自宅に老人ホームのチラシがよく投函されます。
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者住宅
一体何が違うのか、種類が多くてわかりにくいと悩んでおられる方は多いのではないでしょうか。
私も同じ疑問を持っていましたが、介護保険関係で厚生労働省の資料を見た時、やっとその謎が解けたので、こちらでご説明したいと思います。
「老人ホーム」と呼ばれるものでも、3つの種類があります。この記事ではこの3つがどのように違うのか法律・制度・費用面から解説します。
そしてそれ以外の高齢者施設のサービスや費用面がどのように変わってくるのかについても解説します。
高齢の両親を抱えるご家族の方、またご高齢の方ご本人が今後の生活の選択をするための参考になればうれしいです。
- なぜこんなに複雑?老人ホームの種類がわかりづらい理由
- 「老人ホーム」は法律上の定義ではない
- そもそも、制度がバラバラに作られてきた
- 「老人ホーム」以外にもある高齢者の住まい
- 厚労省の図解で整理老人ホームの関係図
- 有料老人ホームとサ高住は、制度がまったく違う
- 「特定施設入居者生活介護」の指定とは?
- 有料老人ホームとサ高住:サービスの違いを徹底比較
- 第3章:老人ホームの費用──種類別に深掘り解説
- 費用に影響する6つの要素とは?
- 高齢者の住まい10種類一覧
- 現実的な選択肢
- 第4章:まとめ──制度と費用を理解して納得の住まい選びを
なぜこんなに複雑?老人ホームの種類がわかりづらい理由
「老人ホーム」は法律上の定義ではない
「老人ホーム」という言葉は、日常生活ではよく使われていますが、法律上の正式な名称ではありません。
行政文書や制度設計の中では、「介護老人福祉施設」「養護老人ホーム」「有料老人ホーム」など、より厳密な区分が存在します。
しかし、これらはすべて「高齢者の住まい」や「介護が必要な方の居住施設」であるという点では共通しています。ですから、どれも「老人ホーム」と一括りにされがちなのですが、実際にはそれぞれ異なる法律に基づき、対象者・提供されるサービス・費用の仕組みも大きく異なっているのです。
そもそも、制度がバラバラに作られてきた
この複雑さの根本的な原因は、それぞれの制度が別々の時代背景や社会課題をきっかけに、個別に作られてきたことにあります。
以下は、現在の高齢者施設の制度を支えている主要な4つの法律と、それぞれの制定時期・目的・関連施設をまとめたものです。
高齢者関連4法の成立順とその背景
法律 | 制定年 | 目的 | 関連施設 |
医療法 | 1948年 (昭和23年) |
医療機関の位置づけや基準整備を規定 | 介護療養型医療施設(2024年3月に廃止済み、現在は新設なし)、介護医療院、介護老人保健施設 |
老人福祉法 | 1963年 (昭和38年) |
高齢者の福祉・生活支援(主に経済的・家庭的困難への措置) | 養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム |
介護保険法 | 1997年 (平成9年) |
介護を「家族の責任」から「社会全体の支え合い」へと転換 | 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、老健、介護医療院、認知症高齢者グループホーム、有料老人ホーム(介護付) |
高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律) | 2001年 (平成13年) |
高齢者のための安全・快適な住まいの供給促進 | サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) |
高齢者施設の制度は、「医療法」「老人福祉法」「介護保険法」「高齢者住まい法」といった複数の法律にまたがって整備されています。これは、介護という分野が医療・福祉・住宅という3つの領域の“狭間”で展開されているからです。
- 戦後すぐ、医療が必要な人向けの施設がまず整備された。
- 経済的困窮者のための福祉施設が続いた。
- 平成9年の介護保険法で家庭内介護の限界から介護保険制度が創設された。
- さらに、バリアフリー住宅供給を目的とした高齢者住まい法が整備された
