介護×Techを独自に深堀り。施設現場と家族の明日が少しラクになるヒントをお届け
公開日:2026.10.23
最終更新日:2026.10.23

生産性向上推進体制加算を取るには、見守り機器・インカム・介護記録ソフトといった「テクノロジー」の導入が必要です。

このうち加算(Ⅱ)は、指定されたテクノロジーを1種類以上導入し、委員会設置などの体制を整えることで算定できます。全室設置などが求められる加算(Ⅰ)に比べてハードルが低いため、まずは「介護記録ソフト」の導入から始める事業所が多く見られます。

なお、処遇改善加算の上位区分(Ⅰ・Ⅱ)を算定するにあたっても、この生産性向上推進体制加算の取得(または同等の取組)が要件の1つとして組み込まれています。

一方で、「どのソフトなら要件を満たすのかわからない」というお声もよく聞きます。

この記事では、加算取得を目指す管理者・事務長、生産性向上委員会の担当者の方に向けて、次の4点をまとめます。

  • 介護ソフトと介護記録ソフトの違い
  • 加算で認められる介護記録ソフトの要件
  • 加算取得を想定したソフトの選び方
  • よくある失敗

目次

【結論】加算取得に必要な介護記録ソフトの条件

  • 生産性向上推進体制加算の取得は、処遇改善加算の上乗せ区分(Ⅰロ・Ⅱロ)につながる。申請時は誓約で先行算定も可能(※令和9年3月末までの実績が必要)
  • 加算(Ⅱ)は、テクノロジー1種類+委員会の運営+年1回のデータ提出で算定できる
  • 加算で認められる介護記録ソフトは、記録の入力から保存・活用までを一体的に支援するもの。請求が中心の「介護ソフト」だけでは該当しない場合がある
  • 国が認めた「処遇改善加算に対応したソフト」の一覧はない。要件を満たすかどうかは事業所が判断して届け出る

加算取得が処遇改善加算の「上乗せ」につながる

介護職員等処遇改善加算の拡充(出典:厚生労働省)

図のポイントは4つです。

  • 1. 上乗せ区分が新設された
  • 2. これまでの加算Ⅰ・Ⅱは「加算Ⅰイ・Ⅱイ」に名称が変わり、令和8年度の特例要件を満たした事業所が、さらに上乗せされた上位区分「加算Ⅰロ・Ⅱロ」を算定できます。
  • 3. 特例要件はサービス種別等に応じてア〜ウの選択肢があります。
    • ア:ケアプランデータ連携システムの利用(主に訪問・通所系)
    • イ:生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の取得+実績報告(主に施設・居住系)
    • ウ:社会福祉連携推進法人への所属

    施設系・居住系サービスでは、イの「生産性向上推進体制加算の取得」が現実的な選択肢となります。

  • 4. 申請時点では「取得の誓約」で上乗せ区分を先行算定できます。ただし、誓約した事業所は、令和9年3月末までに実際にテクノロジーの導入や委員会の立ち上げを行い、実績報告を提出する必要があります。

加算(Ⅱ)はテクノロジー1種+委員会+データ提出で算定できる

加算(Ⅱ)の要件は、次の3つです。

  • 1. 生産性向上委員会を設け、ガイドラインに沿った業務改善を続けること
  • 2. 見守り機器・インカム・介護記録ソフトのうち、1種類以上を導入すること
  • 3. 年1回、業務時間や有給休暇の取得状況などのデータを国に提出すること

3種類のテクノロジーには、導入負担に差があります。

  • 見守り機器:(Ⅱ)なら1居室からでも可。ただし(Ⅰ)では全居室が対象
  • インカム:同じ時間帯に勤務する全介護職員が使う必要がある
  • 介護記録ソフト:既存の記録業務を置き換える形で導入できる

「最初の1種類」として介護記録ソフトを選ぶのが現実的なのは、ペーパーレス化による時間削減効果を数値化しやすく、委員会でのデータ集計や実績報告にスムーズに繋げられるためです。

