2024年度から介護事業者に義務化されたBCP(事業継続計画)において、地域に点在する利用者の「安否確認」は、最も迅速な対応が求められる初動業務です。
最近は、突発的な自然災害が毎年のように全国各地を襲っています。
しかし、在宅の介護現場の多くは、いまも「個別の電話連絡」というアナログな手作業に頼らざるを得ず、災害時に機能しないリスクを抱えています。
本記事では、こうした課題を解決するため、防災DXを手がける株式会社バカンが開発した、在宅向けSMS安否確認サービス「あんぴケア」をご紹介します。
地域で多くの事業所が導入するほど利用者の回答負担が軽減される「ネットワーク効果」の仕組みについて解説します。また、現在募集中で、無償で全機能を試せる「社会実証メンバー」への参加方法についても詳しくご紹介します。
目次
1. 近年増加する自然災害に見る、安否確認とBCP対策の重要性
近年、日本国内では大地震や大型台風、局地的な豪雨といった突発的な自然災害が頻発・激甚化しています。介護現場において、BCP(事業継続計画)の策定と、迅速な「安否確認」は極めて重要な要素となっています。
自然災害増加がもたらす在宅介護の危機と、BCP対策としての安否確認の義務化
いつどこで発生するか予測できない大地震や、進路や規模の予測が極めて困難なゲリラ豪雨・大型台風といった自然災害の突発的な増加は、地域で暮らす要介護者の命の危機に直結します。
こうした背景から、国は2024年4月より、すべての介護サービス事業者に対して「自然災害や感染症に対応するBCP(事業継続計画)の策定、および研修・訓練の実施」を完全に義務化しました。
未対応の場合には、サービス種別に応じて基本報酬が1〜3%減算されるという厳しいペナルティ(減算リスク)も科されています。
自然災害を想定したBCPを形骸化させず実効性を持たせる上で、すべての初動対応の起点となるのが「利用者および職員の安全確保・安否確認」です。
誰がどこで、どのような被災状況にあるかを瞬時に把握できなければ、サービス継続や復旧のための判断を下すことはできません。
在宅サービス独自の課題:居宅介護のBCPにおける初動対応の難しさ
しかし、同じ建物内に利用者がいる施設型サービスとは異なり、訪問介護や通所サービス、居宅介護支援といった在宅サービスにおける安否確認には、高いハードルが存在します。
いざ突発的な大災害が起きた際、スタッフはまず「自分自身と出勤している職員の安全確保」に追われ、次いで「拠点が使用可能かどうかの点検」や「ライフラインの応急対応」などを行わなければなりません。
こうした被災直後の初動対応や物理的な制約により、スタッフが実際に利用者の安否確認作業に着手するまでには相当なタイムラグが生じます。
在宅介護の場合、利用者は地域一帯のそれぞれの自宅(生活拠点)に点在して暮らしています。1件1件、なんらかの方法で連絡をし、無事を確認しなくてはなりません。
利用者の安否確認をしたくても、そこにたどり着くまでにやることが山積しているという、在宅現場特有のジレンマがBCPの実行を阻む大きな課題となっています。
2. 電話・手書きExcelによる安否確認が「破綻」する理由
大災害が発生した直後の数時間は、利用者の生死やその後の支援を左右する極めて重要な時間です。しかし、個別に電話をかけ、手書きのメモに控え、それをExcelに転記して集約するような従来のアナログな安否確認では、この緊迫した数時間を乗り切ることは困難です。
アナログな安否確認が破綻した、現場の事例
現実に災害が発生した時、アナログな安否確認がどのように破綻するのか、現場には生々しい経験とデータが残されています。
そもそも電話が繋がらない
東日本大震災の発生時、在宅介護の現場では「電話回線が完全に麻痺してしまい、一切繋がらなかった」という事態に直面しました。非常時には安否確認の電話をかけること自体が不可能になります。
100名〜200名の確認に「半日以上」を費やす
回線が繋がったとしても、100名や200名にのぼる利用者の自宅へ1件ずつ手作業で電話をかける作業は膨大な時間を要します。繋がらない相手への留守番電話設定や、折り返しを待つ時間も含めると、安否確認を完了させるだけで半日以上が簡単に経過してしまいます。
コロナ禍の際に、100人に満たないデイサービスが事業所閉鎖の連絡を利用者に電話連絡した際、管理者1名で丸1日以上要したという例もあります。
重複によるリソースの浪費
一人の利用者にケアマネジャーや訪問看護、訪問介護など複数の事業者が関わっている在宅現場では、災害時に各事業者が個別に対応しています。このため、特定の独居利用者の自宅には、電話連絡が重複する事態が発生しました。