つまり、介護施設制度は最初から「包括的に設計された」わけではなく、時代ごとに必要な制度を「その都度」積み上げてきた結果、今のような複雑でわかりづらい仕組みが出来上がったのです。
このように制度がバラバラに作られた結果、現在では同じ「老人ホーム」という名前がついていても、中身も費用構造もまったく異なるという状況が生まれました。
これが、「種類が多すぎて何が違うのかよくわからない」という混乱の最大の理由です。
「老人ホーム」以外にもある高齢者の住まい
私たちは高齢者の施設といえば「老人ホーム」と一括りに考えがちですが、実際には「老人ホーム」と名のつく施設のほかにも、さまざまな高齢者向けの住まいがあります。
それぞれの施設は、別々の法律に基づいて設立・運営されており、制度・サービス内容・費用の仕組みも異なります。つまり、「名前は似ていても中身はバラバラ」な状態が、いまの日本の高齢者向け施設の現状です。
高齢者の住まいがどの法律に基づいて運営されているかで分類したのが下表です。
【制度別に整理】法的根拠で分類するとここまで違う
施設名 | 種別(通称) | 主な根拠法令・制度 | 備考 |
介護老人福祉施設 | 特別養護老人ホーム(特養) | 介護保険法、老人福祉法 | 公的介護施設 |
介護老人保健施設 | 老健 | 介護保険法、医療法 | 中間施設(在宅復帰支援) |
介護療養型医療施設 | 療養型病床(旧制度) | 医療法、旧介護保険法 | 2024年3月廃止(介護医療院へ転換) |
介護医療院 | – | 介護保険法、医療法 | 医療+介護の両立型施設 |
認知症高齢者グループホーム | グループホーム | 介護保険法、老人福祉法 | 地域密着型、少人数制 |
養護老人ホーム | – | 老人福祉法 | 措置施設(生活困窮者向け) |
軽費老人ホーム | A、B、C型(ケアハウス) | 老人福祉法、社会福祉法 | 自立〜軽度要介護者向け |
有料老人ホーム(介護付) | 特定施設入居者生活介護 | 介護保険法、老人福祉法 | 包括サービス提供型 |
有料老人ホーム(住宅型) | – | 老人福祉法 | 外部サービス契約型 |
サービス付き高齢者住宅 | サ高住 | 高齢者住まい法 | バリアフリー賃貸+生活支援義務 |
「老人ホーム」は通称です。
高齢者の住まいは、介護・医療・福祉・住宅の各制度にまたがる複雑な仕組みの中で分類されていることがわかります。
実際、「有料老人ホーム」だけでも法律上は以下のように分かれています。
- 介護付有料老人ホーム(介護保険の「特定施設」として指定される)
- 住宅型有料老人ホーム(介護サービスは外部の訪問介護などと契約)
- 軽費老人ホーム(自立高齢者向け、介護が必要になると退去の場合あり)
次章では、それぞれの住まいの特徴と違いを、図解とともに整理していきます。
厚労省の図解で整理する老人ホームの関係図
下図は、厚生労働省が示す「高齢者向け住まいの関係図」です。ここには、私たちが「老人ホーム」と一括りにしてしまいがちな施設が、制度の違いごとにどう分類されるかが示されています。
出典:厚生労働省資料「特定施設入居者生活介護」(令和2年8月)
この図は少し複雑ですが、大切なのは次の2つのポイントです。
- 有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の違い
- 特定施設入居者生活介護の「指定」を受けているかどうか
有料老人ホームとサ高住は、制度がまったく違う
有料老人ホームは、主に「老人福祉法」に基づく届出制の施設です。施設の形は多様で、「介護付き」「住宅型」「軽費」の3タイプに分かれます。
一方、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、国土交通省と厚労省共同所管という形で運営されている「高齢者住まい法」に基づく登録制度の住宅です。
これは本来、賃貸住宅ベースの住まいであり、建物の基準(バリアフリー、一定の広さなど)や、安否確認・生活相談の提供が義務づけられています。
つまり、サ高住は「住まい+生活支援」で、介護サービスは外部と契約する形式です。
有料老人ホームは「住まい+介護+生活支援」を包括的に提供する施設である場合が多いのです。
「特定施設入居者生活介護」の指定とは?