加算(Ⅰ)は見守り機器・インカム・介護記録ソフトの3種すべてが必要

上位区分の加算(Ⅰ)(100単位/月)では、次の3つが求められます。

  • 3種類のテクノロジーすべての導入
  • 導入前と比べた成果の確認
  • 職員の役割分担

処遇改善加算の特例要件(施設系等)としては、(Ⅱ)を取れば要件を満たせます。ただ、将来的に生産性向上加算の(Ⅰ)を目指すなら、介護記録ソフトを選ぶ段階で、他の機器(見守りセンサー等)との連携機能やデータ集計機能まで確認しておくと、二重投資を防げます。

生産性向上推進体制加算とは

生産性向上推進体制加算は、2024年度の介護報酬改定で新しくできた加算です。テクノロジーを導入し、職員の負担軽減と業務改善に取り組む事業所を評価します。ここでは、押さえておきたい制度の基本を、表で整理します。

単位数と対象サービス

区分 単位数 金額の目安(1単位≒10円)
加算(Ⅰ) 100単位/月 利用者1人あたり約1,000円/月
加算(Ⅱ) 10単位/月 利用者1人あたり約100円/月

1単位あたりの金額は地域区分によって変わります。(Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定することはできません。

対象サービスは、入所・宿泊を伴うサービスです(介護予防サービスを含む)。訪問介護や通所介護は対象外です。

分類 主なサービス
施設系 介護老人福祉施設(特養)、地域密着型特養、介護老人保健施設、介護医療院
居住系 特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
短期入所系 短期入所生活介護、短期入所療養介護
多機能系 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護

加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の算定要件の違い

加算要件で、(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いを表にまとめました。

データ提出年1回:利用者の満足度、総業務時間・残業時間、有給休暇の取得状況年1回:(Ⅱ)の項目に加え、職員の心理的負担、タイムスタディ調査(5日間)

要件 加算(Ⅱ) 加算(Ⅰ)
生産性向上委員会 3か月に1回以上開催 同左
業務改善の取り組み ガイドラインに沿って継続 同左
テクノロジーの導入 見守り機器・インカム・介護記録ソフトのうち1種類以上 3種類すべて
職員の役割分担 不要 必要(介護助手の活用など)
成果の確認 不要 必要(データで成果が確認できること。業務時間縮小、満足度維持など)

上記から(Ⅱ)は「体制づくり」に対する加算です。委員会を回し、テクノロジーを1つ入れ、データを提出すれば算定できます。

(Ⅰ)は「成果」を問う加算です。導入後3か月以上取り組んだうえで、導入前と比べて次の結果が確認できる必要があります。

  • 業務時間・残業時間が短くなっている
  • 利用者の満足度が下がっていない
  • 有給休暇の取得が減っていない

そのため、(Ⅰ)を目指すなら、導入前のデータを取っておくことが欠かせません。

2026年6月から処遇改善加算(Ⅰロ・Ⅱロ)の特例要件に

冒頭の図のとおり、2026年6月から、処遇改善加算に上乗せ区分の「Ⅰロ・Ⅱロ」が新しくできました。

施設系・居住系・多機能系・短期入所系のサービスでは、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の算定が、この上乗せ区分を取るための特例要件の一つです。

上乗せでどれくらい加算率が上がるのでしょうか。

出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度)」別紙1表1-3・表1-4

たとえば特養なら、加算率は1.3ポイント上がります。月の介護報酬が1,000万円の施設であれば、処遇改善加算が月およそ13万円、年間でおよそ150万円以上増える計算です。これは概算ですが、10単位/月の加算(Ⅱ)を取るだけで、職員の賃金に回せる原資がこれだけ変わります。