こうした実態を背景に、在宅医療・介護職を対象とした安否確認アンケート(ハノン・ケアシステム実施、有効回答170件)では、78.9%もの事業所が「災害時に短時間で全利用者の安否を確認できる体制が整っていない」と回答しています。
アナログ対応に代わる、新しいBCP安否確認の方法
電話や手書きメモ、Excel転記に頼るアナログな方法では災害時を乗り切れない理由は、大きく分けて3つあります。
スタッフのリソース限界
被災直後、スタッフは自身の安全確保や拠点の立て直しに追われます。その状態で「1対1の電話連絡」という手作業を同時に進めることは、物理的にも人手不足の観点からも不可能です。
集計のタイムラグ
電話で聞き取った情報をExcelに手入力して集約している間にも、状況は刻一刻と変化します。集計に時間を取られれば、「誰が今、緊急の救護を必要としているか」という優先順位の判断が致命的に遅れます。
利用者に強いる過度な負担
ただでさえ被災してパニックになっている高齢の利用者に対して、関わりのある複数の事業所からバラバラに何度も生存確認の電話がかかってくることは、精神的にも大きな負担となります。
災害が発生した瞬間に安否確認が「自動で一斉送信」されるシステムがあれば、スタッフが身の安全を確保し、拠点を立て直している空白の時間にも、安否確認作業を自動で開始することができます。
そして、回答結果がリアルタイムで管理画面に一覧化・自動集約されることで、「どの職員が対応できるのか」「次にどこへ向かうべきか」が一目でわかる状態が整います。
限られた貴重な人手を、本当に救護を必要としている利用者に集中させるために、これからのBCP対策にはデジタル化による素早い安否確認と情報の集約が有効です。
3. 居宅介護支援事業所が背負う、BCPと安否確認の現実
地域のケアマネジメントのハブ(中心)である居宅介護支援事業所は、災害時において利用者の安否確認とサービス調整を担う最重要拠点となりますが、現場には極めて重い「情報集約の壁」が立ちはだかります。
居宅介護支援事業所が直面する、BCPにおける情報集約の壁
居宅介護支援事業所が実効性のあるBCPを策定する上で、まず平時から取り組むべき最優先事項は「利用者台帳の整理」です。
具体的には、災害発生時に優先して安否確認を行うべき「医療依存度が高い利用者」や「独居の高齢者」を明確に区分し、緊急連絡先を複数(固定電話、携帯電話、メール等)把握しておく必要があります。
しかし、いざ有事となると、これらの準備をしていてもなお、情報の集約は困難を極めます。発災直後は、行政から被害情報の報告を求められ、同時に各サービス事業所(デイサービスやヘルパー等)の営業状況を把握しなければなりません。
さらに、それらと並行して「職員自身の安否確認(家族の安全、出勤の可否)」も同時に行う必要があります。
誰が稼働できて、誰が動けないのか、そしてどの利用者に緊急のサービス変更や代替調整が必要なのか。これら膨大な情報を電話やメモだけで一手にさばき、連絡調整を行うことには、アナログ管理の限界という大きな壁が存在します。
BCPの実効性を左右する、居宅介護支援の多職種連携
在宅医療や介護の現場では、一人の利用者を訪問診療、訪問看護、訪問介護、そしてケアマネジャーなど、複数の事業所がチームとなって支えています。
「多職種連携」が現場では叫ばれていますが、災害時にこそ、事業者間で連携し、安否情報を共有することが不可欠です。
もしこの連携がなく、各事業所が個別に安否確認を行うと、地域の中で「情報の分断」と「確認の重複」が発生します。
これを利用者側の視点から見ると、被災してただでさえ不安と混乱のなかにいるにもかかわらず、複数の事業所から「大丈夫ですか?」と同じ質問の電話が何度もバラバラにかかってくることになります。
高齢のご利用者やそのご家族にとって、この「何度も同じことを訊ねられ、説明を繰り返すこと」は精神的な負担になります。
事業所ごとの壁をなくし、地域全体でひとつの安否情報を共有・分担する仕組みを作ることが、利用者の負担を減らし、確実な救護へ繋げるための急務となっています。
4. 在宅向け安否確認システム「あんぴケア」がもたらす革新
災害時の安否確認において、在宅医療・介護現場の多職種連携を前提として開発された新しいシステムが「あんぴケア」です。このシステムは、従来の安否確認の常識を覆し、在宅介護ならではの課題を解決する多くのメリットがあります。
安否確認の目的を果たすための超シンプル設計
高齢の利用者やご家族にとって、新しいスマートフォンのアプリをインストールしたり、ログインIDやパスワードを設定したりすることは、極めて高いハードルです。
