを貼る、という方法もあります。

QRコードシールというものは、GPS発信機がシールの中に内蔵されているわけではありません。

通りがかった人にシールのQRコードをスマホで読み取ってもらい、そのスマホで、シールの情報と位置情報を送信してもらうというやり方です。

出展:門真市ホームページ

このQRコードをシールにして洋服に貼ったり、カードにして認知症患者本人に持たせておき、通りがかった誰かが、本人のシールにあるQRコードを読み取ると、本人がいる場所から直接、家族に連絡が届く仕組みです。

捜索届出を出された警察や担当の行政、介護施設などは、届け出を出した家族との中継業務が不要になり、とにかく早く本人を見つけることができます。

QRコードだけなので個人情報はわからないようになっています。行政や介護施設等にとっては、初期登録とQRコードを印刷して貼り付けるだけで、圧倒的に安価に導入できるのもこの仕組みの魅力です。

一方、誰かが徘徊している高齢者を発見してQRコードを読み取るということが前提になっている仕組みです。

せっかく人が通りかかってもQRコードを読んであげなかったら何の意味もありません。普及に向けてより一層の周知が必要です。

また、その場所を誰も通りかからなかったり、人通りが途絶える時間帯の場合、発見が遅れるリスクはあります。

以上、GPSを使った徘徊探索の仕組みについて調べてみました。

このようなGPS発信機は、1回の充電での稼働時間と、リアルタイムに位置情報が把握できるか、というところが大きなポイントだと思います。

しかし、元々今のご高齢の方々はITに疎い方が多いです。一番の問題は、GPS発信機をどうやって持ってもらうかでしょう。

スマートウォッチを受け入れて身近に使いこなしている方であれば問題は解決できるでしょうが、そうではない方の方が多いです。

充電が必要なく、かつ確実に高齢者の居場所を把握できる決定的な製品というのはやはりまだないように思います。

認知症対策のGPS発信機と介護保険

では認知症対応のGPS発信機やGPS内蔵の靴、GPS対応のリストバンドやスマートウォッチなどは介護保険の対象となるのでしょうか。

結論から言えば介護保険対象のものと対象外のものが混在しています。

そしてこの判断は介護保険の保険者である市区町村ごとに異なります。

介護保険適用の福祉用具

介護保険が適用される福祉用具とは、厚生労働省が定めた13品目に決められています。

・車いす・車いす付属品・特殊寝台・特殊寝台付属品・床ずれ防止用具・体位変換器・移動用リフト(つり具の部分を除く)・認知症老人徘徊感知機器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助杖・自動排泄処理装置

この13品目の福祉用具は、2000年4月の制度施行時に定められたもので、細かな修正や改正をされながら現在に至っています。

認知症老人徘徊感知機器とは

GPSは、認知症老人徘徊感知機器に分類されるのかと思いますが、実は入りません。

認知症老人徘徊感知機器とは、「認知症である老人が徘徊し、屋外に出ようとした時又は屋内のある地点を通過した時に、センサーにより感知し、家族、隣人等へ通報する」ものという定義です。

ただし、「一定距離を離れたことをもって、通報するものも許容可能な範囲」ということで、ここをどう解釈するかで、介護保険対象か、そうでないか市区町村ごとに判断されているのが実態です。

特に通信に要する費用の箇所が問題で、通信機能のコストについて、福祉用具としての本来機能に上乗せされる費用部分は利用者の自費であるべきだというのが厚労省の考え方です。

また、緊急通報装置を装備したり、警備会社や支援センター等へ送信機からダイレクトに連絡したりするもの、居場所を探索したり、要介護者のバイタルチェック機能を有しているシステムなど機能が付加されたものは、介護保険対象ではないと確認しています。

2000年に介護保険が始まった当初には、GPS機能がついた発信機やGPS付きスマートウォッチなどが、介護に使われること想定されていなかったわけです。

また一人暮らしの高齢者が増えていることも考慮して、インターネット経由で自宅外からの見守り等についても考慮する必要があるという議論はなされたようですが、2024年12月の段階では継続審議ということになりました。

介護保険者である市区町村ごとに「許容範囲」に該当するかどうか、状況を見て判断をしているで対応が分かれているのが実情です。市区町村によっては、認知症患者の探索のためのGPSについて、補助金を出してくれるところもあります。

まとめ:介護保険でGPS発信機を使うには?

いかがでしたでしょうか。

認知症の徘徊対策でのGPSについては、結局のところ、介護保険者である市区町村の判断に委ねられています。ですので、介護保険を使うには、介護保険申請を通った実績のあるメーカーの製品をしらべるのが近道です。

残念ながら介護保険の対象外と判断される場合もあるので、その場合はコストと安心を考慮して自分で導入するしかありません。

2000年に介護保険ができた当時、認知症の徘徊というのは社会的にこれほど大きな問題ではありませんでした。ガラケーがやっと普及した当時、GPS付きの高齢者の徘徊検知装置が出てくるとは誰も思いませんでした。

しかし四半世紀が経ち、スマホで位置情報を簡単に把握できるようになりました。しかし、厚生労働省は、見守りやGPS機能等は、現場からのニーズがあるものの、介護保険の対象にはしないとしています。

考えてみればおかしな話で、このままでは、介護保険というのは機能が2000年当時のままで単機能に限られた低機能のものにしか使えないということになってしまいます。

世の中は技術次第でかなり便利になるものですし、人手不足の中、介護福祉用具などもこういった高機能の製品が求められています。

例えば、杖などは、大手スーパーのドラッグ売り場でも数千円で売っています。最近は100円均一のショップでも扱い始めました。介護保険をわざわざ使わなくても、気軽に購入できる価格になっています。

こういった製品を介護保険の対象にするのではなく、むしろ導入に費用がかかるけれども機能が充実している製品に対して介護保険対象とするべきではないでしょうか。

こういった介護保険対象の機器についても、法令がいつ変わるかわかりません。引き続き最新の情報をお届けしていきたいと思いますので、ご興味のある方はこちらからメルマガ登録をお願いします。

[参考資料]

GARMIN

見守りGPS端末あんしんウォッチャーHPより抜粋

高齢者の見守りサービス徹底比較

どこかなGPS

安否確認システムここいるネット

https://aishop-kaigo.com/mahounokutsu/

https://mahounokutsu.com/about/comparison/

https://mahounokutsu.com/lp/

https://itsumono-gps.jp/aboutistumo/