申請時は「誓約」で先に算定できる

処遇改善加算の申請時点で生産性向上推進体制加算をまだ算定していなくても、算定を誓約すれば、申請時点から「ロ」区分で算定できます。

その代わり、令和8年度の実績報告書で、生産性向上推進体制加算を算定したことを報告しなければなりません。生産性向上推進体制加算を算定するには、委員会の立ち上げ、テクノロジーの導入、体制届の提出が必要です。令和8年度中(令和9年3月末まで)の算定開始を目安に、早めに準備を始めましょう。

誓約を守れなかった場合は返還のリスクがある

通知では、算定要件を満たさない場合、都道府県などが「既に支給された処遇改善加算の一部若しくは全部を不正受給として返還させること又は処遇改善加算を取り消すことができる」とされています。介護記録ソフトの選定を先延ばしにしないことが、いちばんのリスク対策になります。

「介護ソフト」と「介護記録ソフト」の違い

加算要件を確認する前に、言葉を整理しておきます。「介護ソフト」と「介護記録ソフト」は混同されがちです。メーカーや資料によっても呼び方がまちまちです。厚生労働省の「介護記録ソフト機能調査結果」にも、請求やケアプラン連携の項目が多く並んでいます。

ここを曖昧にしたまま選ぶと、「ソフトは入っているのに、加算の要件を満たしているかわからない」という状態になりかねません。

介護ソフト=請求業務を中心とした業務管理ソフト

一般に「介護ソフト」と呼ばれるのは、介護請求事務で使う業務管理ソフトです。主な機能は次のとおりです。

  • 国保連への介護報酬請求(レセプト作成・伝送)
  • 利用者台帳・契約情報の管理
  • サービス提供実績の管理
  • ケアプランや提供票のやりとり

使うのは主に事務員や管理者です。記録機能を備えた製品もありますが、オプションだったり、簡易的なものだったりと、製品によって差が大きいです。

介護記録ソフト=日々のケア記録の入力・共有・活用に特化

「介護記録ソフト」は、現場の介護職員が日々のケアを記録するためのソフトです。

  • バイタル、食事、水分、排泄、入浴などのケア記録
  • 申し送りや職員間の情報共有
  • 記録データの集計・グラフ化

スマホやタブレットを使い、ケアの合間にその場で入力するのが基本です。製品の形は、大きく3つに分かれます。

  • 単体の記録専用ソフト
  • 介護ソフトの一部としての記録モジュール
  • 請求と記録が一体になった製品

ケアプランデータ連携・介護情報基盤との連携は「介護ソフト」の役割

最近、製品紹介で「ケアプランデータ連携対応」「介護情報基盤対応」という言葉をよく目にします。どちらも、事業所と事業所の間、あるいは事業所と自治体の間で情報をやりとりするための仕組みです。主に請求・利用者管理を担う介護ソフト側が対応する領域です。

日々のケア記録をつける介護記録ソフトでも、ケアプランデータ連携に対応している製品もありますが、中心となる役割ではありません。

違いが一目でわかる比較表

生産性向上推進体制加算のテクノロジー要件記録機能がなければ該当しにくい対象となる

比較項目 介護ソフト 介護記録ソフト
主な目的 請求・事務管理 ケア記録の入力・共有・活用
主な利用者 事務員・管理者 現場の介護職員
主な端末 事務所のパソコン スマホ・タブレット
国保連請求 対応 非対応(介護ソフトと連携する製品が多い)
ケアプランデータ連携・介護情報基盤 対応する領域 直接は関係しない(一部対応製品あり)

国も、記録と請求がつながっていることを重視しています。処遇改善加算の職場環境等要件には、取り組みの一つとして「介護ソフト(記録、情報共有、請求業務への転記が不要なもの。)」の導入が掲げられています。