図中で赤く囲まれている「特定施設入居者生活介護」という言葉に注目してください。これは介護保険法に基づく指定で、厚労省・自治体が認定した施設が、包括的に介護サービスを提供できる制度です。
指定を受けた有料老人ホームは「介護付き有料老人ホーム」と呼ばれます。指定を受けていないものは「住宅型」と呼ばれます。
サ高住の中でも指定を受けた一部の住宅は、便宜的に「介護付きサ高住」と呼ばれることがあります。
重要なのは、この「指定」があるかどうかで、介護に関する費用やサービスの受け方がまったく異なるという点です。
図では表現されていない部分ですが、住宅型有料老人ホームと軽費老人ホームは似た立ち位置に見えて、法的な性格もサービスも大きく違います。
項目 | 住宅型有料老人ホーム | 軽費老人ホーム(ケアハウス) |
根拠法 | 老人福祉法(届出制) | 老人福祉法・社会福祉法(許可制) |
目的 | 高齢者の住まい+外部介護利用 | 経済的支援が必要な高齢者向け住宅 |
介護 | 外部の訪問介護サービスと契約 | 外部の訪問介護サービスと契約 |
費用 | 入居一時金+月額利用料(中~高価格帯) | 所得に応じた低額制(低価格帯) |
対象 | 自立~要介護者 | 自立~軽度要介護者 |
運営 | 民間企業が主 | 社会福祉法人が中心 |
住宅型有料老人ホームはサービスの自由度が高く、「高額でも安心・快適な暮らし」を求める方に選ばれます。軽費老人ホームは「経済的に厳しいが、自立生活を続けたい」方向けの福祉施設です。
有料老人ホームとサ高住:サービスの違いを徹底比較
以下の図は、有料老人ホーム(介護付・住宅型)とサ高住をサービス内容や職員配置の観点から比較したものです。
出典:厚生労働省資料「特定施設入居者生活介護」(令和2年8月)
この図から見えてくるポイントは次のとおりです。
- 介護付有料老人ホーム:介護保険のサービスを「施設が一括提供」し、職員配置基準(介護職3に対し入居者1)が明確です。看護職員の配置が義務付けられており、健康管理や簡単な医療的ケアは対応可能です。医療的ケアとは、薬の管理・服薬介助、法律上、喀痰吸引や経管栄養などの医療行為に該当するもので、一定の資格を持った介護職員や看護師が対応可能です。医師は常駐していないので、医師の診察・治療・点滴・緊急対応していません。外部の医療機関(訪問診療等)で対応します。多くの施設は、地域の医療機関と協力医療機関契約を結び、定期的な訪問診療・看取り対応も受けられる体制を整えています。
- 住宅型有料老人ホームとサ高住:職員配置基準は特に定められていません。施設内に常駐の介護職員は不在、または限定的です。介護については「外部サービス利用型」であり、介護保険サービス(訪問系)や自費の生活支援サービスを利用することもできます。職員配置基準がないため、サービスの質・手厚さは事業者や契約内容によって異なります。
サ高住は基本は「住宅」なので、介護保険サービスを利用しない場合、生活支援サービスだけを受けて暮らすことも可能です。
「老人ホームだから介護が受けられる」は思い込みです。実際は、どの制度で運営されていて、どんなサービスが提供されるかによって、暮らしやすさも費用も大きく異なります。
本人の自立度や医療への依存度も、大きく関係します。介護医療院や介護療養型医療施設(移行中)などは、医師・看護師が常駐し、医療と介護が一体で提供されます。
医療依存度が高い場合は、有料老人ホームよりもこれらの施設が適しています。
次章では、高齢者の住まいに関する実際の費用や入居資格について、具体的な金額や条件を元に解説していきます。
第3章:老人ホームの費用──種類別に深掘り解説
「老人ホームは高い」というイメージがありますが、実は施設の種類や提供されるサービスによって、費用には大きな差があります。
費用に影響する6つの要素とは?
