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なぜ楽にならない?ケアプランデータ連携システムの現状と、導入を阻害する『二重管理』の正体

公開日:2026.01.28
最終更新日:2026.01.28

ケアプランデータ連携システムを導入されていますか?

システム導入で月末月初の処理が劇的に楽になり、生産性向上に役立つとして厚労省が強力に推進しています。

しかし、本当に便利になるものなら、なぜ導入が進んでいないのでしょうか。

本記事では、2025年現在の導入率と、普及が進まない理由を調べてみました。

さらに、システム導入で「劇的に楽になった事業所」と「かえって忙しくなった事業所」を分ける決定的な差を明らかにします。

加算取得のために、導入せざるを得ない状況だからこそ、現場が疲弊しないための戦略的な向き合い方を一緒に考えていきましょう。

1章|ケアプラン連携システムの導入率はわずか10%。なぜ普及しないのか?

「ケアプランデータ連携システム」は、厚生労働省が介護業界における生産性向上の決定打として、2023年(令和5年)4月に開始しました。

20256月からは利用促進を目的とした「フリーパスキャンペーン」を実施し利用料金を無料にしています。

では、20261月の導入状況というと、20261月現在の導入事業所数は19,283事業所です。(出典:福祉·保険·医療の総合情報サイトWAMNET『ケアプランデータ連携システム利用状況』)厚生労働省の統計(令和4年度調査)によれば、全国の介護サービス事業所数は約25万カ所であり、普及率は7.6%程と推定することができます。

普及率は全国で約10%に満たず、極めて厳しい現状です。

 

ケアプラン連携システムの普及が進まない理由:「ネットワーク外部性」

「ネットワーク外部性」とは、一言で言うと「それを使う人が増えれば増えるほど、自分にとっての価値も高まる」という現象のことです。

電話やSNSがわかりやすい例です。世界で自分一人しか電話を持っていないとしたら、その電話には全く価値がありません。しかし、通話できる相手が増えれば増えるほど、電話を持つことに価値が出てきます。

これと同じで、ケアプランデータ連携システムは、自分たちが導入するだけでは価値が生まれず、連携先(ケアマネジャーとサービス事業所)の双方が揃って初めて機能します。

しかし、相手が導入していなければ、結局は従来通りのFAXや手渡しを継続せざるを得ず、「コストを払って導入してもメリットを感じられない」という心理的·経済的障壁が解消されません。

鳥取県米子市が2024年に実施した『ケアプランデータ連携システムの活用状況等に関するアンケート調査』によると、未導入の理由として『周囲の事業所が導入していないため』という回答が目立ちます。

導入済み事業所からも「紙とデジタルの併用でむしろ業務量が増えた」という切実な声が上がっています。

出典:鳥取県米子市実施「ケアプランデータ連携システムの活用状況等に関するアンケート調査」

 

同様の傾向は、熊本県山鹿市や千葉県、武蔵野市などのアンケート結果でも報告されており『相手がいないと成立しない(ネットワーク外部性)』という課題は全国に共通する普及阻害要因であると言えます。

10件に1件しかつながらない電話に料金を払う事業所が少ないのと同様に、地域全体で足並みが揃わない限り、この低い導入率が急激に改善されることは難しいでしょう。

2章|導入しても楽にならない事業所の実態

この章では、ケアプラン連携システムを導入した結果「混乱が増した」現場と、その背景にある技術面·運用面での原因を深掘りします。

1)ケアプラン連携システムを導入しても楽にならない原因

導入しても楽にならない最大の原因は、「システムによるデータの不完全さを人がカバーする手間が、デジタル化によってかえって浮き彫りになってしまったことです。

①事務フローの二重化

一部の事業所だけで導入しても、周囲がアナログ(FAX·紙)のままであれば「面的導入」には至らず、従来の情報のやり取りが残り、結果として事務フローが二重化します。

②異なるバージョンが混在

現在普及しているケアプラン連携システムには「V3·V4」という異なるバージョンが混在しており、仕様のギャップがデータの欠損を招いています。

ソフトベンダーごとに、この「V3·V4」への実装レベルにも差があるため、「データは届くが不完全」という技術的な限界が、現場の負担を増大させています。

ケアプラン連携システムの仕様は毎年変更されています。20257月のV4の仕様変更はかなり大きな変更でした。

ケアプランデータ連携標準仕様更新履歴より抜粋

 