記録ソフトを選ぶときは、今使っている介護ソフトに転記なしでデータを渡せるかを必ず確認しましょう。

介護事業の種類によって記録ソフトに求められる機能は異なる

同じ介護記録ソフトでも、事業の種類が異なれば、必要な機能は変わってきます。

事業の種類 記録の特徴 重視したい機能
施設系(特養・老健・介護医療院) 24時間・多職種で大量の記録が発生する 夜間巡視の記録、見守り機器との連携、多職種での情報共有
居住系(グループホーム・特定施設) 少人数で生活全体を記録する 生活記録のテンプレート、家族への共有機能
短期入所系(ショートステイ) 入退所が頻繁で、情報の引き継ぎが多い 入退所時の情報引き継ぎ、在宅ケアマネとの連絡
多機能系(小多機・看多機) 通い・訪問・泊まりを同じ利用者が使う サービスをまたいだ一元的な記録

自施設の記録の流れに合わないソフトは、現場に定着しません。

定着しなければ、加算に必要な業務改善の成果も出にくくなります。「加算が取れるか」と「現場で使い続けられるか」をセットで考えることが大切です。

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加算で認められる「介護記録ソフト」の要件

結論から言うと、「この製品なら加算OK」という国のお墨付きはありません。要件を満たしているかどうかは、事業所が自分で判断して、都道府県や市町村に届け出る仕組みです。ですから、厚労省の加算の主旨を正確に理解し、判断の物差しを持っておくことが重要になってきます。

定義:入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するもの

厚生労働省は、加算の対象となる介護記録ソフトを次のように定めています。

介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)

読み取れるポイントは3つです。

  • 1. 入力:現場でその場で記録できる(紙に書いて後からPCに入力し直すのではない)
  • 2. 記録・保存:データとして蓄積され、転記の手間がない
  • 3. 活用:蓄積したデータを集計・共有し、ケアや業務改善に使える

この3つがひと続きでつながっていることが条件です。1つの製品で完結していなくても、複数の機器やソフトの連携で実現できていれば認められます。

逆に言えば、前の章で触れた請求中心の介護ソフトだけでは、この定義に当てはまらない可能性があります。

国が「認定」した介護記録ソフトの一覧は存在しない

厚生労働省や自治体は、「加算の要件を満たす製品リスト」や認定制度を示していません。

製品のパンフレットやWebサイトにある「生産性向上推進体制加算対応」という表示は、メーカーの自己判断による表示です。その表示があるからといって、算定が保証されるわけではありません。

製品の比較サイトやランキングも同じです。「加算対応」をうたう情報は、上の定義に照らして自分の目で確かめる必要があります。

加算は体制届の提出と指定権者の確認で決まる

生産性向上推進体制加算は、届出制の加算です。流れは次のとおりです。

  • 1. 事業所が、要件を満たしていると判断する
  • 2. 指定権者(都道府県や市町村)に体制届を提出する
  • 3. 届出に基づいて算定を開始する

事前の審査で製品が「合格」と認められるわけではありません。ソフトが要件を満たしているかどうかは、届出時の確認や、その後の運営指導で判断されます。もし要件を満たしていないと判断されれば、加算の返還を求められる可能性があります。

要件を満たすか判断するチェックリスト

国の製品一覧がない以上、要件を満たすかどうかは事業所自身で確認するしかありません。厚生労働省が示している2つの基準をもとに、チェックリストを作ってみました。参考の一つとしてお役立てください。

①生産性向上推進体制加算の定義から確認する
(データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するもの)

  • 入力:スマホやタブレットで、ケアの現場からその場で記録を入力できる
  • 記録・保存:入力した記録が電子データとして保存され、紙への転記が不要になっている
  • 活用:保存した記録を集計・検索し、ケアや業務改善に使える
  • 一体性:入力から活用までが、1つのソフト、または連携したソフト・機器の間で途切れずにつながっている

②処遇改善加算の通知の観点から確認する
(記録、情報共有、請求業務への転記が不要なもの)

  • 記録:介護記録をソフト上で作成できる
  • 情報共有:申し送りや記録を、職員間でソフト上で共有できる
  • 請求業務への転記が不要:記録したサービス実績が、手入力し直さなくても請求業務に反映される