1.サービスの範囲(介護・医療・生活支援の有無)
施設が提供するサービス内容によって費用が大きく異なります。
介護付き(包括的なケア)=費用高め
生活支援中心=費用は比較的抑えめ
医療対応が必要な場合、医師・看護師常駐の人件費も費用に反映されます。
2.人員配置(看護師・介護士の常駐有無)
人員配置基準の厳しい施設は、人件費が反映されるため費用が高くなる傾向があります。
特養=介護職員3に対し利用者1
有料老人ホーム(住宅型)=配置基準なし
3.施設の立地・設備グレード
立地(都心/地方)や設備(個室、バリアフリー対応、広さ)により施設コストが異なります。
高級志向の有料老人ホームでは、広さや内装のグレード、レクリエーション施設等が費用を押し上げます。
4.介護保険の適用範囲
どのような介護保険サービスが利用できるかは、施設によって異なります。
施設によっては「生活費」や「家賃部分」は自費扱いになるため、トータルでの支払いに差が生じます。
5.入居一時金の有無
民間の施設の場合、有料老人ホーム(介護付/住宅型)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等では、入居一時金が必要となるケースが多いです。
公的施設、医療系の公的施設は、入居一時金が不要、または制度上定められていない場合が多いです。
6.入居条件・要件
一定以上の介護度でないと入居できない、一定以下の所得でないと入居できない等の制限がある施設もあります。また、費用面が抑えられる公的施設は費用が抑えられるものの、入居までに時間がかかる傾向もあります。
高齢者の住まい10種類一覧
これまで、制度面の違いによって、高齢者の住まいは多様なものがあるとお話してきましたが、入居までの待機時間や費用面で実態について概要をまとめてみました。
1.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
費用の特徴:月額10〜15万円前後。低所得者には負担軽減制度あり。
入居一時金:原則なし。
待機状況:都市部では数百人単位の待機が一般的。半年〜数年待ちも。
医師の紹介:不要。ただし要介護認定3以上が必要。
補足:終の住処としての性格が強く、人気が高いため入居競争率が高い。
2.介護老人保健施設(老健)
費用の特徴:月額10〜15万円。介護保険適用で自己負担は軽め。
入居一時金:なし。
待機状況:比較的入居しやすいが、リハビリ目的の短期利用が多いため空きにくい。
医師の紹介:診療情報提供書が必要(入院に準じた扱い)。
補足:入居期間は原則3ヶ月~半年。長期入居は本来の目的から逸脱。
3.介護療養型医療施設(2024年廃止)
費用の特徴:月額20万円前後。医療費比率が高いため高額になりがち。
入居一時金:なし。
待機状況:新規入居は停止。既存入居者の継続利用が中心。
医師の紹介:必要。入院に近い形での対応。
補足:制度廃止に伴い、介護医療院などへの転換が進んでいる。
4.介護医療院
費用の特徴:月額15〜25万円程度。医療と生活費を合算。
入居一時金:なし。
待機状況:施設数がまだ少なく、医療ニーズが高い方を優先。
医師の紹介:必要。診療情報提供書と主治医の意見書が求められる。
補足:看取り・長期療養・認知症対応などが一体で可能。
5.認知症高齢者グループホーム
費用の特徴:月額13〜20万円程度。家賃・共益費・食費込み。
入居一時金:10〜50万円程度の初期費用がかかる場合あり。
待機状況:市町村単位での運営のため、地域差が大きい。
医師の紹介:原則不要だが、認知症診断書が必要なケースあり。
補足:要支援2以上+市町村内に住民票があることが条件。
6.養護老人ホーム
費用の特徴:原則無料〜低額(措置制度で公費負担)
入居一時金:不要。
待機状況:市町村の福祉課が選定するため、すぐには入れない。
医師の紹介:不要。ただし福祉職による家庭訪問・調査あり。
補足:高齢者の「生活困窮」と「家庭環境」を理由に措置される施設。
7.軽費老人ホーム(ケアハウス)
費用の特徴:月額5〜15万円。低所得者には減額制度あり。
入居一時金:10〜50万円程度が一般的(敷金に相当)。
待機状況:定員制のため空室待ちあり。
医師の紹介:不要。
補足:基本的には自立した高齢者が対象。介護が必要になると住み続けにくい。
8.有料老人ホーム(介護付き)
費用の特徴:月額20〜35万円前後。高級施設では50万円超も。
入居一時金:0〜数千万円(契約形態により異なる)。
待機状況:高額な分、比較的空きはあるが人気施設は満室。
医師の紹介:不要。ただし医療ニーズが高いと入居審査で考慮される。
補足:介護保険の「特定施設入居者生活介護」指定を受けており、介護サービス込み。