いざという緊急時に「使い方がわからない」「ログインできない」となっては、安否確認としての目的を果たすことはできません。
あんぴケアは携帯電話番号さえあれば利用でき、アプリのインストールやアカウント作成、ID・パスワード設定は一切不要です。
災害時には、システムから自動送信されるSMS(ショートメッセージ)に届いたURLを開き、画面に表示される自分の状態を選んで送信するだけ。わずか3タップ、10〜30秒で回答が完了するバリアフリーな設計となっています。

出典:あんぴケア公式サイト
入力された情報は発災後、数分以内に情報が集約されはじめます。スタッフ自身が身の安全を確保し、拠点を立て直している発災直後の「空白の時間」にシステムが自動で確認を完了させ、スタッフが動き出せる頃には「誰が救護を必要としているか」を一元的に管理できる状態が整っています。

出典:あんぴケア公式サイト
これにより、スタッフは発災直後から「誰の救護を優先すべきか」を即座に判断し、限られた人手を的確に配分できるようになります。
地域全体で多くの事業者が参加するほど高まる利用者の利便性
あんぴケアの最大の特徴は、独自の「名寄せ機能」にあります。
同一の電話番号を持つ利用者をシステム側で自動的に名寄せし、関係するすべての事業者(訪問診療、訪問看護、訪問介護、ケアマネジャーなど)で安否情報を共有できます。
利用者は、どこか1つの事業所から届いたSMSに1回回答するだけで、あんぴケアを導入したすべての事業所の管理画面に安否情報が一斉に共有されます。
しかしあんぴケアを導入していない事業所には、利用者の情報共有はされません。従来どおり個別で安否確認をする必要があります。

出典:あんぴケア公式サイト
地域内の多くの事業者が、このあんぴケアに参加すればするほど、強力な「ネットワーク効果」が生まれ、安否確認を効率的に行うことができます。
被災して混乱している高齢の利用者も、多忙を極める事業者も、地域全体としてスマートで優しい見守り体制が構築できます。
株式会社バカンが在宅介護の安否確認に挑んだ開発背景
あんぴケアを開発した株式会社バカンは、混雑可視化・防災分野において全国延べ約300の自治体と連携し、特に防災領域では200以上の自治体、10,000か所以上の避難所の可視化を支援してきた実績があります。
これまで世の中に存在していた安否確認システムは、そのほとんどが「オフィスや施設に人が集まること」を前提に設計されていました。
しかし、在宅介護の現場では利用者が地域に広く分散して暮らしており、さらには1人の利用者を複数のサービス事業者が支えているというのが実態です。
バカンは、こうした現場に「事業者間の情報の壁」が存在し、非常時に機能しない手作業の電話に頼らざるを得ないという在宅領域特有の社会課題に着目しました。
防災DXの知見を結集し、2026年2月に展示会での初披露を経て、2026年6月より本格的な社会実証フェーズとしてスタートしたのが、在宅に特化した安否確認サービス「あんぴケア」です。
あんぴケアの導入は、ご利用者とその家族のみならず、在宅介護に関わるすべての関係者に対しても、次のような効果をもたらします。
- 居宅介護支援事業所:アナログ集計を完全に撤廃できます。スタッフと利用者の安否が管理画面へ自動で一元化されるため、非常時の「電話かけ」や「Excel転記」に追われることがなくなります。職員の出勤状況と利用者の被災状況が即座に反映されるため、サービス再開や他事業所への代替調整など、ハブとして果たすべき最優先業務に初動から専念できます。
- 自治体:地域に分散して暮らす要配慮者の安否情報を、これまでよりも素早く、事業者の壁を越えて適切に把握できます。地域全体の防災力の底上げが期待できます。
5. 実効性を高めるBCP研修と安否確認の訓練
BCP(事業継続計画)は、ただ計画書を作成しただけでは有事の際に機能しません。
災害時の大混乱の中で速やかにサービスを再開させるためには、平時からの職員への研修と、実際の動きをシミュレーションする訓練を繰り返し、計画をブラッシュアップし続けることが重要です。
居宅介護支援事業所における、BCP研修の実践ポイント
居宅介護支援事業所の全スタッフにBCPを周知徹底し、有事の行動基準を身につけてもらうためには、平時からの継続的な研修が欠かせません。
厚生労働省老健局『介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン』によれば、安全確保方法、避難及び安否確認方法、参集基準、各種連絡先等の必要な事項を『携帯カード』に整理して、職員に携帯させると効果的であるとされています。