③届出と運営指導に備える

  • ソフトの機能がわかる資料(カタログ、機能説明書)を保管している
  • 実際に使っている記録(画面のスクリーンショット、委員会の議事録など)を保管している

②は処遇改善加算の職場環境等要件の項目で、生産性向上推進体制加算の要件そのものではありませんが、国がどんな介護ソフトを「生産性向上につながる」と考えているかがよくわかる基準です。

①と②の両方を満たすソフトなら、自信を持って届け出られます。

判断に迷う場合は、ソフトのメーカーに要件への対応状況を説明した資料を求めましょう。あわせて、体制届を出す前に、指定権者に質問したり事前確認を行ったりすることが大切です。

厚労省「介護記録ソフト機能調査結果」の位置づけ

「どのソフトがどんな機能を持っているか」を知る手がかりとして、厚生労働省が公表している「介護記録ソフト機能調査結果」(令和7年10月20日付)があります。

各メーカーが回答した内容をまとめたもので、約80件の製品について次の内容が一覧になっています。

  • 訪問・通所・居住・ケアマネ・施設といったサービス種別ごとの対応機能
  • 利用者情報が自動で反映される範囲(一気通貫の状況)
  • ケアプランデータ連携への対応状況

ソフトを比較する材料としては便利です。ただし、加算の要件を満たす製品を国が認めたリストではありません。また、調査項目は請求やケアプラン連携に関するものが中心で、介護記録の「活用」まで詳しくわかるものではない点にも注意が必要です。

調査結果の詳しい読み方は、別の記事で解説しています。
→【関連記事】厚労省「介護記録ソフト機能調査結果」の読み方

加算取得を想定した介護記録ソフトの選び方

介護記録ソフトの比較サイトでは、価格や使いやすさが主な比較軸です。もちろんそれも大切ですが、加算の取得が目的なら、見るべきポイントは変わります。まず、自施設が加算(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらを目指すのかによって、重視するポイントが違います。

メーカーの加算取得サポート○◎

選定ポイント (Ⅱ)を取る(処遇改善の上乗せが目的) 将来(Ⅰ)も目指す
誓約の期限内に導入・算定できるか ◎(誓約した場合は必須) ◎(誓約した場合は必須)
データ提出の負担を減らせるか ◎ ◎
タイムスタディ機能 △ ◎
見守り機器・インカムとの連携 △ ◎
現場職員が使い続けられるか ◎ ◎
費用と補助金 ◎ ◎

◎:必ず確認 ○:確認したい △:余裕があれば確認

データ提出(業務時間・残業・有休等)の集計を支援できるか

加算を算定すると、年に1回、国へのデータ提出が必要になります。

  • 加算(Ⅱ):利用者の満足度など、総業務時間・残業時間、有給休暇の取得状況
  • 加算(Ⅰ):上記に加えて、職員の心理的負担、タイムスタディ調査

注意したいのは、業務時間・残業・有給休暇のデータは、記録ソフトではなく勤怠システムや給与ソフトにあることが多い点です。記録ソフトだけで提出データがすべてそろうわけではありません。選定時には、次の2点を確認しましょう。

  • 記録ソフトで集計できる項目と、別のシステムから集める項目の切り分け
  • 勤怠システムとの連携や、提出用データの出力に対応しているか

データ提出は毎年続きます。初年度は手作業で乗り切れても、担当者の負担が続けば委員会の運営そのものが回らなくなります。

加算要件を意識した「タイムスタディ機能」付きの製品も登場

加算(Ⅰ)では、5日間のタイムスタディ調査(職員がどの業務に何分使ったかの調査)が求められます。紙の調査票で行うと、職員の記入も集計も大きな負担になります。

最近は、記録の入力と同時に業務時間を計測し、タイムスタディとして集計できる介護記録ソフトも出てきています。普段の記録をつけるだけで調査データがたまるので、調査のために別の作業をする必要がありません。