9.有料老人ホーム(住宅型)
費用の特徴:月額15〜30万円。外部サービスの利用料が加算されがち。
入居一時金:0〜数百万円程度(契約形態により異なる)。
待機状況:幅広い層を対象にしているため比較的入居しやすい。
医師の紹介:不要。ただし訪問診療医との契約が必要なことも。
補足:介護サービスは外部委託型。その分、自由度と費用変動が大きい。
10.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
費用の特徴:月額10〜25万円(家賃+生活支援費+管理費)
入居一時金:10〜50万円程度の敷金が必要なことが多い。
待機状況:民間が多く比較的入居しやすい。
医師の紹介:不要。ただし介護が必要な場合は外部との連携が必要。
補足:介護付きではないため、外部介護サービスと契約する必要あり。一般の住宅契約の形態に近く、退去条件も比較的柔軟。
上記はあくまでも一般的な内容です。市区町村によって状況はかなり変わります。また有料老人ホーム(介護付)や有料老人ホーム(住宅型)等は、契約内容や運営会社によって入居一時金に相当な差があります。探している地域の情報を確認することをお薦めします。
現実的な選択肢
このように、選択肢が沢山あっても「誰でも入居できる」わけではありません。
実際には、自立度、収入等の制限により、「制度上は存在していても、実際には選べない」施設も少なくありません。
では、現実的な選択肢はどれなのでしょうか。
出典:厚生労働省資料「特定施設入居者生活介護」(令和2年8月)
上図は、どの高齢者施設で利用者が増えているかを示した図です。
認知症対応のグループホーム、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)も利用者数が右肩上がりですが、急激に利用者数を伸ばしているのは、住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅であることがわかります。
現実的選択肢 | 選べる理由 |
特別養護老人ホーム(特養) | 公的で費用が安価/要介護3以上であれば対象/入居待ちは長いが選択肢として検討可 |
認知症高齢者グループホーム | 比較的費用が抑えられている/市町村単位での運営のため、地域差が大きい/認知症診断書が必要なケースあり/要支援2以上+市町村内に住民票があることが条件 |
有料老人ホーム(介護付) | 施設数が多く、サービスが包括的/所得制限なし/入居時一時金あり/民間施設の主力 |
有料老人ホーム(住宅型) | 自由度が高く、比較的入居しやすい/外部サービスを選べる/費用はやや高め |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 入居条件が緩やか/施設数が拡大中/生活支援がある/介護サービスは別契約で柔軟対応 |
「選びたい施設」と「今すぐに入れる施設」は違うという現実を理解する必要があります。費用・サービス内容だけでなく、地域での空き戸数と入居条件の確認が必須です。
入居時期の目安(数ヶ月後、数年後)を逆算し、事前相談や見学を早めに行うことが施設選び成功の鍵です。
第4章:まとめ──制度と費用を理解して納得の住まい選びを
高齢者の住まいの選択肢は何種類もあり、背景には戦後、積み重なった法制度の複雑さがあります。
このため、表面的に「老人ホーム」と名がついていても、提供されるサービス・費用・入居条件は大きく異なり、名称のみで選択すると「こんなはずではなかった」というリスクがあります。
家族が住んでいる近所で「選びたい施設」と「今すぐに入れる施設」は違うということもあります。費用・サービス内容だけでなく、その地域での空き状況と入居条件が関係してくるからです。
複雑な制度を理解した上で、自身や家族の状況に合わせた選択が必要です。特に以下の3つの視点が重要です。
- 必要な支援
医療ケア/介護度/日常生活にどの程度支援が必要か - 入居条件
施設の入居条件(要介護度・地域要件)
地域内の施設供給数・待機状況 - 入居資金
月額費用・入居一時金の有無/介護保険適用範囲と自己負担割合
高齢期の住まい選びは、情報戦です。選択肢を知ることは「備え」です。「その時になって慌てて探す」より「今から情報を整理して備える」ことが安心につながります。
制度を理解することで「自分たちが選べる住まい」の範囲が見えてきます。介護度によっても入居条件が変わってきます。
そして何より大切なことは、介護される本人とそのご家族で、人生の最後をどこで暮らしたいかということを、早めに話し合っておくことです。
今後の準備や検討のための資料として、本記事が役立てば幸いです。
[参考資料]