BCP研修において、あんぴケアを使った自動配信の仕組みを安否確認方法として、被災時の連絡フローに組み込んでおくことは、職員に大きな安心感を与えます。
このシステムは、震度5以上の地震などを気象庁データから自動で検知し、安否確認SMSを自動で一斉送信するとともに、未回答者には返信を自動で催促します。
職員は、まずは自分自身と家族の安全確保、そして拠点の立ち上げといった最も重要な初動対応に100%専念できるようになり、事業所全体の安全確保がより確実かつ迅速に行えるようになります。
あんぴケアの訓練配信機能で、BCP訓練を実践する
どれほど優れた安否確認システムを導入しても、いざ大災害が起きたときに「使い方がわからない」「どこから回答すればいいか忘れた」となっては意味がありません。
有事の不具合をなくすためにも、実際のシステムに触れる定期的な訓練は不可欠です。
しかし、日々の業務に追われるケアマネジャーやスタッフが、訓練のために一堂に集まる時間を確保することは困難です。
この課題を解決するのが、あんぴケアに搭載されている「訓練配信機能」です。
この機能を使えば、実際の災害時と全く同じ流れで、管理画面から「訓練用の安否確認SMS」を一斉送信できます。
職員や利用者は、それぞれの訪問先や自宅など日常の業務を止めないまま、届いたSMSのURLを開いて10〜30秒で回答を送信するだけで訓練が完了します。
移動時間や日程調整の手間を一切かけず、現場にいながらスマートに安否確認の避難訓練を完了させることができます。避難訓練を形骸化させずに継続でき、実践的な体制を構築できます。
6. まとめ【期間限定・無償】地域全体の防災力向上を目指して
2024年4月のBCP義務化にともない、すべての介護事業所にとって災害時の安否確認体制の構築は急務となっていますが、在宅利用者の安否確認は、事業者ごとの孤立した電話連絡だけでは限界があるのが実態です。
この課題を根本から変えるために開発されたのが、在宅特化型のSMS安否確認システム「あんぴケア」です。
「あんぴケア」社会実証プロジェクトとは
「あんぴケア」の開発・運営を行う株式会社バカンは、在宅の現場に真にフィットする安否確認インフラを構築するため、現在、現場の事業者様と共にシステムを磨き上げていく「社会実証メンバー」を募集しています。
この社会実証プロジェクトは、2027年3月末まで実施予定です。
これは単にシステムを利用するだけでなく、在宅介護・医療における災害時対応という大きな社会課題の解決に、現場の立場から一緒に参画していただくプロジェクトです。
この社会実証フェーズに限り、参加した事業者には、初期費用・月額費用を含むあんぴケアの全機能(自動SMS一斉送信、安否・救護・出社の一覧集約、訓練配信機能など)が無償で提供されます。
費用負担を一切かけることなく、今ある現場のBCP対策としてそのまま使い始めていただくことが可能です。
本プロジェクトは社会実証段階であるため、今後の実証結果や事業環境により、サービス内容の変更やプロジェクト自体の見直しが行われる可能性はありますが、参加した事業所には将来的な優遇措置などが検討されています。
「まずは自事業所のBCP訓練で実際に使ってみたい」「地域の他事業所とのスムーズな連携を模索したい」という管理者様やDXリーダーの皆様、まずは費用負担のないこの機会に、地域全体の防災力を高めるための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
ご関心のある方は、以下のメールアドレスへ直接お気軽にお問い合わせください。担当者より折り返しご案内があります。
社会実証メンバーお申し込み・お問い合わせ窓口
メールアドレス:support-ampi@vacancorp.com
特設サイト:https://corp.vacan.com/anpi-care
[参考資料]
- あんぴケア|在宅医療・介護向け災害時安否確認サービス
https://corp.vacan.com/anpi-care/ - 災害時の安否確認を、変えていく取り組みに参加しています。
https://note.com/hokantokyo_study/n/ne15388845af8 - 在宅医療・介護向け災害時SMS安否確認サービス「あんぴケア」、社会実証開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000434.000018933.html - 名古屋市で「避難所受付のデジタル化」実証実験を実施
https://corp.vacan.com/company/news/260324001-2.html