(Ⅰ)を目指すなら、有力な比較ポイントです。選ぶときは、次の2点を確かめましょう。

  • 集計結果が国の調査で使う業務の分類に沿っているか
  • そのまま提出用の形式で出力できるか

(Ⅱ)の段階でも、タイムスタディ機能は役に立ちます。導入前後の業務時間の変化をつかめるので、委員会での振り返りに使えます。

見守り機器・インカムと連携できるか

加算(Ⅰ)では、見守り機器・インカム・介護記録ソフトの3種類すべてが必要です。見守り機器は全居室への導入が求められます。

将来(Ⅰ)を目指すなら、記録ソフトを選ぶ段階で連携できる機器を確認しておきましょう。

たとえば、見守り機器のセンサーが感知した離床やバイタルの情報が、記録ソフトに自動で取り込まれるといった連携です。

あとから連携できないとわかると、ソフトの入れ替えという二重投資になりかねません。

現場職員が全員使えるか(入力のしやすさ)

どれほど高機能なソフトでも、現場で使われなければ何の意味もありません。記録が紙とソフトで二重になると、かえって業務時間が増えます。業務改善の成果も出ません。

次の点を、実際に記録をつける職員と一緒に確認しましょう。

  • タップや選択式で、短時間で入力できるか
  • 音声入力に対応しているか
  • よく使う記録をテンプレート化できるか
  • 文字の大きさや画面の見やすさは十分か

無料トライアルやデモ機の貸し出しがあれば、必ず現場で試してから決めることをおすすめします。

費用と補助金の活用

介護記録ソフトの導入費用には、介護テクノロジー導入支援事業(都道府県が実施)などの補助金を使える場合があります。

補助の対象、補助率、申請時期は都道府県ごとに異なります。年度の途中で受付が締め切られることもあるので、早めに確認しましょう。

費用対効果を説明するときは、加算収入だけでなく、処遇改善加算の上乗せ分も含めて試算するのがポイントです。

加算(Ⅱ)の10単位/月だけで計算すると、費用に見合わないように見えます。しかし、前述のとおり、処遇改善加算の上乗せを含めれば、印象は大きく変わります。

メーカーの加算取得サポートの有無

加算の取得には、ソフトの導入だけでなく、委員会の運営、体制届の提出、年1回のデータ提出といった事務作業が伴います。メーカーによってサポート提供の範囲は異なります。

  • 加算要件への対応状況を説明した資料の有無
  • 委員会の立ち上げ・運営の助言
  • 体制届や実績報告の書き方の案内
  • データ提出用の出力機能や操作説明

「加算対応」という表示だけで判断せず、導入後にどこまで支援してもらえるかを契約前に確認しておきましょう。

前章で触れたとおり、国が認めた製品一覧はありません。要件への対応を説明した資料をメーカーから受け取っておくことは、運営指導への備えにもなります。

加算取得でよくある失敗と質問

加算の取得を進める中でつまずきやすいポイントを、よくある質問の形で整理しました。

Q.介護記録ソフトを導入すれば、加算は取れますか?

A.ソフトの導入だけでは取れません。

テクノロジーの導入は、要件の一部にすぎません。加算(Ⅱ)であっても、次の取り組みが必要です。

  • 生産性向上委員会を設け、3か月に1回以上開催する
  • 厚生労働省の「生産性向上ガイドライン」に沿って、業務改善を続ける
  • 年1回、国にデータを提出する

よくあるのが、「ソフトは入れたのに、委員会が形骸化(形だけになっている)している」ケースです。委員会では、記録データを見ながら、どの業務に時間がかかっているか、どこを改善できるかを話し合いましょう。議事録は、運営指導のときに取り組みを示す資料にもなります。

Q.導入前に準備しておくことはありますか?