例えば、V4対応ソフトを持つ居宅介護支援事業所から、V3までしか対応していないデイサービスにデータを送る場合、新設された項目が正しく反映されないケースがあります。

厚生労働省の介護情報連携標準仕様 解説書によれば、バージョン間の互換性は各ベンダーの設計に委ねられているため、現場では「データが届いているのに一部が空欄」「計算ロジックが自社ソフトと合わない」といった不整合が発生します。結果として、電話やPDFで内容を再確認する「形式的な連携」に留まってしまうのです。

つまり、連携が形式的な「データの受け渡し」で終わっている事業所は、本当の生産性向上を実感できずにいます。

 

2)生産性向上のはずが「仕事が増える」?現場で起きている矛盾

システムの不完全さを人がカバーしようとした結果、「二重管理」「目視チェック」という二つの矛盾が現場を疲弊させています。

①二重管理

すべての連携先が導入していない以上、デジタルとアナログの2つの事務フローを並走させる必要があり、管理コストはむしろ導入前より増大しています。

②目視チェック

より深刻なのは目視チェックです。システム上のデータを信じ切れないために、紙の原本と突き合わせる作業が発生しています。これは「監査への不安」と「システムへの不信感」が招いた結果です。

「紙との同時進行のため、確認などの業務負担は減らない」といった声が現場のアンケートからも多く見られます。

結論として、システムが「発展途上のインフラ」に留まっているため、現場は監査に備えて「正解」を求めて動かざるを得ず、これが生産性向上の最大の足かせとなっています。

3章|現場で実際に起きている「手修正」の正体

介護現場におけるデータ連携の最大の壁になっているのは「構造データは自動化できても、監査に耐える『意味のある文章』は結局人が埋めている」という現実です。

① 標準仕様は最小限の定義

ケアプラン連携システムの「標準仕様」では、サービス提供情報が『サービス種類コード』としてやりとりされます。システムは数字のコードで情報を運びますが、各事業所のソフトでは独自のサービス名称を使っています。

コードと独自のサービス名称を一致させる設定が不可欠であり、この対応設定が正しく行われないと、正しいデータとして表示されません。例えば「入浴介助1」と「入浴介助(Ⅰ)」のように、同じ内容でも、サービス名称が事業所ごとに微妙に異なるケースは少なくありません。

② 消える「個別指示」

データの規格上、文字数制限やレイアウトの制約があります。ケアマネジャーが意図を持って書いた備考欄の指示も、データ取り込み時に文字が切れたり読みづらくなったりするため、人が入力しなおす手間が生じます。

介護の現場では、備考欄に書き込まれた「個別指示」、さらには監査で厳しくチェックされる「算定要件を満たすための文章補完」は重要な項目です。

これらはシステムが自動で解決してくれないため、最終的には人が画面を見比べて、一文字ずつ修正や追記を行う「手作業」が発生します。

また、目標や課題の文章が取り込み時に途切れたり、改行が崩れたりしていないか、確認して読みやすく整形し直す作業が必要です。

バージョンの違いにより、個別指示そのものが消えてしまう場合もあります、そのような場合、例えば「第2火曜のみ13時に変更」といった備考欄の重要コメントを、目視で確認し手作業で転記する必要があります。

利用者の区分変更や月をまたぐ処理、福祉用具の生活環境コメントなど、算定要件に関わる重要な部分は、人間が確認して文章を補完·再構成せざるを得ません。

ケアプラン連携システムが導入された事業所間とのやりとりにおいても、職員は「どこが変わったか」を探す確認作業に時間を奪われています。先月と変わった箇所だけが目立つようにシステム側で表示してくれない場合、すべてをチェックする手間が生じます。

この「目視と手修正」というアナログな工程が残る限り、真の効率化は遠いと言わざるを得ません。

4章|成功している事業所との差はどこにある?