A.導入前の業務時間などのデータを取っておきましょう。

加算(Ⅰ)では、テクノロジーを導入して3か月以上取り組んだうえで、導入前と比べた成果を示す必要があります。主な比較の項目は、業務時間・残業時間・有給休暇の取得・利用者の満足度などです。

導入前のデータがなければ、比較のしようがありません。「(Ⅰ)を目指すことにしたけれど、比較の起点がない」というのは、取り返しのつかない失敗です。今は(Ⅱ)だけのつもりでも、導入前のデータだけは必ず記録しておくことをおすすめします。

Q.一部の職員しか使っていなくても大丈夫ですか?

A.業務改善の成果が出にくくなるため、全員での定着を目指しましょう。

一部の職員だけがソフトを使い、ほかの職員は紙に記録していると、次のような問題が起きます。

  • 紙からソフトへの転記が発生し、かえって業務時間が増える
  • 記録が紙とソフトに分かれ、情報共有の漏れが起きる

全員に定着させるには、次のような工夫が効果的です。

  • 各ユニットやフロアに「推進リーダー」を置く
  • 導入初期は、メーカーの研修や操作説明会を活用する
  • 委員会で使い方の困りごとを集め、設定やテンプレートを見直す

Q.誓約した期限までに算定できなかったらどうなりますか?

A.処遇改善加算の上乗せ分を返還しなければならない可能性があります。

処遇改善加算の申請で生産性向上推進体制加算の算定を誓約した事業所は、令和8年度の実績報告で、算定したことを報告しなければなりません。

厚生労働省の通知では、算定要件を満たさない場合、都道府県などが「既に支給された処遇改善加算の一部若しくは全部を不正受給として返還させること又は処遇改善加算を取り消すことができる」とされています。

ソフトの導入から体制届の提出までには、数か月かかります。誓約した事業所は、スケジュールに余裕を持って速やかにメーカー選定と準備を始めましょう。

Q.今使っている介護ソフトで要件を満たせますか?

A.製品によって異なるため、確認が必要です。

請求が中心の介護ソフトでも、記録機能が充実していれば要件を満たす場合があります。一方、記録機能が簡易的だったり、オプション契約が必要だったりする製品もあります。

まずは前章「加算で認められる『介護記録ソフト』の要件」のチェックリストで確認してください。判断に迷う場合は、メーカーに要件への対応状況を説明した資料を求め、体制届を出す前に指定権者へ相談するのが確実です。

Q.加算(Ⅱ)の10単位だけでも取る価値はありますか?

A.あります。処遇改善加算の上乗せにつながるからです。

加算(Ⅱ)そのものは、利用者1人あたり月10単位(約100円)です。しかし2026年6月から、生産性向上推進体制加算の算定が、処遇改善加算の上乗せ区分(Ⅰロ・Ⅱロ)の要件の一つになりました。

たとえば特養なら、処遇改善加算の加算率が1.3ポイント上がります。さらに、処遇改善加算の職場環境等要件のうち「生産性向上のための取組」も満たしたものとして扱われます。10単位の加算が、職員の賃金と事務負担の両方に効いてくるのです。

まとめ

生産性向上推進体制加算は、2026年6月から処遇改善加算の上乗せ区分につながる加算になりました。10単位/月の加算(Ⅱ)でも、取得する価値は大きく上がっています。

加算(Ⅱ)は、テクノロジー1種類+委員会+年1回のデータ提出で算定できます。最初のテクノロジー1種類としては、効果を実感しやすく業務改善に直結しやすい「介護記録ソフト」は現実的な選択肢となります。

ただし、加算で認められるのは、記録の入力から保存・活用までを一体的に支援するものです。国が認めた「加算対応ソフトの一覧」は現在のところ公表されていません。自施設で要件を確認し、判断に迷う場合は体制届を提出する前に指定権者へ相談・確認を行いましょう。

加算の取得はゴールではありません。

介護記録ソフトを現場に定着させ、記録データを業務改善に生かすことで、職員の負担軽減とケアの質の向上につなげることが最終目的(ゴール)です。

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