では、ケアプラン連携システム導入を「負担」ではなく「武器」に変え、残業削減を実現している事業所はどのようなことを行っているのでしょうか。

ケアプラン連携システムの導入に成功している事業所とそうでない事業所の差は、ツールの良し悪しではなく、「ソフトの選定基準」にあります。

「楽になった」と語る事業所は、単に国が推奨するV4対応ソフトを使っているだけではありません。連携先と「同じ介護ソフト」で揃えている事業所です。

どれほど国が『標準仕様(V4)』を整備しても、異なるメーカー間のソフトではデータ変換時に情報の漏れが生じがちです。

しかし、同じメーカーのソフト同士であれば、データ形式が完全に一致します。標準仕様という「共通言語」を介さずとも、いわば「身内だけのフォーマット」でやり取りができるため、備考欄の改行から細かい個別指示まで、100%の再現性で一瞬にしてデータを取り込めます。

例えば、地域でシェアの高い特定のソフトを、居宅介護支援事業所とサービス事業所の双方が利用しているケースであったり、同じ資本系列の居宅介護支援事業所とサービス事業所で同じソフトを使っていたりするケースです。

この場合は、操作一つで自分の画面に映っているものと同じ内容が相手の画面に再現されます。第3章で述べた「目視チェック」や「手修正」がほぼゼロになるため、圧倒的な時短効果を実感できるのです。

データ連携は「相手」がいて初めて成立するものです。成功している事業所は、システムが解決できない「ソフト間の壁」を、同じソフトで揃える=相手に合わせることで克服しているのです。

5章|ケアプラン連携システムに対して、介護事業所はどう向き合えばいいのか

では、大手資本系列に属さない中小規模の介護事業所は、まだ発展途上のインフラであるケアプラン連携システムとは、どう向き合うべきでしょうか。

1)ケアプラン連携は「やるかどうか」ではなく「どう備えるか」の段階

ケアプランデータ連携システムは、もはや「便利なオプション」ではなく、介護報酬改定やLIFE連携、そして2026年の「介護情報基盤」へと続く避けて通れない必須インフラとして認識すべきです。

国は現在、このシステムを独立したツールとしてではなく、マイナ保険証と連動した「全国医療情報プラットフォーム(介護情報基盤)」の入り口として位置づけています。

そして、厚労省は「全国医療情報プラットフォーム(介護情報基盤)」を20264月から全国展開することを目指しています。

ただ、施行時期については、市町村(介護保険者)でのシステム改修が予定どおり進むかどうかが課題であり、慎重に見極めていくとのことですが、遅かれ早かれ実施されるでしょう。

このように、将来的に加算算定要件や監査のデジタル化が進む中で、ケアプランデータ連携システムを未導入のままにしておくことは、『制度から取り残される』リスクを伴います。

今はまだ「未完成なインフラ」ですが、制度の構造上、いずれは導入が前提の業務フローへと強制的にシフトしていくことになります。

「医療デジタルトランスフォーメーション(DX)推進本部」の方針では、ケアプランデータ連携システムで培われた標準仕様がベースとなるでしょう。

つまり、今のうちにケアプランデータ連携システムに慣れておくことは、単なる事務効率化にとどまらず、次期改定での加算取得や、煩雑さを増すLIFE(科学的介護情報システム)への対応をスムーズにするための「先行投資」とも言えます。

現在は「導入するか」を悩む時期ではなく、いつどのような形で導入すれば最も合理的かつ負担が少ないかを検討し、備えるべき段階にあります。

2)【戦略的導入】事業所が今すぐやるべき現実的な4つの処方箋

「加算のために導入はするが、現場を疲弊させるのは避けたい」という目的を達成するためには、経営層による「ソフトの見直し」と「運用ルールの再定義」という4つのアクションが有効だと思います。

現場の努力だけで『二重管理』や『手修正』をなくすのは不可能です。介護ソフトが標準仕様V4に「形だけ対応」しているのか、それとも現場のミスを防ぐ「賢い機能」を備えているのかを見極めるのは、経営層の役割です。

いつまでたっても進まないケアプランデータ連携システムについて、地方自治体のリーダーシップを待つのではなく、身近な事業所と「特定ペア」を組み、合意から始めることが、最も現実的かつ即効性のある解決策と言えます。

① 介護ソフトの「標準仕様対応レベル」の把握

現在使っている介護ソフトが、どこまでケアプラン連携システムに対応しているのかを正確に把握しましょう。V4対応は当然として、「コードとサービス名称の自動変換」や「差分表示での変更箇所の可視化」など、現場作業を軽減する機能の有無をベンダーに確認してください。

②「特定ペア」との完全デジタル化覚書

まずは特定の事業所間でテスト的な導入を目指します。導入にあたってはV4対応を前提とし、同じ介護ソフトを利用している事業所を選びましょう。同じソフトを使う事業所がない場合は、取引量の多い事業所間に絞って導入します。この際、「システム経由を正とし、紙を廃止する」という覚書を交わすのも有効です。

③ 監査に耐える「新・運用フロー」の設計

どこまでをデジタルで完結させ、どこまで原本確認を行うかについて、「デジタル化のルール」を明文化します。

④ ベンダーへの機能要望

特定ペア事業所での導入結果から、「現在の仕様では確認作業にこれだけの時間がかかる」という事実を伝え、差分表示機能などの実装を強く要求しましょう。ツール側が進化しなければ、どれだけ現場が努力しても手動対応は減りません。現場の声を経営層からベンダーへ「改善要求」として届けることが重要です。

ケアプランデータ連携システムは発展途上ではありますが、まずは導入し、明確に運用上の欠陥を把握することが重要です。そのうえで、システムの不備を補うルールを整え、現場の負荷を最小限に抑えて運用することが肝心です。この戦略的な視点こそが、加算を取得しながら現場負担を軽減する道です。

まとめ|過渡期のシステムをどう使いこなすか

現在、ケアプランデータ連携システムを巡る環境は「過渡期」にあります。しかし、社会保険料の負担増大とデジタル化の進展という大きな潮流を考えれば、この流れが止まることはありません。

重要なのは、「導入するかどうか」ではなく、「合理的な形でいつ導入し、監査に耐える形でどう使いこなすか」です。

事務作業のムダを削ぎ落とすことは、単なる効率化ではなく、限られた財源と人材を「真に人を支えるケア」へ集中させるための経営判断に他なりません。

近い将来展開される「全国医療情報プラットフォーム」の稼働を見据えれば、今のうちからクラウド形式のソフトに慣れ、データの標準化に対応しておくことが、将来の負担を最小限に抑える鍵となります。

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[参考資料]

鳥取県米子市実施「ケアプランデータ連携システムの活用状況等に関するアンケート調査」

https://www.city.yonago.lg.jp/secure/57049/keapukekka2.pdf

山鹿市寿支援課「ケアプランデータ連携システム導入状況に関するアンケートの結果について」

https://www.city.yamaga.kumamoto.jp/kiji0032609/3_2609_up_yotgcvjp.pdf

松戸市福祉長寿部「ケアプランデータ連携システムの導入について」

https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/gyoumukaizen/documents/r6-3shiryou6.pdf

武蔵野市健康福祉部「武蔵野市におけるケアプランデータ連携システムの普及促進」

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/20240626_cp_city-musashino.pdf

ケアプランデータ連携標準仕様(令和6年10月版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001316161.pdf